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第30回 「適応能力」

スポーツの現場において”ランニング”と言うのは切っても切り離せないものだと思います。

よく聞かれる質問の中に

「ランニングした方がいいですか?」
「メニューください。今とりあえずランニングはしてます」

などなど、皆さんも思い当たるところがあると思います。
今回は、人間の持ってる「適応能力」についてお話ししたいと思います。

まずは、簡単な解剖学から

●筋繊維

・遅筋線維(赤筋)
発揮できる力は大きくありませんが、持久力に優れ疲労しにくい性質を持っています。長距離走が得意な筋肉で、赤い色素タンパク質を持つため赤筋とも呼ばれます。
筋線維の特徴は、持久力に優れているので長距離などのマラソンなどでパフォーマンスを発揮します。

・速筋線維(白筋)
瞬間的に大きな力を発揮することができる反面、疲労しやすい性質を持ってます。さらに「タイプⅡa」「タイプⅡb」の2つのタイプに分けられ、
タイプⅡbは筋収縮を最も早く行うことができる反面、持久力に乏しい筋線維です。タイプⅡaは筋収縮はやや遅くなりますが、持久力のある筋線維です。
速筋線維は、短距離走が得意な筋肉で、タイプⅡbが100m・200mの選手、タイプⅡaは400m・800mの選手に多い筋線維と言えます。

●筋肉のエネルギー代謝

筋肉のエネルギー源となるのが、筋中のアデノシン三リン酸(ATP)です。
しかしATPは筋中にわずかしか蓄えることができず、スポーツを行うためには自分の体でATPを再び合成しなければなりません。このATPを作り出すしくみを「エネルギー供給機構」といい、発揮する力やシーンに応じて3つに分類されます。運動中は、場面によって3つのシステムがバランスを変えて筋を動かすエネルギーを生み出しています。

・有酸素系(マラソン・クロスカントリーなど)
 筋中や肝臓に蓄えられたグリコーゲンと脂肪が、体内に取り入れた酸素を使って分解され、ATPを作りエネルギーとなります。大きな力、速いスピードは発揮できませんが、長時間運動を続けられます。
※持続時間:3分以上

・解糖系(400m・800m・サッカー・ラグビーなど)
筋中や肝臓に蓄えられたグリコーゲン(糖質)が酸素を使わずに分解され、乳酸になる過程でATPが作られるしくみです。20秒から5分程度の運動において主要な役割を果たしますが、ATP-CPほど大きなエネルギーを瞬時に出すことはできません。
※持続時間:約33秒

・ATP-CP系(100m・ウェイトリフティングなど)
クレアチンリン酸(CP)という物質を分解して得たエネルギーを使うしくみです。短時間で大きな力を発揮することができますが、数秒間で使い果たしてしまいます。
※持続時間:約7秒

▼上記が筋繊維、エネルギー代謝の簡単なメカニズムになります。
ご自身・お子さま・選手がどのような競技をやられているのか、またどのような競技特性なのかを知ることが大切になります。

例えば・・・

私自身はラグビーをしておりました。
上記の内容で行くと、解糖系もしくはATP-CP系になります。
ラグビーにおいては、瞬発力の他に解糖系が必要な競技になります。
このような競技特性において、長距離のランニングというのは必要がないということになります(怪我や病気、長期間の休み後などは除く)

では、なぜ長距離のランニングが必要ないのか?

それは、ラグビーにおいて長距離を常に走ることがないからです。
どんなに長く走っても100m(グラウンド幅)、しかも30分も40分も延々と走ってることはありません。

このようなトレーニングしていると、身体が順応していってしまい、瞬発的に走ることを忘れてしまいます。

せっかくトレーニングをするのであれば、効率的なトレーニングが大切です。
同じ時間を走るなら、ダッシュを10本などにしてラグビーに近いイメージしやすいトレーニングをすることがいいと思います。

競技によって使用する筋線維が異なることはもちろんですが、その競技に向いている筋線維の割合やエネルギーを作り出すしくみも異なります。
専門とする競技に応じたトレーニングが重要であり、自身の競技特性を見直し、その特徴に合わせた効果的なトレーニングを行いましょう。

非科学的な根性論のランニングも否定はしません。
メンタルが鍛えられると言うこともあるでしょう。

ここでは、科学的に効率の良いランニングについてお話ししましたので、どちらをチョイスするかは、指導者や親御さま、コーチの方々が考えることではないかなと思います。

広崎 哲也/Tetsuya Hirosaki
鍼師・灸師・あんま・マッサージ・指圧師
明治大学柔道部トレーナー(2002)
NTT -G Fukuokaラグビー部トレーナー(2003〜2013)
日野RedDolphinsラグビー部トレーナー(2014〜2016)
SuperFormula トレーナー(2013〜)
ボディケアマネジメント講師
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