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アートマイムの味

JIDAIさんのアートマイムを観てきた。いや、観たのかな?感じた?体験した?ぴったりな言葉が見つからない…。

シアターΧ(カイ)という劇場の中にJIDAIさんが生み出した空間で、オーディエンスとして客席で過ごしていたのは確か。でもなぜか、舞台上でJIDAIさんが動いてるのを観ているうちに夢か現かよくわからない感覚になった。


そう、身体の力が抜けていって、身体も頭もほけーっと力が抜けてるそんな状態に連れていってもらった感じ。舞台が終わった時にうたた寝からすーっと目覚めるのに似た感覚になって、あ、私ここにいたんだと、イマココに戻ってくるような体験をした。

でも、寝ちゃっているのとも違って、目の前で動いているJIDAIさんをじーっと観察している私はちゃんとはいて、感じているものは伝わってくるものなのか自分の中から沸き起こっている感覚なのか境目がわからなくなる。

何が演者のメッセージなのかを探っているからの混乱のようでいて、自分が見たくなかった無意識に中に潜んでいた自分の感情を見てしまったからの混乱でもある気がして。JIDAIさんの動きと自分の中の動きを行ったり来たりしていた。

怖い映画なんかを観て嫌な余韻に呑まれるのとは違って、舞台が終わるとちゃんと我に帰れて、むしろすっきりというか、あぁ気持ちよかったという感じがする。だからか、なんだかその行ったり来たりな感じも嫌じゃない。そして、知らなかった世界を知って、なんだろうこれと?更なる問いがぽこぽこと湧き出てくるのも面白い。

自分とJIDAIさんが作る空間と時間との境界が曖昧になる、そんな不思議な体験をさせてもらえるのが私にとってのJIDAIさんのアートマイムかな。

JIDAIさんのアートマイムの動きの中には、わぁ美しいと目を奪われる場面も、なかなかにおどろおどろしいと感じたり、うぐっと苦しくなるような場面もある。けれど、彼が演じている時間と空間の中で過ごした後しばらくすると、とても身体も心も緩んで、解れている自分に出会える。何作品か観たことはあるのだけれど、私はこの感覚を手渡してもらえるのが好きなんだと、今回初めて気がついた。

アートマイムがなんたるかを語れるほど私は知らないけれど、JIDAIさんの身体の中の微細で緻密に作られた動きと共に生み出されているアートマイムの表現は、とても"リアル"だ。

それは、動きだけではなくて、そこにある空間や時間や、見えていないのだけれど感じられる揺れ動いていく感情などが、オーディエンス側の私の中のよく分かってはいないけれど何か知っているものを呼び出してくれるから。

JIDAIさんが表現する動きに人の中の光と影や意識と無意識の世界を行き来しているような感じがいつもあって、観ているその時の私の中にある私を"リアル"に感じられる瞬間がたくさんある。音がないのに音が聞こえてきたり、1人しか舞台上にはいないのに見えていない何かが見えるような気がしたりすることもなのだけど、オーディエンス側の私の中にふわぁっと入ってきて自分ごとのように感じさせてくれるから"リアル"なのかもしれない。

その秘密も教えていただいたのだけど、言葉になりきらないのでまたそのうち。

JIDAIさんのアートマイムは、覚悟して口に入れた黒いlicorice candyが、いつもと真逆で虹色の味がした、そんな感じ。

#JIDAI
#アートマイム
#見えない世界
#シアター Χ
#マイミクロスコープ
2023/3/27 夜のアートマイム劇場 第二十七夜


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