『ビリーアイリッシュ・Happier Than Ever』アルバムレビュー【音楽】
はいということで本日はbillie eillishでhappier than everをレビューしていければと思うのですが、前作で世界のメインストリームアイコンとなり、新たな音楽ジャンルを切り開いた彼女ですが
今作は前作に囚われずに完全に孤立して外界の情報をシャットダウンして制作されました。
今作を制作するにあたり彼女はインタビューでこのように述べております。
『Happier Than Ever』と前のアルバムに関連性はない。でも同時に180度変わったわけじゃなく、だた前回とは異なる新しい作品というだけ。不思議なのは同じものを作っても文句を言われるけど、方向性を変えても怒られること。どっちにしろ批判されるんだったら自分がやりたいことをやればいい。最近そのことをよく考えてる。もし似たようなジャンルの作品を作って見た目も何も変えなかったら、『またこれかよ』ってやじられるし、逆に変えたら、『なんで変えたの!?気は確か!?』って言われちゃう。どっちにしろ嫌われるなんてやってらんない。
アートの革新は何か違う角度から新しい視点を観客に与えることだと思うのですが、彼女の洗練されたミニマルな打ち込みだけで人間の負の隙間に入り込む音楽は、それまでのポップスと一線を画していました。
今作もそれは変わらず兄フィニアスのミニマルなのに繊細で複雑に絡む音と、ビリーの吸い込まれるような美しい韻の踏まれた歌詞が融合し、吹き出さないマグマのような内へ内へ潜りこむドロドロとした熱帯を感じます。
ただ、今作はそこに夏の涼しい夕方の孤独な時間のような哀愁と幸せが混じった不思議な感情が音から伝わってきて、前作のダークな雰囲気から確実にトランスフォームしていることが感じることができます。
1. Getting Older
淡々と変化する思いシンセに淡々と物思いにふける歌詞に胸を打たれます。
Things I once enjoyed Just keep me employed now Things I'm longing for Someday, I'll be bored of It's so weird That we care so much until we don't
彼女がこれまで抱えてきたトラウマや葛藤。それらとこれまでずっと向き合ってきてまだ完全に幸せではなく、これからもそれらとは付き合ってはいかなければならないけど、それでも歳を重ねるごとこれまでの人生の中で一番幸せになっているという風に私には聞こえる I'm happier than ever,という歌詞で開幕するアルバムは確実にポジティブに向かっていることを私たちに印象付けます。
3. Billie Bossa Nova
前作には見られなかったビリーのボサノヴァはビリーの特徴をボサノヴァという皿に乗せ
女の子としてのビリーではなく女性として色気のあるビリーが辛抱に辛抱を重ね恋人と密かにホテルで密会するまでが描かれるのですが聞いているだけでその情景が映画のように浮かび上がりエロティックなエレキギターのサウンドと密かに響くピアノの音がエキゾチックな雰囲気を醸し出す凄く映像的な楽曲です。
4. My Future
https://open.spotify.com/track/3YUMWmx8EJq0DurfuIwoGh?si=bbef21ae532d4ebc
メローなエレキピアノとドラムの独特なテンポにこれまでのビリーの雨の夜のような寂しさ残る雰囲気を掛け合わせたようなバラードは過去の恋人と別れたこと未来の自分に恋をして前向きに生きるからと必死に強がっているのに何処か心の底で忘れないことが伝わるナンバーで
バラードで始まり徐々にポップスに変化していくのですが、それが心情の変化を表すように響いてバラードの時は過去の恋人に対して歌っているように聞こえるのですが、曲が進むに連れ未来の自分に対して曲を歌っていることが But I (I), I'm in love (Love, love, love, love) With my future And you don't know her (Ooh) And I, I'm in love (Love, love) But not with anybody here I'll see you in a couple years という歌詞から読み取れます。
5. Oxytocin
前作の雰囲気に一番近い楽曲で、早くダークなテンポなLAポップとベースのダークな雰囲気は
デトロイトやクリーブランドあたり湿っぽいメタルの雰囲気を表現しているような気がしました。
この曲も彼女が彼女自身に歌っている自己暗示のようなメッセージが You and me are both the sameという歌詞から垣間見えるのですが、彼女自身何処かドラッグで幻覚を見ているような感覚に近いものを感じます。この曲で彼女の二面性というかもう一人の自分を強烈に意識していることを感じました。
7. Lost Cause
テイラースウィフトに22という曲があるのですが、あの曲がダークサイドに落ちたらこの曲になるんじゃないかなと思いました。
この曲は新たな彼女の1ページになるのではないかと思うほど、
声のトーンがこれまでにより高く、セクシーに幅を効かせ
それと同時にバッキングベースのアクセントが重いの他曲に厚みと幅を
シンセの音が深みを生み出します。
個人的にこれまでの彼女の楽曲とは似てるのですが何処か半歩踏み出した革新的な曲だと感じました。
8. Halley's Comet
60年代のフランス映画のような美しいメロディー、フィナーレはララランドの楽曲のような美しいメロディーが心に深く染み込むナンバーで
ここから9曲10曲とかなりローテンポな曲が続き、
11. Everybody Dies
Everybody diesという一つのリリックから展開されていくライムとそこに乗っかるミニマルな音。
少ない構成音の中で生み出される深い奥行きを生み出し、
12. Your Power
乾いたアコギと湿ったシンセの深い親和性に
霧の立ち込めるような小雨の湖が広がり、
近年起きている女性への暴力や、男性の権力の乱用・能力史上主義への批判が彼女なりの形で歌われていくのですが、
そういった権力の濫用を彼女なりの批判
I thought that I was special You made me feel Like it was my fault, you were the devil
という彼女もそういった被害を受けていたのかもしれないという歌詞
淡々としたメロディーは起伏がないのですが、彼女のもつ歌詞の力は多くのリスナーに共感を呼びSpotifyでは約2億回再生されています。
そういった意味でこの曲は弱者の剣となっているのかもしれません。
それは
14. Therefore I Am
にも続いていて、
この曲は主導権が彼女に移っていて I'm not your friend Or anything, damn You think that you're the man I think, therefore, I amという歌詞から
何事にも媚びない意思が伝わってきます。
この曲もベースが効いていて、ニョキニョキと伸びる木のようにビリーのライムを支えます。
アルバムを聴いていると分かると思うのですが、
前作の成功に全く媚びずに新たな可能性だけを自分の感覚と結びつけながら開拓し続けていルのが、曲を聴いているととても伝わってきます。
15. Happier than ever
When I'm away from you I'm happier than ever Wish I could explain it better I wish it wasn't trueという歌詞からも想像できるように、すごく自立的な歌詞から始まるんですが、
前半と後半では全く違う顔を持っていて、
歌われていく内容もより過激になっていきます。
モヤがかったウクレレから曲の半分で一気に怒りの籠もったヘヴィーロックに展開されるフィナーレはこのアルバムだけではなく彼女のこれまでのキャリアの集大成のように壮大に美しく鳴り響きます。
分厚いギターのサウンドにビリーの叫び、これまで目をつむっていた凶暴のドラムが目を覚ましビリーの凶暴性を
You ruined everything good Always said you were misunderstood Made all my moments your own Just fuckin' leave me alone (Fuck you)
という歌詞で届けます。
かと思ったら、16. Male Fantasyの優しいアコギに歌われるある女性を忘れることが出来ないという寂しい歌詞は前の曲とのコントラストをより増幅させ余韻を残してアルバムに幕を閉じます。
全体的に見ると
若くして成功を手にした彼女がすいも甘いも経験して、
その中で過去の成功に囚われず、新たな可能性を開拓し続けていることが曲の裏側から伝わってきます。
特に反権力や他人に媚びない姿勢が音楽の中に見受けられ、
誰に何を言われようとも自分の意思を貫くしこれからもそうしていくこと
そしてその重要性をリスナーに提示するメッセージがこの多く含まれていると感じました。
年を取ること、大人になること、成長することはそんなに悪くないことなんだと、
自分の主張を持つことは大切なんだとリスナーに提示しています。
彼女の影響を受けていルティーンネイジャーが成長して社会も変化していってると思います。
社会を動かすほど影響力を持った彼女の音楽を一度体感してみてはいかがでしょうか。
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