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『2021年お気に入り音楽アルバム』【音楽】
1.Sam Fender/Seventeen going under
一つ目はサムフェンダーにて seventeen going underです。
今作は全体を通してこのアルバムは重厚な音に裏付けられる彼のホームタウンニューカッスルのダークな雰囲気。ただとてもポジティブで元気を貰えるサウンドと歌詞。今作は自身を持ってスタジオに臨んだと語るように個人的にこのアルバムは今年聴いたアルバムの中で頭を殴られるような衝撃を喰らった唯一のアルバムです。
迫力のあるギター一発で勝負してくる感じは彼の人生を体現しながらも、同時に僕たちの背中を押してくれます。
2. Lil Nas X/Montero
ヒップホップ特有のドスの聴いたビートをカントリーと融合させ、
中和させつつもとてつもない個性と美声。
中毒性のあるメロディーと一度聴いたら止まらないです。
繊細に綿密に音楽的に組み立てられた楽曲はヒップホップが苦手でも心地よく聴けると思います。若干22歳とは思えないほどアイデア・過激さを兼ね備えた歌詞や映像美
同時に「同じ悩みを抱えている、僕より若い人たちのためにカミングアウトした」と語るように性の悩みを抱えている人たちを解放する音楽は等身大ですっと心の中に入ってきます。
3.John mayor/Sob Rock
ジョン自身が「リードギターがエリック・クラプトン、リズム・ギターがスティーヴ・ルカサー、シンセが露骨なまでにTOTO…、ドラムはフィル・コリンズ」と語るように変幻自在のジョンの変わりゆく音楽80年代バージョンの今作は面でメロディーやグルーブに重点を置きながらも、
点と点でギターやシンセでアクセントを加え前作のウォームさに加えより感傷的でありながらも敢えて出される古めかしさがどこか前衛的で、曲の一連の流れは完璧に響き
殆どシングルトラックとして一年単位でジョンが時間を掛け制作してきた楽曲たちは重厚でありながらポップで聴けば聴くほど好きになるアルバムです。
4.Fenne Lily/Breech(acoustic)
こちらEPになるのですが、
彼女のアコースティックはベンジャミンフランシスレフトウィッチに出会った時と同じくらいの衝撃があります。BREECHというアルバム自体は去年リリースされているのですが、
それらの曲をアコースティックでアレンジし、彼女自身イギリスのブリストル出身ではあるのですが北欧的でだけど殺風景すぎず気持ちよくなっています。
昨年された通常のアルバムよりもアコースティックの方がより彼女の乾いた声質が際立ち、
ミキシングも彼女のボーカルに重点が置かれ、乾いたアコースティックの楽器との相性が抜群でスーッと入り込んでいきます。
最高のExtended Playですので是非聴いてみてください。
5.Olivia Rodrigo/Sour
若干18歳にて今年マッシブヒットを連発している彼女の集大成でもあり、処女作。
SNSでも聴いたことある方も多いと思いますが、
耳に付く独特なメロディーラインとハスキーの声から出される美声はロードやビリーアイリッシュを連想させ
ミレニアル世代の心の中を覗き込んだかのような10代だから書ける淡い歌詞は初々しい頃のテイラースウィフトを連想させ、それらがブレンドされた時に”彼女の音楽””というものを初めてリスナーは認識できるようになると思います。
6.Fur / When you walk away
小細工なし正真正銘のブリットロックンロールという言葉一番似合うアルバムです。
トラディショナルでありながらコンテポラリーなこの時代では珍しいイントロに約1分間奏も1分とかなり攻めている曲が多いのですが、それがとても心地よくギターロックの象徴のようなサウンドを鳴らしてくれます。
音域、音の幅、サウンドクオリティ、迫力、音の緩急、曲の構成、どれをとっても一級品で音域が解放されファインラインを超えて飛び出してくる各々の楽器は無駄に気取らず剥き出しで心に訴えかけてくるので純粋であればあるほど心に響くアルバムだと思います。
カネコアヤノ/ よすが
聞けば聞くほど心地よくなり春から夏に移り変わる季節と何気ない日常に溢れる幸せを与えてくれます。
微睡のあるギターメロディーに、地続きの日常を表現したかのようなドラムビート
街の商店街のような優しさに包まれたベース、純粋無垢の美声
これらが欠けることなくバランス良く鳴らされていて、リアルな結束とサウンドを表現したこのアルバムは少なくとも僕にとっては時代の荒波に紛れることなく、どんな時代でも部屋の片隅から流れてくるずっと記憶に残るアルバムだと思います。
8.Dayglow / Harmony House
過度にオーバープロダクションでない点も僕らのインディーヒーロー感がすごく出ていて、
ミニマルなのに幅の聴いた音は等身大に身体に馴染み、
近所のお兄さんのように柔らかく響くサウンドはポップで子供心を出しながらも
80年代のディスコやゲーム音楽を連想させるシンセサイザーがMGMTやフェニックスのような雰囲気を感じさせます。
流れるように曲が進んでいき、気が付いたらポジティブなエネルギーを与えてくれている。
各々の曲は独立して個性的な響きを奏でながらも、それらがアルバムとして繋がった時に一貫性を保っている素晴らしいアルバムだと思います。
9.Snail Mail/Valentine
デビューEP「Habit」をリリースし、アメリカの音楽メディア PitchforkやThe New York Timesなど多くの媒体から称賛を集め、デビューアルバム「Lush」で、一躍アメリカのインディーシーン
を席巻し若干22歳の彼女ですが、その衝動に掻き立てられたようなハスキーな声とマイブラやソニックユースを彷彿とさせる寂れたギターサウンドの相性がとても良く。
寂れているのに、とても煌びやかでカラフル。
レズビアンである彼女が、いつか好きな人と離れてしまう恐怖、それでも常識を拒み自分の意思と愛を求め続ける意思がサウンドから感じ取れます。
個人的にグランジサウンドの彼女より、柔らかいアルペジオやアコースティックの4曲目light blue10曲目miaといった曲が彼女の抱えている喪失感や心の空白を
とても上手に表現していて、その分ガレージサウンドになった時の現実に争うサウンドが強調されていて、拒絶と受難がとてもバランスよく響いてくるアルバムだと思います。
10.Clairo / Sling
穏やかに木漏れ日の中を泳ぐような、微睡のあるアコースティックなサウンドに
囁くように歌われる彼女の声は寂しさと気だるさを兼ね備え、やることのない休日のやるなさを体現し、それが自己のと他者を見つめ直すスペースを音と音の間から与えてくれます。
前作の急激なヒットやバイセクシャルな一面から多くの批判を受け、精神的な苦痛になった彼女が家族や愛犬と過ごすことによって自分自身をヒーリングしていく姿がこのアルバムではリスナーにも波及し私たちの心に自分や他者と向き合う心の余白を与えてくれます。
11.King of Convenience/Peace or Love
12年ぶりのリリースとなった今作。
待ちに待った方も多いのではないのでしょうか。
今作も前作と変わらずにその優しいクラシカルスタイルのフィンガーピッキングギターメロディーは広大なノルウェーの草原を連想させ、どこかボサノヴァのようなメロディーもアルバムの要所要所で見せてくる。
12.Clap your hands say yeah / new fragility
4年ぶりのアルバムはマジで吹っ切れてて好きでした。
鮮烈なデビューアルバムから私が2014年アレックに初めて会ったonly runリリース時にはメンバーも脱退してしまって、アレック自身もがき苦しんでいた時期もあったと思うのですが、
今作は本当に吹っ切れていて、物凄く晴れやかな景色が広がっています。
Clap your hands昔は聞いてたんだよなーという人に是非聴いてほしい一枚です。
CYHSY2005というデビュー当時の様子を回想する曲もあったりと、過去を振り返りながらも前に進み続けるプロジェクトは色褪せずに、響いています。
13.Lowertown / The Gaping Mouth
7曲と短い構成ですが、lo-fiなアコースティックなサウンドと耽美な声で曲の可能性をここまでかとマキシマイズしている点、何より私が大好きなマイナー調で朗読調のフィンガーピッキングから徐々にストラムで昂りを見せていく3曲目タイトルトラックはdirty hitのインディー精神を体現している感じました。
14.Billie Eilish / Happier Than Ever
アートの革新は何か違う角度から新しい視点を観客に与えることだと思うのですが、彼女の洗練されたミニマルな打ち込みだけで人間の負の隙間に入り込む音楽は、それまでのポップスと一線を画していました。今作もそれは変わらず兄フィニアスのミニマルなのに繊細で複雑に絡む音と、ビリーの吸い込まれるような美しい韻の踏まれた歌詞が融合し、吹き出さないマグマのような内へ内へ潜りこむドロドロとした熱帯を感じます。
特に反権力や他人に媚びない姿勢が音楽の中に見受けられ、誰に何を言われようとも自分の意思を貫くしこれからもそうしていくことそしてその重要性をリスナーに提示するメッセージがこの多く含まれていると感じました。年を取ること、大人になること、成長することはそんなに悪くないことなんだと言われてる気がします。
15.Benjamin Francis Leftwich/To Carry A Whale
特別起伏のアルバムではありません。なので、好みの分かれる作品ではあると思いますが、
その起伏のなさがまた良い。父親の死、アルコール中毒、恋人との別れを乗り越え、1stで最高傑作を作り、2ndでその続きを3rdで実験的になりと2011年から続いた一つのチャプターが終わり2021年からの新たなチャプターの始まりを感じさせてくれる、哀愁と希望、そしてその裏にいつも見え隠れする絶望と悲観を切ごとではなく包み隠さずに真実の気持ちが表現されたアルバムです。sydney2013という大切な人を失った年のことが描かれた曲は哀愁、乾いた気持ちを表現したアコギ、アコギからベース、ドラムが入り気持ちが昂り、そして沈んでいく。
その様は彼の心の中を見ているかのような気持ちになりますし、ベンジャミンの中でも最高傑作の曲の一つだと思います。