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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 137 :いとうあさこ氏に主演女優賞を!大方斐紗子氏に助演女優賞を!映画『鈴木さん』

今の時代、「女優」という言い方ではなく「俳優」という言い方に統一した方がいいことは十分承知している。しかし、だからこそ、個人的にはこの二人には敢えて主演女優賞と助演女優賞を捧げたい。なぜなら、二人とも女優=美しいといったイメージをぶっ壊した上で(あるいは美しいという概念を塗り換えた上で)、我々の心を揺さぶる演技をしているのだから。

いとうあさこ氏。言わずと知れた有名テレビタレントである。ブレイクした時期こそ遅めではあったが、体を張ったその芸風で、いまやまさに「売れっ子」の芸人というか芸能人である。そしてその意味で、「ギャップ」という意味で、この映画での役を彼女に演じさせたのは成功だったであろう。しかし、決してその成功の要因はそれだけではない。ひとえに監督や撮影や役者本人の力量によるものだが、普段との「ギャップ」というよりも、むしろ彼女の真の(と言っても何が「真」なのかが分からないのが芸能人の魅力でもあるが)姿こそがここに映っているように見えるからこその成功なのである。そして我々はそれにやられる。それに涙する。このような人、決して表面的には華やかではないが密かに心に火を燃やしている人、は確かにいる。世間的にはその人は「凡人」かもしれない。しかし、凡人こそが、世の中に最初の火を放つ存在なのである。

そして、もう一人、この映画において、強烈なインパクトを残すのは、大方斐紗子氏である。名前を聴いてもピンとは来ないであろう。しかし、皆その顔を見れば、「ああ、あの人か」となるであろう。そう、それこそがまさに「存在」としての「女優」であり、大方氏はまさにその意味で「大女優」である。

改めて調べてみたところ、この方、私と同郷の福島県立福島女子高等学校(現:福島県立橘高等学校)出身の方であり、年齢的にも私の母とほぼ同じであった。個人的な話となって恐縮ではあるが、母は、田舎の農村出身で、その地域では珍しく、高校を出たのが自慢の人であった。母の1歳上の私の伯母(=母の姉)は、自分より成績がよかった私の母を高校に行かせるべく自身は進学をあきらめたそうである。大方斐紗子氏もそのような時代の人である。しかも、福島女子高等学校と言えば、当時の県内のトップの女子高校である(いまでこそ男女共学となったが)。その後、上京し劇団俳優座付属養成所に合格し、劇団青年座へと進んでいったのだから、当時の地方人としては稀有な存在だったと言えよう。主に舞台や声優として活動していたが、(なんと高畑・宮崎コンビの再初期の大傑作『太陽の王子 ホルスの大冒険』の主役の声を担当している!)映像の世界では世に出ることは遅かった。そこもいとうあさこ氏と重なる。しかし、その後が凄い!ある程度の年齢を過ぎてからは、「この役はこの人しかできない」という存在となったのである。この映画においても、この役は彼女をおいて他にはあり得なかったであろう。老いることの何が恥ずかしいのか、歳を取ることの何が恥ずかしいのか、それはいとうあさこ氏にも言えることだが、この年ですっぴんで映像に映ることのできる存在こそを「女優」と言わず、何を「女優」というのだろうか。

と、まあ、女優陣を褒めたが(さらに言えば、いとう氏や大方氏とは対極の位置になる、「若く美しい存在」を演じながら、しかし、体制/大勢には流されない役を演じた保永奈緒という若手女優も凄い!)やはりこの作品を作り上げた監督の佐々木想(ささき・おもい)氏にも言及しなければいけないであろう。まだ、本作品『鈴木さん』を含めて、今までに長短編で4作品しか撮ったことのない、スローペースの監督であるが、そのスローペースにこそ意味がある。そう、その生き方というか製作態度こそが、まさにこの映画でのいとうあさこ氏や、大方斐紗子氏とも重なるのである。そしてさらに言えばこの映画におけるタイトルの人物としての「鈴木さん」にも重なるのである。今後の活躍が期待できる監督である。



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