間違いだらけのおまえのまま、答えになれ。
「賢くなるなよ 間違いのない答えはない」
そう書いてくれたおかげで生きられた。ローズボディのストラトキャスターは、まるでギターじゃない何か別の楽器のようだった。
「西東京」なんて誰かが勝手に名付けた街々の名前を、渇いたユーモアと疾走するリズムで笑い飛ばしてくれた。
国民的アイドルに楽曲提供したとかそんなことはどうでもよくて、ただ、唐突に頬を引っぱたくような、次の瞬間優しく撫でてくれるような彼女の書く曲が好きだった。
タバコを吸って。ジャージを履いて。ギターを鳴らして。鍵盤を叩いて。ピックを持つ手も。フレットの上を踊る指も。ステージで時々満足そうに浮かべる笑みも。
もう、ない。どこにも。
けつまずいて転んでどうでもいいことにこだわって、心がどこにあるのか幸せってなんなのか、越し方も行末も正しい道なんかわからなくて間違えてばかりの僕に授けてくれた。言葉を。
おまえが歩いたその跡が、答えだと。立ち尽くして振り返った、情けない顔のおまえ自身が「答え」だと。間違いだらけの、苦し紛れに埋めたしょーもないこのくしゃくしゃの答案用紙こそが、おまえだと。
「どうだ? その不正解ばっかの、落第点の、人に見せられないテストの答案。それが、おまえだ」
そして、でも、と続けるのだ。
「でも、とっても綺麗だろう?」
うん。そうだね。綺麗だ。
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