【目指せソムリエ#27】キリスト教聖地の巡礼路!北スペイン
はじめに
プレソムリエの皆さん、こんばんは!今回はスペインです。スペインは1回で終わらせるつもりだったのですが、書き始めてみたら文字数がかなり多くなってしまったので、教本ではこういった分け方はされていないのですが、北スペインと南スペインの2回に分ける事にしました。今回はスペインの全体についてと、北部地方、大西洋地方、内陸部地方についての解説です。
スペインは多様な文化と宗教が入り混じった、非常に興味深い歴史を歩んできた国です。あまりにも興味深くて、私も学生時代の卒論の題材にしたくらいです!
北スペイン(教本で言うと北部地方、内陸部地方の北部、大西洋地方)は特に、キリスト教の歴史と宗教的な遺産が色濃く残る地域として知られています。この地はレコンキスタと呼ばれるキリスト教徒によるイスラム教徒からの再征服の舞台でもありました。そして、今でもサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂はキリスト教の巡礼地として有名であり、巡礼者たちはこの聖地への旅を通じて信仰心を深めることができます。
スペインの概要
スペインはヨーロッパ南西部に位置し、イベリア半島の大部分を占めています。北側はピレネー山脈を挟んでフランスと、西側はポルトガルと国境を接しています。
スペインでは17の自治州すべてでブドウ栽培が行われていて、幅広くヴァラエティ豊かなワインが生産されています!
今回解説する地域の中では、北部のリオハや内陸部(カスティーリャ・イ・レオン州)のリベラ・デル・ドゥエロがスティルワインの中心地となっています。
スペインの国土は平均標高が660mであり、ヨーロッパ大陸ではスイスに次いで山脈が多いのも特徴です。また、国の中央部にはメセタと呼ばれる中央台地が広がっています。
スペインの歴史
スペインの歴史は、フェニキア人、ローマ人、ケルト人、西ゴート人、ユダヤ人、アラブ人など多くの民族の侵略と支配によって形成されました。そのため、スペインには様々な文化が交差しています。
スペインのワインも、様々な民族の文化の影響を受けています。遥か紀元前1100年頃にフェニキア人がカディスに到達し、ワイン造りを始めました。その後時が経ち、紀元前200年頃にはローマ人がスペイン各地でワインを造り、ローマ帝国各地に送る交易が盛んに行われました。そして長い間キリスト教徒の悲願であったレコンキスタ(国土回復運動)が成就した1492年には、アメリカ大陸が発見され、大航海時代が幕を開けしました。スペインから遠洋航海に出る船には地域のワインが積まれるようになりました。激動の時代ですね!
19世紀後半にはフランスからフィロキセラが到達し、大きな被害が出ましたが、フランスで既に考案されていた接ぎ木による対処法が導入されたため、ブドウ畑の復興は早かったそうです!ヨカッタ♡
スペインでは1926年にリオハ地方が原産地保護のための統制委員会を設立し、ワイン法も制定されました。1970年代には独裁政権から立憲君主制に戻り、民主化が進みワイン産業も復興を始めました。この時、輸出を意識して量から品質を重視する方向へと大きく転換していったようです。
1986年にはEUの前身である欧州経済共同体(EEC)に加盟した事によって、スペインは更に目覚ましい革新を遂げました。
現代では、スペインの無名だったワイン産地からも世界的な注目を集めるワインが次々と誕生しています。日本でもスペインワインは多く見かけますよね!
スペインのブドウ品種
スペインのワイン生産は赤ワインと白ワインがほぼ半々ずつです。ブドウ品種には、スペイン固有の品種が多くあります。今までは白ブドウのアイレンがずっと栽培面積第1位だったのですが、2021年にテンプラニーリョはアイレンを抜いてスペインで最も栽培されている品種になりました!ここは新しい改訂なので、今年の試験に出る確率は高そうですね。
テンプラニーリョはリオハを代表する品種であり、世界的に高品質な赤ワインが造られます。ガルナッチャ・ティンタはフランスではグルナッシュと呼ばれる品種です。
テンプラニーリョの別名(シノニム)
テンプラニーリョはスペインの各地域で栽培されていて、各地でそれぞれ独自の呼び名を持っています。
ちょこちょこ出てくるティンタやティントというのは、黒ブドウの意味です。スペインでは赤ワインの事をVino tintoと言うのです。ティンタ・デ・トロやティンタ・デ・マドリッドは地名が入っているので覚えるまでもないですね?
スペインのワイン
スペインは1986年にEC(現在のEU)に加盟し、ECワイン法が適用され、2009年のEUワイン法改定に伴い、以下のように品質分類されています。
原産地呼称の管理・運営はConsejo Regulador コンセホ・レグラドール(原産地呼称統制委員会)が行っていますが、Vino de Pago ビノ・デ・パゴ、は、所属する州政府と自治体が行っています。
現在、スペインのD.O.P.(V.P〜V.Cまで)の数は合計101(D.O.が68、D.O.Ca.が2つ、V.C.が7つ、V.P.が24)となっています。
熟成規定
樽熟成には一般的にはアメリカ産オークあるいはフランス産オークから作られた330ℓ以下の樽が用いられ、最低熟成期間により可能な表記(クリアンサ、レセルバ、グラン・レセルバ)が変わります。
名称は同じですが、白ワインとロゼワインの最低熟成期間は赤ワインに比べてやや短めになっています。
北部地方
La Rioja ラ・リオハ州
1991年にスペインで最初のD.O.Ca.に認定されたD.O.Ca.リオハはラ・リオハ州を代表するワイン産地(正確にはD.O.Ca.リオハはラ・リオハ州、バスク州アラバ県、ナバーラ州の3州にまたがっています)であり、産地名はエブロ川の支流であるオハ川に由来します。
19世紀後半にフランスのフィロキセラ禍が起こり、フランスの生産者や業者がリオハにやってきました。この背景により、ボルドースタイルのワインの影響を大きく受けるきっかけともなりました。
伝統的にはアメリカンオークが使われ、白ワインも樽熟成が行われます。最近では本来のリオハらしさを持ち、エレガントなスタイルへと回帰しているようです。また、リオハの最低樽熟成期間には独自の規定があります。
現在、リオハには約600軒のボデガ(ワイナリー)が存在し、赤、ロゼ、白のワインが生産されていますが、赤ワインが約9割を占めています。
D.O.Ca.リオハの主要ブドウ品種
D.O.Ca.リオハには、3つのサブゾーンがあります。
Navarra ナバーラ州
ナバーラはピレネー山脈の麓に近い北部の州都パンプローナ市郊外から、南のエブロ川右岸の平地まで広がります。
9世紀前半に興ったナバーラ王国は、かつてフランス側にも領土を持ち、シャンパーニュ伯がナバーラ王だった時代もありました!そのため、早くからフランスよりブドウ品種や醸造技術が持ち込まれました。
ナバーラは1950年代にロゼワインの産地として認知されるようになりました。また、16世紀に日本に布教に訪れたザビエルの出身地でもあり、彼の実家は広大なブドウ畑を所有していたそうです!
ナバーラ州の主要品種
ナバーラ州の主要D.O.
Aragón アラゴン州
12世紀にアラゴンの女王とバルセロナ伯が結ばれて、アラゴン・カタルーニャ連合王国が誕生しました。地中海帝国を築き、13世紀にはバレンシア、バレアレス諸島を征服し、さらにシチリア、サルデーニャ、ナポリを領有していきました。15世紀にはアラゴン王国とカスティーリャ王国が連合し、この時代にイスラム教徒を追い出してレコンキスタが終わり、晴れてスペイン王国となりました!
アラゴン州にはイスラム文化の影響を受け、ユネスコ世界遺産に登録されている建築物も多くあります。また、著名な画家ゴヤの出身地でもあります。
アラゴン州の主要品種
アラゴン州の主要D.O.
País Vasco バスク州
スペインの北部に位置し、ピレネー山脈の西側に広がる地域です。北部はカンタブリア海のビスケー湾に面し、南部をエブロ川が流れています。
バスク地方には、独自のルーツと言語であるバスク語を持つバスク人という民族が暮らしています。彼らはピレネー山脈を挟んでスペインとフランスの両側に分布しています。
この地域では、かつてパンプローナ王国が建国され、中世から近世にかけてバスク州からナバーラ州にかけての地域で権力を持っていました。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、リオハワインの輸出はビルバオ港から行われていました。そのため、リオハのワイン生産者の中には、ビルバオの富裕な実業家が多く存在しています。
海岸沿いのなだらかな丘の斜面には、ブドウ畑が広がっており、風通しを良くするためにパラルと呼ばれる棚仕立てが主に使用されています。
なお、リオハD.O.Ca.の一部であるリオハ・アラベサ地区は、バスク州に属しています。
バスク州の主要品種
バスク州の主要D.O.
大西洋地方
Galicia ガリシア州
スペインの北西部に位置しており、南側はポルトガルに接しています。また、東側はアストゥリアス州とカスティーリャ・イ・レオン州と境を接しています。州都はサンティアゴ・デ・コンポステラです。
この都市は9世紀にサンティアゴ(聖ヤコブ)の遺骸が発見され、キリスト教三大聖地の一つとなりました。
サンティアゴ・デ・コンポステラは年間を通して穏やかな気候で、降水量も豊富です。
ガリシア州の主要品種
ガリシア州の主要D.O.
ガリシア州のD.O.といえば、最も重要なのがD.O.リアス・バイシャスです。D.O.リアス・バイシャスには5つのサブゾーンがあります。
他のD.O.のブドウはゴデーリョとメンシアが使用される事が多いです。
内陸部地方
Castilla y León カスティーリャ・イ・レオン州
カスティーリャ・イ・レオンは、スペインのマドリッド以北に位置する広大な州です。州名の「カスティーリャ」は「城」を意味し、この地域には多くの城跡があります。
カスティーリャ・イ・レオンにはエル・シド伝説で有名な大聖堂や、水道橋があり、美しい旧市街など、観光名所としても人気のある世界遺産が多くあります。また、サンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼路は州北部を通る為、レオンにもいくつかのスポットがあります。
カスティーリャ・イ・レオンは、スペインの公用語であるカスティーリャ語(標準語)の発祥地でもあります。
カスティーリャ・イ・レオン州の主要品種
カスティーリャ・イ・レオン州の主要D.O.
Madrid マドリッド州
スペインの首都マドリッドがあるマドリッド県のみからなる自治州です。スペインのほぼ中央に位置しています。
マドリッド州の主要品種
マドリッド州の主要D.O.
Castilla La Mancha カスティーリャ・ラ・マンチャ州
ラ・マンチャは、スペインの中央から南に位置しています。州都はトレドです。
「マンチャ」とはアラビア語で「水のない土地」を意味し、ラ・マンチャ地方はメセタと呼ばれる乾燥した大平原に広がっています。この地方は16世紀にミゲル・デ・セルバンテスが書いた「ドン・キホーテ」という名著で知られており、風車小屋や当時の社会の風景が描かれています。
農業はラ・マンチャ地方の主要産業であり、ブドウ、オリーブ、穀物が主要な作物となっています。特にブドウ栽培面積は世界最大級であり、スペインのワイン生産量の半分以上をも占めています。
カスティーリャ・ラ・マンチャ州の主要品種
カスティーリャ・ラ・マンチャ州の主要D.O.
Extremadura エクストレマドゥーラ州
エクストレマドゥーラはスペイン南西部に位置し、西側はポルトガルと接しています。州都はメリダです。
この地域は古代ローマ帝国時代にルシタニアの一部であり、大航海時代には大勢のコンキスタドール(植民地支配者)を輩出しました。
デエサとして知られる広大な森林では、イベリコ豚などが放牧され、またオリーブオイルなども生産されています。
一方で、メリダは「スペインで最も貧しい州」とも言われています。
エクストレマドゥーラ州の主要品種
エクストレマドゥーラ州の主要D.O.
おわりに
スペイン半分でも結構なボリュームですね。聖地巡礼での言葉ではありませんが、私はスペイン語の格言の中で「El camino se hace caminando」という言葉が特に好きです。「道は歩いてこそ作られる」という意味です。
ソムリエ試験への道はコンポステーラの巡礼路のようにとても長いですが、行動を起こす事で道は既に拓けています。あとは信じて歩み続けるのみ!
もう7月なので、ちょっと駆け足でないと辿り着けないかもしれませんが・・目的地到達まで頑張りましょう!!
スペイン後半は続けて明日アップ公開したいと思います!明日は南部地方、地中海性地方です。スパークリングワインのカバと酒精強化ワインのシェリーについても詳しく解説していこうと思います☆
もう全範囲の学習をほぼ終えている方もいらっしゃるかと思います。私のリアル講座の方もほぼ終えました。7月は復習にもこちらを役立てていただけると嬉しいです!
プルールではスペイン各地のワインをはじめ、世界各国のワインを取り扱っています。
オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m
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