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「家で出来る演劇と岸田國士」_神山慎太郎の話


#家で出来る演劇 ディレクターの日野あかりです。

今日は出演者の神山慎太郎くんの話です。

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はじめまして。神山慎太郎と言います。今年で28になります。

 くらやみダンスという学生の時組んでた劇団が最近復活しましてそこに属しているのと、ガガというユニットを去年組んでそこでもこれからぼちぼち活動して行こうと思ってます。日野さんの家で出来る演劇に家から参加した縁が、今回家で一緒に演劇をする実を結んでくれました。家ってすごい、なんでも出来ますね。

 今回のお話頂いた時は本当にうれしかったです。3月自劇団の公演が延期になり、5月に予定されていたものも延期になり、今年はもう舞台になんてたてないんじゃないかと思っていたところにポンと出来た機会なので、胸躍りつつ、万一があってはならぬと気を引き締めつつ、日々稽古に臨んでおります。

 さて、稽古場日誌的なものを書きます。
このコロナ禍で舞台に立てないもんだから短歌をはじめまして、歌日記みたいにして書いていこうと思います。洒落てるでしょ。鼻についたらごめんなさい。

 思えばフライヤー撮影で集まったのがこの企画の最初の動きでした。日野さんや佛淵さんとはそれまでオンラインでしか会ったことがなかったので、いわゆるオフ会じみた印象を持ったことを覚えています。佛淵さんが思ったよりはるかに大きくて、それまで知っていたその人の情報が暴力的に書き換えられる感覚が面白かったです。zoomだと全員同じ大きさに見えますからね。


枠囲い逃れた身体はちぐはぐの大きさでこれを現実と言ふ


 訪れた健康古民家かのうは、おばあちゃんの家のような安心感のある所でした。和室、縁側、年代を感じさせるガラス戸、紫陽花の咲く庭など、古民家に求めるものは一通り揃っていました。ここで演劇をするのか、素敵じゃないと呼吸も自然弾み、みんな明るい雰囲気のなか保坂氏に写真を撮ってもらいます。庭の緑が素敵なもんだからそれを使わない手はないと外で写真を撮ったのですが、ここは亜熱帯日本、この時期は蚊に悩まされることを身をもって痛感しました。本番は窓を開けるから、蚊取り線香とかベープとかしっかりしないとダメだね〜などと話してる最中に、僕は5、6箇所刺されました。


蚊がすごい さる騒ぎすら「いまここ」の証と思へばなどて嘆かん


 さて、その後いよいよ稽古をしていきました。約半年ぶりとなった対面の演劇です。その情報量の多さにゾクゾクしました。なによりも、触ろうと思えば触れるところに相手がいるということは非常に有意義と思いました。コロナ前まではそんなこと当たり前でした。

 誤解しないでください。「あ、今この人に触ろうと思えば触れる、有意義だなあ」というのは、何も変態的発想からくる感慨ではありません。触れるのか触れないのか、触るのか触らないのかは人間関係をはかったり構築したりする大きな要素の一つと思うから、お芝居をする上で欠かせないと改めて気付かされたのです。

 僕自身よく言えば硬派、悪く言えば童貞くさい人間なので、性差なく、よっぽど必要な時か、社会的理由のある時か、何もかも気を許した存在でないと易々と触ったり触られたりをしたくありませんし、出来ません。易々と相手の体に触れないし、触りたくないし、こっちも触られたくないからこそ自分は言葉を使って距離を調整したり、視線に気を遣ったり、身体の向きを変えたりするんだと思います。全部、越えようと思えば越えられてしまう一線があるから、その一線を意識して防衛のためか欲望からか色んな動作に意味が篭り、豊かなコミュニケーションとなるのだと。こんな当たり前のことでも、一度パソコン越しにしか人と喋れない期間を経ると大きな発見のように思えるから不思議です。


映像はこの身にさわれずさわらるる危うさこそを今は尊べ


そんなところです。
まだ稽古場はマスク着用中ですが、それはつまり顔という情報量の爆弾をお互いに隠し持っているような状況です。これが爆発すると一気に処理しないといけない情報量が増してよりエキサイティングな活動ができるはずです。本番が近付くのが楽しみです。


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神山くんは、家で出来る演劇のオンライン本読みに参加してくれたことから今回の出演をお願いすることにしました。
元々舞台で拝見したこともあり、いい声の俳優さんだなぁ、と思っており縁ができたことが嬉しいです。

自粛期間中には短歌を詠み始めていたり、古典作品をオンラインで読んでみる会をやっていたりしている様子を見ていて、岸田國士作品にも前のめりで取り組んでくれるんじゃないかな、と考えてのオファーだったのですが、想像以上の活躍で二重の嬉しさでもあります。

神山くんは「ここに弟あり」に出演します。劣等感にもだもだする愛すべき弟・洪次郎として、古民家に生きてくれると思います。ぜひ目撃しにきてください。

Photo by 保坂萌

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