見出し画像

2024.6.30.田島環さんアート・ワークショップ~あるメタモルフォーゼ~(研究生日誌/ゆきの)

画家でもある環さんのワークショップは、言葉にするのが難しい。言葉にするのが難しいことをするのが、環さんのワークショップの醍醐味だと私は思っている。だからこのnoteに文章として載せるのも正直難しいなと思っているのだが……。挑戦してみることにする。

今回使ったのは、紙粘土。はじめての人でも扱いやすい、ちょっといい粘土を環さんは用意してくれた。乾きにくく、まとまりやすいけれどよく伸び、手にべたべたと付くこともない。

ワークショップの名前は「イメージをプリズムに。光を、そしてバラバラに」だが、そのシリーズの中の今回は「あるメタモルフォーゼ~球の記憶から」なのだと、最初に環さんは話してくれた。

”メタモルフォーゼ” を調べてみると、変化・変形・変態・変身の意とある。

まず四角い新しい粘土を袋から出し、カレールーの欠片1個分くらいの大きさにちぎっていく。そのひとつを丸めて小さな球にする。それを核のようにしてほかの欠片をひとつずつくっつけて大きなひとつの球体にする。

なるべくまん丸になるように、いびつなところがないように、両手の中で転がしたり、テーブルの上を転がしたりする。そうすると表面が滑らかになって肌触りもよくなってくる。ちょうどソフトボールくらいの大きさの球体は、手に持ちやすく適度な重みもあり、私はなんだか遠くへ投げたくなる衝動にかられた。

そんな風に、しばらくその球体を味わった。

そうすると、環さんから次の作業への声がかかった。

「ねじる」をその粘土で表してみて。球体はもう壊しちゃっていいから。
自分の中で「ねじる」って言われたら、どんなイメージが浮かぶ?

えっ?せっかく綺麗な球体にしたのに壊しちゃうんだ。
「ねじる」?…ねじってみたけど。
ねじってみたけど、ねじったように見えるかな?

実際にぞうきんを絞るように粘土をねじってみた

しばらく、「ねじる」と試行錯誤。

次はね、「のびる」。

環さんは、ホワイトボードに大きく「のびる」と書きながら、

のびる、のびてるなーっていう感じ・イメージは自分の中でどういう感じ?その感じを粘土で形にするとどんな風になるのかな?
のびる “物” を形にするんじゃなくて、「のびる」そのものを形にするの。

そうか、実際に粘土をねじったり のばしたりするんじゃないんだ。
「のびる」イメージを形にするのか。

うーん、これからのびていきそうな植物の芽を作る、バネの形を作るのとも違うのか。

こんな感じかな?もっともっとのびそうな感じにしたいけどな。
私の中の「のびる」イメージは、もうちょっと、こう、ビヨ~ンとした感じなんだけどな。どうしたらそんな感じになるかな?

迷いながら、そして粘土での表現に技術的な力量不足を感じているうちに、
次のお題、「ひろがる」。

牛乳みたいな液体がひろがっていく感じ、
宇宙で起きたビックバンがひろがっていく感じ、
どうかなぁ、「ひろがる」に見えるかなぁ?
もうちょっと、動いてひろがっていく様を表せないかなぁ?

それではね、みなさん
今度は3つやったうちのひとつをまたやってみてもいいし、この3つのどれでもいいので、組み合わせたものを作ってみてもいいですよ。
のびてひろがる でもいいし ひろがってねじる でもいいし。

ねじりながらのびていく、にしようかな?
なんだかこの方がのびていきやすい感じがあるな。

ほかの参加者も、夢中で自分のイメージを形にしている
環さん(1番左)は、にこにこしながらその様子を見ている

さて、ちょっとここでみんなが作ったのを持ってきて、みんなで眺めてみましょう。

みんなのイメージが並ぶ

うーん、ねじられてるぅー!わかるわかる!
最後がちょこんとしっぽみたいにのびてる、これもたしかにのびるだ!
ひろがってから、すーぅっと上にのびてる、いいわぁ。
みんなの粘土を見て、私はなんだかワクワクしてきた。

みんながだいたいの作品を眺め終わると、環さんはこんなことをおっしゃった。

例えばね、このひろがりから上にのびていこうとする時、この途中ののびていこうとする過程の盛り上がる厚みとそこに向かうためのこのカーブ、ここにエネルギーがあるの。まさにひろがりからのびていこうとするこのライン。ここに「のびる」がある、みたいなこと。

うわー!それそれ、私の大好物!
それだよね!自分が粘土で表現できたかどうかは分からないけれど、私はそんな微妙な誰も気づいてくれないんじゃないかと思うような(いやぁ、今までは誰かに話しても理解されないことが多かった)、そんな何かに「あぁ、いいなぁ」「好きだなぁ」と思ってしまうことがある。

環さんの言葉を聞いて、そうかここに私の大好きがあったんだ!そこか!と、とても嬉しくなった。

そして最後に、粘土をまた球体に戻していった。
でも、明らかにその球体は最初の粘土の球体とは違うものだった。「ねじる」「のびる」「ひろがる」を経たことを、粘土も私も知っている。
環さんが「メタモルフォーゼ」と言った意味がここにあったことを話してくれた。

なんだか大人が真剣に、自分の中の形のないものを形にしようと粘土と格闘している姿は滑稽で、外から見たら「何の意味があるのだろう?」と思われるかもしれない。でも、この意味のなさそうなこの過程を経験するのが、いいのだ。それを言葉にするのはやっぱり難しいし、受け取るものは人それぞれだと思うが、私にとっては、本来の、嘘のない自分に接する貴重な時間だった。


次回のアート・ワークショップ

3回シリーズの最後は、8月4日(日)開催です。次はどんなアート・ワークショップになるのでしょうか、とても楽しみです。
アート体験をしながら、今までずっとここにいた自分に、もう一度出逢ってみませんか。


第1回の様子を、研究生たかさんがnoteに掲載しています。


【お知らせ】「鹿島 寛 田島 環  展」coming soon!

会期:2024年7月15日(月)〜7月20日(土)
時間:11時00分〜19時00分(最終日17時まで)
会場:ギャルリー志門(東京都中央区銀座6-13-7新保ビル3F)

田島環さんInstagram


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?