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冒険遊び場(プレーパーク)とは

「子どもの「やってみたい」という気持ちを刺激し、子どもが今その時を思うまま、ありのままに自由に遊び過ごすことができるように環境づくりをしている、主に屋外の開かれた場」

冒険遊び場を端的に説明するのは難しいのですが、ぎゅっと凝縮すると、今の私ならこのように表現します(でも、記事を書きながら、まだまだうまく表現しきれていないとも感じているので、折を見て修正するかもしれません。ご了承ください)。

その②書きました。

子どもが自由に遊び過ごすことができない社会

普通の公園や屋外施設では子どもは自由に遊べないの?と思われるかもしれませんが、それが難しいのです。また、子どもの遊び場がそれだけに限られてしまっているということも、子どもの育ちにおいては問題なのです。

そこには様々な要因が関係してきますが、ここでは大きく2点あげます。
一つは、都市化によって街中の整備がどんどん進み、子どもの遊び心を刺激するような場所や素材が少なくなってしまったことです。
道路が敷かれそこには車が走り、空き地や裏山は住宅やお店になり、駐車場も増えました。このことは、合わせて大人の目の届かない、子どもだけの場所が減ったことも意味します。
昭和あるいは平成初期だとギリギリでしょうか、その頃に子どもだった人たちは、秘密の隠れ家や、宝物の隠し場所の一つや二つあったのではないでしょうか。私は廃車置き場から、何かの部品を拾い集めて、そのままRPGごっこや探検ごっこをしていました。他にも、だだっ広い空き地で、隣のクラスの子たちと草野球や草サッカーすることも多かったです。ただ だだっ広いというだけで、子どもにとっては格好の遊び場でした。今の子どもたちの周りにそのような場所があるでしょうか。

そしてもう一つ。それは、大人の管理意識の高まりです。
これは、子どもの安全・安心を願ってのものがある一方で、責任追及を避けようと先回りするもの、そして近年は少々過度な正義感を振りかざす大人も増えてきているように思います。
加えて、少子化に伴い相対的に大人の数が増えたことも要因と言えるでしょう。
例えば子どもが公園にある木に登ってみたいと思って登り始めると「木に登ってはいけません」と注意され、設置されている遊具であってもちょっと激しく使おうものなら「それはそういう遊び方をするものではない」と、知らない大人から言われてしまいます。
この時に私が残念だと思うのは、ほとんどの大人が「なぜ、ダメなのか」を説明しない、もっというと説明できないということです。「禁止されているから」というのは、子どもにとっては、納得できる理由ではありません
さらには、直接本人に言わずに、行政や警察、学校などに通報する大人もいます。行政はこのような住民の声が届くと対応せざるを得なく、多くは禁止看板を設置するなどします。そして一度設置された禁止看板が外されることはなかなかありません。
このように、禁止看板が立てられ、時に通報される可能性のある公園をはじめとした公共の場所は、今や子どもがありのままに過ごすことができない場所となっています。特に年齢があがると、集まって少し騒いでいるだけで注意をされるのです。

ここで、地方部はどうなのか?という疑問を持つ方もいるかと思います。
地方部でもやはり安心・安全の観点から、子どもだけで整備されていない場所に行かないように教育されています。実際に都市部にはない危険が潜んでいます。昭和50年代ぐらいまでは地方でも子どもの数が多く、異年齢集団で遊ぶ中で、危険な場所の情報や危険への対処法が上意下達で伝わっていたのですが、それもいつしか途切れてしまい、近づけないことで子どもたちを守るようになっているのです。加えて、今は子どもの数も減って、そもそもが友達と一緒に遊ぶということが難しくなっています。

行政は公平性や中立性を重視しており、市民もまたそのように求めます。そのため、条例や規則などのルールをつくりながら市民サービスを提供しています。行政が管理している公共空間も同様にルールがあります。さらにいうと、そのルールも徐々に変化していて、特に子どもの遊びの視点では少しずつ厳しくなっていると言わざるを得ません。そもそもが、子どもの遊びは大人の考えるルールには収まりきらないものです。だから子どもの側に立った遊びの環境づくりが必要になっているのです。

先ほど、行政は住民の声に対応するために、禁止看板を設置したりすると書きましたが、逆に「こういう遊び場が必要」という声を届ければ、それが独りよがりなものでなく公益につながるものであれば、実現に向けて動いてくれることがあります。全国の冒険遊び場は、そうやって生まれています(中には、行政が主導して作る場合もありますが、その場合も住民参加型で進めていきます)。

さて、背景の話だけで大分長くなってしましましたが、では、「「やってみたい」という気持ちを刺激し、全ての子どもが今その瞬間(とき)を思うまま、ありのままに自由に遊び過ごすことができるように」する環境づくりとは具体的にはどういうことかを説明していきます。

「環境づくり」とは実際にどうしているのか?

先に一つ確認しておくと、現在、日本全国で400〜500の冒険遊び場づくりの活動があると言われていますが、その地域・場所での実情に合わせて、個々に運営されています。なので、全ての場所が行われているというわけではなく、全般的な方向性として捉えてもらえると幸いです。

一つ目に、子どもの力でその場に変化を加えることができるようにしていることです。
例えば、土の地面に穴を掘ったり、木にロープを結んでロープ遊具を作ったり、工具を使って工作ができるようにしたりしています。
それを可能にするために、私有地であれば地主さんに、公共の場所であれば行政と交渉して、通常は禁止されている行為に許可をもらっています。この許可の範囲はそれぞれの遊び場で異なりますが、子どもが火を使うことができるようにしている遊び場もあります。
また、スコップやロープ、金槌や木っ端、マッチやバケツなど、様々な道具・工具や素材を準備して、子どもが自由に使えるようにしています

2つ目は、子どもにとっての遊びの重要性を理解した上で、それぞれの子どもの気持ちに寄り添い、また、時に好奇心を刺激する大人がいることです。大人も子どもを取り巻く環境の一つであると考えていただけるとわかりやすいでしょうか。
人間、時にボーッとしたいことや、ダラダラしたいこともあります。それは子どもも同じです。しかし、ややもすると、大人は自分から見たら遊んでいない子どもに親切心や自己の満足感を満たすために「遊ばないの?」と声をかけがちです。
以前、別の記事に書きましたが、私は「遊び」とは「本人がやりたいことをやること」と考えています。つまりは「何もしないこと」も時に「遊び」であると考えています。大人には、そういった子どもの気持ちへの理解や、「子どもが今その瞬間(とき)を思うまま、ありのままに自由に遊び過ごすことができるよう」に寄り添うことが求められます
一方で「やってみたい」という気持ちが湧き出てくるには、「やっても大丈夫」という自信が必要です。現代の子どもたちは、小さい時から安心・安全のために、様々なことを「やってはダメ」と言われて育ってきています。そのため、冒険遊び場に始めてくる子の中には、ロープ遊具に乗るにも「これやってもいいですか?」と許可を求めることがあります。
そこで、大人たちは、言葉で伝えるだけでなく、自ら遊んだり、遊具をつくったりして、「やってもいい」という選択肢を提示するとともに、「やってみたい」という好奇心を刺激します。指導するのではなく、子どもの仲間、あるいは年上の友達として接するのです。

上記も含めた、多様な観点の専門性を備え冒険遊び場の環境づくりを行う人を、プレーリーダーといい、特に開催頻度の高い冒険遊び場には仕事として配置されていることが多いです。

まとめ

最後にまとめると、冒険遊び場とは
「子どもの「やってみたい」という気持ちを刺激し、子どもが今その時を思うまま、ありのままに自由に遊び過ごすことができるように環境づくりをしている、主に屋外の開かれた場」のことで、

子どもにとっての遊びの重要性を理解し、子どもの気持ちに寄り添う大人を中心に、住民参加型で運営されていて、
子どもの力でその場に変化を加えることができるようにした上で、様々な道具・工具や素材を用意している場
です。

そして、この場所は単に子どもの遊び場というだけに留まらず、様々な価値が生まれる場になっているのですが、それはまた別の記事としてまとめたいと思います。

実際に子どもたちがどんな遊びをしているのかは、検索サイトで「冒険遊び場」あるいは「プレーパーク」で画像検索をしてみてください。
また、各地の冒険遊び場の情報は、NPO法人日本冒険遊び場づくり協会のホームページを確認するか、このページにない場合は「冒険遊び場(プレーパーク)+基礎自治体名」で検索をかけてみてください。

補足:冒険遊び場とプレーパークの違い

ここまで、冒険遊び場とプレーパークとを併記してきました。実際、日本ではだいたい同じものと思っていただいていいのですが、厳密には少し違いがあります。
冒険遊び場の原型は1943年にデンマークで生まれた「廃材遊び場」にあり、その後「冒険遊び場」と名前を変えヨーロッパの各地に広がっていくのですが、その中で、冒険遊び場とプレーパークは別の発達をしていったと言われています。
具体的には冒険遊び場は様々な場所に設けられた自由な遊び場をいい、プレーパークは大きな公園の一角をより積極的に子どもの遊びに活用しようとして生まれたものをいうようです。

参考文献:”自分の責任で自由に遊ぶ”遊び場づくりハンドブック

その②書きました。


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