【目指せソムリエ#24】豊かな緑と美食の地、北部イタリア
はじめに
プレソムリエの皆さん、ボンジョルノ〜!
イタリアはフランス程覚えることはないのですが、イタリアはいくつかの地方をまとめて学習(noteでは概論、北部、中部、南部の合計4記事)していくのでちょっと詰め込み気味です。まずは画像だけでも眺めて、イメージを掴んでいきましょう。時間があるときに細部まで読み込んで下さいね!
今回はイタリアの北部について掘り下げていきますよー!
どこも重要な産地なのですが、特にピエモンテ州とヴェネト州に注力して暗記しましょう!
Valle d'Aosta ヴァッレ・ダオスタ州
まずはイタリア北西部のヴァッレ・ダオスタ州。ヴァッレ・ダオスタ州は、イタリアで最も面積が小さく、人口も最も少ない州です。また、ワインの生産量も最も少ない地域となっています。
フランスのサヴォワ県のすぐ南に位置していてフランス語圏の自治州である為、公用語としてフランス語とイタリア語の両方が使用されています。
名前の「ヴァッレ・ダオスタ」は「アオスタの渓谷」という意味であり、氷河によって形成された巨大な渓谷を指します。
州内では、ドーラ・バルテア川の両岸に広がる傾斜地の段々畑が、ブドウの栽培の中心地となっています。この地域では棚式栽培が行われています。ほとんどの地域が山岳地帯であり、耕作面積は少なく、基本的には貧しい州です。住民の大部分はドーラ・パルテア川沿いに居住しています。
古代ローマの崩壊後はフランク王国やブルグント王国の支配を経て、11世紀にはサヴォイア家の領地となりました。その後、19世紀初頭にヴァッレ・ダオスタ州はイタリア王国に組み込まれました。
ヴァッレ・ダオスタ州のブドウ品種
ヴァッレ・ダオスタ州では、認定されたワインの品種が22種類あります。ヴァッレ・ダオスタ州では、ワインの生産比率は赤ワインが6割、白ワインが4割程となっています。
白ワインは清らかなアロマとフレッシュな酸味を持ち、優美なワインとして評価されています。一方、赤ワインは意外にもしっかりとしたタンニンと陰影のある特徴を持つものが多いのが特徴です。
ヴァッレ・ダオスタ州の郷土料理・チーズ
ヴァッレ・ダオスタ州の郷土料理はフォンティーナチーズをのせた仔牛のカツレツであるコストレッタ・アッラ・ヴァルドスターナを始め、フォンテーナチーズをかけたニョッキであるニョッキ・コン・フォンティーナなど、チーズを使った料理が多めです。すぐ北のサヴォワとよく似ていますね!
ヴァッレ・ダオスタ州のD.O.C.G.ワイン
ヴァッレ・ダオスタ州にはD.O.C.G.ワインとして認められているものはまだありません。D.O.C. ワインも州名がそのまま銘柄名となったヴァッレ・ダオスタのみです。
Piemonte ピエモンテ州
ピエモンテ州は、「山の麓」という意味を持ち、アルプス山脈の南側に広がる地域です。
1861年にイタリア王国が成立し、その初代首都はトリノでした(1861年〜1865年)。この地域は長い間、フランスのサヴォワ地方出身のサヴォイア王家によって支配されており、その影響を受けた習慣や文化が見られます。
ピエモンテ州はイタリアで面積第2位の州であり、シチリア州に次ぐ大きさを持っています。三方を山々に囲まれた地域であり、北と西はアルプス山脈、南はリグーリア・アペニン山脈に接しています。また、東側はロンバルディア州と接し、パダーノ平野が広がっています。
20世紀初頭にはロンバルディア州とともに近代工業の発展を遂げました。第二次世界大戦後には、フィアット(自動車産業)などの国際的な企業が成長を牽引しました。トリノ冬季オリンピックが2006年に開催されたことをきっかけに、観光業も成長し始めました。2014年には「ピエモンテのブドウ畑の景観:ランゲ・ロエロ・モンフェッラート」が世界文化遺産に登録され、観光客の訪問が急増しています。
ピエモンテ州のブドウ品種
ピエモンテ州のワインの生産量の6割以上は赤ワインです。
ピエモンテ州の郷土料理・チーズ
アルプスの真下に位置するヴァッレ・ダオスタ州は山岳地帯でしたが、ピエモンテ州まで来ると平野や丘陵地帯が広がり、牧草地や放牧地に適した土地が増えてくるので、牛肉料理なんかも増えてきます。
また、ピエモンテ州の名産といえばトリュフ!なかでもアルバ産の白トリュフは最高級食材として有名ですね。リストランテで「トッピングされますか〜?」と訊かれてうっかりスライスをお願いすると軽く数千円は追加でかかるあれです。(デートなどでは断りづらいという事から巷ではトリュフハラスメントと呼ばれたりもするそうな・・w)
ピエモンテ州のD.O.C.G.ワイン
ピエモンテ州では2022年にテッレ・アルフィエーレがD.O.C.G.に昇格し、現在では18のD.O.C.G.ワインがあります。ピエモンテ州で造られる約9割がD.O.P .ワインであり、イタリアを代表する高級ワインの産地です。
Liguria リグーリア州
ジェノヴァはイタリア最大の港町であり、ピエモンテ州はヴァッレ・ダオスタ州とモリーゼ州に次ぐ、比較的小さな州です。
中世後期には、ジェノヴァ共和国がヴェネツィア共和国と地中海貿易の覇権を争い、その繁栄が際立ちました。また、ジェノヴァは新大陸を発見したクリストフォロ・コロンボ(コロンブス)の出身地でもあります。教本によると、リグーリア人はイタリアで「最も吝薔である」との事。吝薔って何?と思って辞書を引いたところ「ひどく物惜しみすること。 節約、倹約の内、好ましくないもの、または度が過ぎたものを指して言う言葉。」だとか。悪口を上品に言ってみた感じですね?
ジェノヴァ州は、西にリグーリア・アルプス山脈、北にリグーリア・アペニン山脈、南にリグーリア海に面した細長い州で、東西に弓型の形状をしています。イタリアでも一流の観光地として知られています。チンクエ・テッレは世界遺産にも登録されています。
リグーリア州のブドウ品種
生産量の7割が白ワインです。リグーリア州の魅力は、多様な固有品種の存在なのですが、生産量が少ないため、地元住民と観光客により消費されていて、州外での入手は簡単ではないそうです。リグーリア州はヴァッレ・ダオスタに次いで生産量の少ない地域です。
リグーリア州の郷土料理・チーズ
リグーリア州は海岸に面しており、海の幸を活用した料理が豊富です。特にジェノヴァや地中海沿岸の町では、新鮮な魚介類や貝類を使った料理が人気です。また、リグーリア州はハーブの栽培が盛んであり、バジルの産地でもあります。日本でも人気のジェノヴェーゼソースはリグーリア州の州都「ジェノヴァ」が由来なんですね〜。
リグーリア州のD.O.C.G.ワイン
リグーリア州にはD.O.C.G.ワインがありません。著名なD.O.C.にはチンクエ・テッレ、トスカーナ州にまたがるコッリ・ディ・ルーニやロッセーゼ•ディ・ドルチェアックアなどがあります。
Lombardia ロンバルディア州
ロンバルディア州はイタリアで最も豊かな州の一つであり、人口も非常に多いです。その州全体の国民総生産の1/4を占めています。州都ミラノは工業、金融、商業の中心地であり、またファッションの一大拠点でもあります。
ロンバルディア州の名前の由来はゲルマン大移動時代にイタリア半島にやってきて、パヴィアを首都として王国を築いた「ランゴバルド族」からきています。
北部はアルプス山脈が連なっており、その南にはプレ・アルプス地帯が広がっています。イタリア最大のガルダ湖、マッジョーレ湖、コモ湖、イゼオ湖など、多くの湖があり、イタリアでは珍しく水に恵まれた地域です。
気候は大陸性気候ですが、北部はアルプス気候であり、湖の周辺は地中海性気候の特徴を持っています。ロンバルディア州のタレッジョチーズはもともとタレッジョ渓谷の洞窟で熟成されていたもので、地域の特産品となっています。
ロンバルディア州のブドウ品種
ロンバルディア州では赤ワインと白ワインの生産比率は半々で、だいたい同じくらいです。この地域ではネッビオーロの事をキアヴェンナスカと呼びます。
ロンバルディア州の郷土料理・チーズ
ロンバルディア州の多様な地形と気候条件は、農産物や畜産物の生産に影響を与えています。また、イタリアで最も豊かな州の一つというだけあって、地域の裕福さが料理に反映されているような雰囲気も伺えますね!
ロンバルディア州のD.O.C.G.ワイン
ロンバルディア州には5つのD.O.C.G.ワインがあります。
ワイン生産の中心地は3つあります。フランチャコルタでは高級スパークリングワインが造られており、オルトレポ・パヴェーゼはミラノへ大量のワインを供給しています。また、ヴァルテッリーナでは優れた「山のワイン」が生産されています。
Trentino-Alto Adigeトレンティーノ-アルト・アディジェ州
トレンティーノ-アルト・アディジェ州は、イタリアで最北部に位置し、オーストリアとスイスと国境を接しています。州の中央部をアディジェ川が流れ、両側にはドロミーティ山塊が広がっており、この地域は世界遺産に登録されています。
北部のアルト・アディジェ地方ではドイツ語が主要な言語となっており、南部のトレンティーノ地方ではイタリア語が主要な言語です。
アルト・アディジェ地方の住民は「ドイツ人以上にドイツ的」と言われ、伝統を重んじ、勤勉であるとされています。一方、トレンティーノ地方の住民も勤勉で控えめな人々が多いとされています。
この地域の大部分は山岳地帯であり、森林が全体の7割を占めている為、耕作可能な土地は限られています。
トレンティーノ-アルト・アディジェ州のブドウ品種
トレンティーノ-アルト・アディジェ州のワインは7割以上の生産が白ワインです。
トレンティーノ-アルト・アディジェ州の郷土料理・チーズ
トレンティーノ-アルト・アディジェ州は素朴な料理が多い印象です。リンゴの名産地でもあり、リゾットにまでリンゴが!他にも豚肉とリンゴのローストであるマイアーレ・アッラ・トレンティーナやリンゴ、干しブドウ、松の実をロール状にした焼き菓子であるストゥルデルなリンゴ尽くしです。
レーハークネーデルズッペは仔牛のレバーを入れたパン団子を浮かべたスープです。
トレンティーノ-アルト・アディジェ州のD.O.C.G.ワイン
トレンティーノ-アルト・アディジェ州にはD.O.C.G.ワインがありません。D.O.C.ワインにはスプマンテ、パッシート、ヴェンデンミア・タルディーヴァを造るアルト・アディジェなどがあります。
Veneto ヴェネト州
ヴェネト州の名前の由来は、原始時代にインド・ヨーロッパ語族のウェネティ族がヴェネト地域に居住した事だそうです。7世紀には、小さな島々が結集して誕生したヴェネツィア共和国が徐々に勢力を拡大しました。最盛期には、パドヴァやベルガモからキプロス島やクレタ島などまで支配下に置く巨大な共和国となり、「アドリア海の女王」と称えられました。
ヴェネト州の北部はドロミーティ山岳地帯であり、イタリアでは比較的平野部が広がっています。北部には東西に広がるドロミーティ山塊があり、アルプス山脈の一部であり、雪解け水をアディジェ川やブレンタ川、ピアーヴェ川などが南のアドリア海に流れています。水に恵まれ、農業が盛んです。
ヴェネト州はアルプス山脈が北からの冷たい風を防ぎ、アドリア海が気温を和らげるため、基本的には温暖な気候です。特にロンバルディア州との境に位置するガルダ湖周辺は温暖であり、レモンやオレンジなどの柑橘類やオリーヴが栽培されています。美しい自然環境に恵まれたヴェネト州は、イタリアでもトップクラスの観光客数を誇ります。ヴェネツィアやヴェローナ、パドヴァ、ヴィチェンツァなど、由緒ある美しい町が多く存在します。
毎年開催される国際ワイン見本市「ヴィーニタリー」が毎年開催されるヴェローナは「イタリアワインの首都」とされています。また、ヴェネト州ではプドウの絞り粕から造られる蒸留酒のグラッパも有名です。
ヴェネト州のブドウ品種
ヴェネト州のワインは8割が白ワインです。
ヴェネト州の郷土料理・チーズ
ヴェネト州はアドリア海に面しており、豊かな漁業資源を持っています。鰯(アンチョビ)を用いた鰯の南蛮漬けであるサルデ・イン・サオールや干し鱈(バッカラ)をミルクで煮込んだバッカラ・アッラ・ヴィチェンティーナが人気です。
海産物の他にもトレヴィスやホワイトアスパラ、とうもろこしなど、野菜も豊富です。
ヴェネト州のD.O.C.G.ワイン
ヴェネト州には14のD.O.C.G.ワインがあります。
Friuli-Venezia Giulia フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州は、州の大半を占めるフリウリと東のトリエステ周辺の小さなヴェネツィア・ジューリアに分かれています。
イタリア語とフリウリ方言に加えて、スロヴェニア語やドイツ語も州の公用語となっています。特にカルソ地域ではスロヴェニア人の生産者が多く活躍しています。
北部はアルプス性気候であり、降雨量が多い地域です。一方、南部はアドリア海の影響を受け、海岸地域は亜地中海性気候となっています。トリエステでは冬には「ポーラ」と呼ばれる冷たい風が吹くことがあります。
フリウリのアクイレイアは、古代ローマ時代から重要な地域や都市の一つであり、プルチヌムと呼ばれるワインは高い名声を誇っていました。このワインの原料とされるブドウは、グレーラ(以前はプロセッコとも呼ばれていました)の祖先ではないかと言われています。
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州のブドウ品種
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州は8割以上が白ワインで、白ワインの産地として知られています。
最近では、固有品種による赤ワインにも注目が集まっています。レフォスコやスキオッペッティーノ、タッツェレンゲなどの品種から個性豊かなワインが生み出され、カベルネやメルロにも複雑なワインが存在します。
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州の郷土料理・チーズ
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州はサン・ダニエーレ産のプロシュートが最高品質の生ハムとして知られています。また、スロヴェニアやオーストリアと国境を接しているため、東欧の影響も料理に反映されているようです。(パプリカ入りハンガリー風牛肉のシチューであるグーラッシュなど)
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州のD.O.C.G.ワイン
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州には4つのD.O.C.G.ワインがあります。
コッリオやフリウリ・コッリ・オリエンターリは、高級な白ワインの産地として知られています。
Emilia Romagna エミリア・ロマーニャ州
エミリア・ロマーニャ州は、州都ボローニャを中心に西側がエミリア地域、東側がロマーニャ地域として分かれており、それぞれ異なる歴史と文化を持っています。有名なオペラ作曲家のジュゼッペ・ヴェルディは、エミリア地域のパルマ県出身です。また、著名な自動車メーカーであるフェラーリやマセラティもエミリア地域のモデナに拠点を置いています。
エミリア・ロマーニャ州のブドウ品種
エミリア・ロマーニャ州では赤ワインと白ワインは半々で、同じくらいずつ造られています。(若干白ワインが多め)
エミリア・ロマーニャ州の郷土料理・チーズ
エミリア・ロマーニャ州は、イタリアの中でも特に豊かで多様な食文化を持つ地域です。
この他にもイタリアを代表するチーズの一つ、パルミジャーノ・レッジャーノなどがあります!
エミリア・ロマーニャ州のD.O.C.G.ワイン
エミリア・ロマーニャ州には2つのD.O.C.G.ワインがあります。また、D.O.C.ワインにはD.O.C.G.ワイン以上に有名なは微発泡性の赤ワイン「ランブルスコ」があります。
おわりに
ここまで読んでくださったプレ・ソムリエの皆さん、お疲れ様でした!次回以降は中部イタリア、南部イタリアと続きます。
プルールでは北部イタリアをはじめ、世界各国のワインを取り扱っています♪
オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m
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