【目指せソムリエ#28】イスラム情緒の残る、南スペイン
はじめに
プレソムリエの皆さん、こんばんは!今回は南スペインです。
地中海地方をまるごと南スペインと分類してしまうのは少し違うのですが、今回のスペイン後半記事では、地中海性地方、南部地方、諸島+スペイン独自のお酒(カバとシェリー)について解説していきたいと思います!
スペインの南部はアフリカ大陸側から攻め込んできたイスラム勢力の影響で、一時ワイン造りは停滞してしまう事になります。
キリスト教徒の国土回復運動により土地はスペイン王国に戻りましたが、今でもスペインの南部にはイスラム文化が色濃く残っています。
地中海地方
Cataluña カタルーニャ州
スペインのカタルーニャ州の州都はバルセロナであり、州内ではカタルーニャ語が公用語とされています。
この州は芸術家の育成地として知られており、アントニオ・ガウディやサルバドール・ダリ、アントニオ・タピエスなどの有名な芸術家を輩出しています。
また、カタルーニャ州はスパークリングワインのカバの生産地としても重要な役割を果たしています。
カタルーニャ州の主要品種
カタルーニャ州の主要D.O.
Valencia バレンシア州
バレンシアは美しい地中海に面した太陽と水の豊かな地域です。
19世紀にオレンジ、米などの農作物とワイン生産が盛んになり、ブドウ畑の面積も拡大しました。観光業が盛んで、コスタ・ブランカの美しい海岸地帯を中心に多くの観光客が訪れています。
バレンシア州の主要品種
バレンシア州の主要D.O.
Murcia ムルシア州
スペインの南東部に位置する、ムルシア州。州都はムルシアです。
この地域では、カルタゴ人によってカルタヘナの港が地中海交易の拠点として利用されました。
ムルシア州は、東側には地中海が広がり、西側にはベティカ山脈があり、州の面積の65%は丘陵や山地で占められています。
さらに、ヨーロッパ最大の海水湖であるマール・メノールもこの地域に位置しています。
ムルシア州の主要品種
ムルシア州の主要D.O.
南部地方
Andalucía アンダルシア州
アンダルシアはスペインの南部に位置し、南側は地中海に面し、さらに最南部ではジブラルタル海峡を経て大西洋にも接しています。州都はセビーリャです。
この地域は紀元前1000年から文明が栄え、ローマ帝国の植民地後はヴァンダル族の支配時代に「バンダルシア」と呼ばれ、その後はイスラム時代に「アル・アンダルス」と呼ばれるようになったと言われています。
711年から約8世紀の間、アンダルシアはイスラム王朝によって支配されました。しかし、1492年にグラナダが陥落し、スペイン王国が統一されました。
アンダルシアにはイスラムの影響が色濃く残り、文化や言語にも反映されています。アルハンブラ宮殿など、ユネスコの世界遺産に登録されている名所もあります。
また、アンダルシアはフラメンコや闘牛などでも知られています。
アンダルシア州の主要品種
アンダルシア州の主要D.O.
諸島
Islas Baleares バレアレス諸島
バレアレス諸島は地中海西部に位置し、スペインの東岸沖に広がっています。マヨルカ、メノルカ、イビサ、フォルメンテラの4つの主要な島と、いくつかの小島や岩礁からなります。バレアレス諸島の州都はパルマ・デ・マヨルカです。
この地域は歴史的にさまざまな支配者によって支配されてきました。ローマ帝国、ヴァンダル族、ビザンチン帝国、そしてイスラム教徒などがこの地域を支配しました。また、12世紀にはアラゴン・カタルーニャ王国の一部となりました。
さらに、メノルカ島は18世紀に一時的にイギリスの統治下にありました。
バレアレス諸島は本土のカタルーニャ文化の影響を受けており、カタルーニャ語が使用されています。
バレアレス諸島の主要品種
バレアレス諸島の主要D.O.
Islas Canarias カナリア諸島
カナリア諸島はスペイン本土から約1000km離れ、大西洋のモロッコ沖約100kmに位置しています。
東側にはランサローテ、フエルテベントゥーラ、グラン・カナリア、テネリフェ、ラ・ゴメラ、ラ・パルマ、エル・イエロの7つの島があります。
「カナリア」という名前の由来は、ローマ人がグラン・カナリア島を「犬の島」と呼んでいたことに起因するそうです。この地域は鳥のカナリアの原産地でもあります。
ブドウ栽培とワイン造りはフェニキア人やローマ人の時代から行われてきましたが、特に15世紀にポルトガル人によってテネリフェ島にブドウの木が植えられ、ブドウ栽培が広まりました。
カナリア諸島ではフィロキセラの被害がないため、接ぎ木が必要なく、ブドウは自根で栽培されています。
カナリア諸島の主要品種
カナリア諸島の主要D.O.
D.O. Cava カバ
カバはシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で造るスパークリング・ワインの一種です。D.O.なのですが、特定の原産地名称ではありません。
カバはカタルーニャ語で「洞窟」を意味しています。英語のCaveと一緒ですね!よく英語読みで「カヴァ」と表記されていますが、本当はスペイン語の発音だとカバが正しいです。英語のCaveの発音はケィヴですが、スペイン語だとVの発音は上歯を下唇にあてるような摩擦音ではないので、日本語のカバという発音が最も近いのです。豆知識!
カバの生産は、主にカタルーニャ州のペネデスが生産量の95%以上を占めています。特にカタルーニャ州のバルセロナ県のサン・サドゥルニ・デ・ノイアは、全体の85%のカバを生産しています。
また、カバD.O.の認定を受けている産地はカタルーニャ州、アラゴン州、ナバーラ州、ラ・リオハ州、バスク州、エクストレマドゥーラ州、バレンシア州、カスティーリャ・イ・レオン州の一部など複数存在し、特定の産地に限定されているわけではありません。
カバの主要品種
カバの熟成表示
カバは瓶詰めから澱抜きまで何ヶ月熟成しているかによって、表示可能な熟成表示が変わってきます。
また、スタンダードは甘口〜辛口まで幅広く造る事が可能ですが、その他は辛口のブルット・ナトゥーレ、エクストラ・ブルット、ブルットのみに限られています。
Sherry シェリー
シェリーの正式名称はD.O. Jerez-Xérès-Sherry y Manzanilla-Sanlúcar de Barrameda ヘレス・ケレス・シェリー・イ・マンサニーリャ・サンルーカル・デ・バラメダと言います。長っ!!
こちらは、シェリー酒をメインで生産する地域のD.O. Jerez-Xérès-Sherryと 特定の種類のシェリー酒である マンサニーリャのD.O. Manzanilla-Sanlúcar de Barramedaの2つのD.O.が統合されて出来たD.O.だそうです。
酒精強化ワインのシェリーはアンダルシア州の南西部、大西洋岸地域で造られています。
シェリーにはビノ・ヘネロソ(辛口)、ビノ・ドゥルセ・ナトゥラル(極甘口)、ビノ・ヘネロソ・デ・リコール(辛口と極甘口をブレンドしたもの)の3つのカテゴリーがあります。
紀元前1100年頃にフェニキア人によってカディスにブドウ栽培とワイン造りが伝えられ、紀元前700年頃にはヘレス近郊でもワインが造られるようになりました。ギリシャ、ローマ時代にはワインの生産が盛んで、ローマへも輸出されていました。
しかし、711年から1264年までのイスラム教徒の支配下ではワイン造りは停滞してしまいましたが、蒸留技術が伝えられ、ワインは蒸留されて薬用や香水に利用されるようになりました。
国土回復運動の終了後、ワイン造りは再び活気を取り戻し、大航海時代にはこの地域のワインが大量に船に積まれ、世界中に広まりました。この時、若いワインを安定させるために酒精強化が行われていました。
19世紀にはクリアデラとソレラの熟成システムが確立し、酒精強化が熟成の一環として行われるようになりました。これは、イギリスや他の国々への輸出のために、一定の品質を保った熟成ワインが求められるようになった為です。
シェリーの辛口ワインはほぼすべて、約95%を占めるパロミノという品種から造られています。一方、極甘口のワインはペドロ・ヒメネスまたはモスカテルという品種から造られます。
シェリーの製法
熟成 (クリアデラとソレラのシステム)
おわりに
スペインもなんとか2回に分けて終わりました・・・!ヨーロッパの主要国は残り2カ国、ポルトガルとドイツです。その後はニューワールドの主要国を学習し、最後にその他の国を学習しましょう!!
プルールではスペイン各地のワインをはじめ、世界各国のワインを取り扱っています。
オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m
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