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『サムフェンダー・Seventeen Going Under』アルバムレビュー【音楽】


はいということで本日はほぼ私と誕生日と生まれ年が同じなイギリスはサムフェンダーにて Seventeen Going Underをレビューしていければと思うのですが、

本作は3年ぶりのアルバムにとなっていて前作ハイパーソニックミサイルは現代のギターミュジックに息を吹きかけんばかりの小賢しいトリックなしのギター一発勝負という彼のスタイルに多くの人が魅了されたのではないのでしょうか。

現代の音楽のツールが増える中で個人的にギターと歌詞だけで勝負しているアーティストはとても好感が持てますし、個人的に大好きです。

前作は彼の経験をマクロな視点に落とし込んだ歌詞や政治思想が歌詞に現れておりましたが、今作は歌詞に置いて彼が「歌詞の面でファーストは外向きだったけれど、今度のアルバムは僕自身、ノース シールズ、友人や家族についてなんだよ。すごく地元を歌っているんだ」と述べるようにミクロな視点でのアルバムになっていると思います。

また彼の大好きなサッカークラブニューカッスルユナイテッドのオーナーがリリース日に変わるなど彼にとって街にとっても大きな日になったと思います。

全体を通してこのアルバムは重厚な音に裏付けられる彼のホームタウンニューカッスルのダークな雰囲気。ただとてもポジティブで元気を貰えるサウンドと歌詞。

今作は自身を持ってスタジオに臨んだと語るように個人的にこのアルバムは今年聴いたアルバムの中で頭を殴られるような衝撃を喰らった唯一のアルバムです。

1. ‘Seventeen Going Under’

この曲は彼が17歳の頃の彼の辛い家庭内での出来事を歌っており、

とても暗い10代の出来事を10年間かけて自分の中でやっと落とし込んで書いた歌詞

I remember the sickness was foreverから曲が始まります。

UKロック独特の湿ったギターサウンドが彼の暗い街を創造させ、

そのサウンドが徐々に力強くなります。ただその力強さをすごく彼の悔しさからきてる力強さに聞こえます。鉄琴の音やサックスの音がキラキラとバッキングで鳴らされるのが逆に彼の辛い過去に対称性を持たせ

She said the debt, the debt, the debt So I thought about shifting gear And how she wept and wept and wept Well, luck came and died 'round here I see my mother, the DWP  see a number She cries on the floor encumbered

という歌詞がそれらを裏付けます。

すごく白黒で描かれた殺風景な景色で描かれる音楽です。ジョイディビジョンが題材のコントロールを思い出しました。

2. ‘Getting Started’

この曲と13曲目のpretending that youre deadは今作の中でも特段お気に入りなんですけど

メロディラインが完璧すぎて初めて聴いた時は鳥肌立ちました。

メランコリーなギターと対照的にビートの早いドラム、タンバリンの音、重厚なサムの声。

これらが完璧な融合を果たして僕らが世界に入り込む隙間すら与えてくれない迫力で迫ってきます。18歳になり多感な彼が家庭と彼の人生の辛い記憶が Eighteen, failed dream Attracted to a bad scene

When you're out of luck and your mother's in need I made my money for the crooks and pushers In the hopes that I got somethin' together for tonight I'm going out Oh, tonight I'm going out

という歌詞とともに駆け抜けるように流れてきます。

どこかキラーズを連想させるメロディーと声のトーンに惹かれます。

I'm only gettin' started Don't mean to be disheartened It felt like I'd give it up so many times before But I'm still here grindingと彼が歌う瞬間鳥肌が立ちます。

3. ‘Aye’

3曲目で前作に続き政治的な曲が描かれます。

過去の歴史と天上人を絡めて彼らをそのタンパクかつ重厚なサウンドともに批判します。

この曲もとんでもない迫力と気迫で迫ってきます。

Poor hate poor hate poorという貧しい人が更に貧しい人を憎みという歌詞はとても印象的で彼の育った街の環境を連想させ

ジョージオーウェル1984を連想させる歌詞や人や街をゴミとしか見てない人達が過去の歴史と結びつけられ描かれるのですが、とてもリアルでイギリスのワーキングクラスの怒りの炎を目の前で見ている感覚に陥ります。この曲を聴いていてサムはこの怒りを音楽に落とし込むことができましたが、同時にこの怒りを行き場のないところに失ってしまっている人々の感情も目にした感じがしました。

4. ‘Get You Down’

アルバムで一番かっこいい曲ですね。

最初はほぼサムのギターのみで始まるんですが、そこに徐々に楽器が加わり2回目のバースでドラムが入るシーンがカッコ良すぎてここでも鳥肌でした。

この曲でライブが始まったらおしっこちびるレベルでかっこいいです。

この曲はアルバムの中でもより個人的に自尊心の低さが人間関係に直結することを謳っており、彼が幼少期から抱えてきたトラウマを恋人にぶつけてしまう様が描かれています。

物悲しく青白いイギリスの湿った雰囲気のある曲なのですが、力強くカッコよく。

ただ聴いてみてほしい曲です。

6. ‘Spit Of You’

繊細でありながらワイドで複雑に絡み合うギターリフに歌われる父への愛の歌です。

サムと父の関係は非常に難しい時期がありましたが、それは愛の裏返しと歌われるように

繊細で美しいギターと歌われる歌詞に注目です。

9. ‘Mantra’

"Please stop tryin' to impress people who don’t care about you"

という歌詞は音楽業界で出会ったソシオパス的で自分たちの利益のことをさしていて、

ただSNSの誹謗中傷のことも同時に指しているように感じました。

音色はとても暖かく、サックスの音が光をギターの音の空気感が明るさを出し

まどろんでる感覚を誘発します。

13 Pretending that you’re dead

個人的にかなりお気に入りの曲で、

The cureやどこかミスチルも連想させるメリーゴーランドに乗っているかのようのメロディーにピアノのアクセントが最高に聴いていて、アルバムの中で一番メロディックなサウンドはどこか夏の夜に彼女とサーカスにデートしているかのような気分です。

曲自体はサムが16歳の時に彼女に浮気された時のことを謳っているんですけど、

その淡さもあわさって学生時代の恋愛を思い出しました。

夏の夜に散歩しながら聴きたいなあ。

14. Angels In Lothian

のキュアっぽいシャンデリアのようなサウンドに

15. Good Company

のフィンガーピッキングはとても美しくずっと聴いてられます。

James bayを連想させられるハーモニーに悲しい歌詞とシンパシーに引き寄せられます。

全体的に見ると

彼の経験の内省がとても深く歌詞に落とし込まれ

ミキシング、音の迫力、力強さ

どれをとっても一級品です。今年最高に好きなアルバムでした。

やっぱりギターと歌詞一本で勝負しているアーティストはかっこいいですし

このアルバムはとてつもない覚悟を感じました。

彼の世界に深く深く引き込まれていきますし、こんなにも迫力迫るアルバムは久しぶりでした。

絶対的おすすめのアルバムです。

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