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vanilla

甘いバニラの香りで目が覚める。


今日は彼が赴任先へ帰る日。

動くたびに私のシャンプーの香りがする。

「シャワー借りたよ」

まだ乾ききらない髪で彼が言う。

思わず、ぎゅっと抱きついた。

「いつもはこんなことしないのに。」

ちょっと驚いたように彼は笑って、

「寂しい?」と聞く。

「ううん。」

「え、寂しくないんだ。」

そりゃないなあ、とまた笑う。


うそ。

寂しくないわけない。

でも、そんなこと言ったところで、

今日、帰ってしまうことは変わらないし、

言っても意味ない。

ちょっとでも笑って過ごしたいだけ。

あなたに見合う大人なオンナに見られたいだけ。


って思うのに。

気持ちと裏腹に、

目から涙がー


こんなに辛いのに、こんなに痛いのに

寂しいの4文字じゃ伝わらない。

全然伝わらない。


*****

泣かれるくらいに好かれてはいるんだな

と、安心する自分がいる。

まさか、ここまでされないと相手の気持ちが分からないなんて。

最低、だな…

会いたいも寂しいも中々言わない彼女の気持ちを測りかねて、

自分だけこんなにぞっこんなのにと

ましてや、長期間会えないとなると

不安要素は十分過ぎるくらいだ。

少しでも時間を見つけては会いに来てしまうのは、そのためである。

ここまで余裕がなくなるなんて、、、

「情けないな。」

「え?」

「なんでもない…また、すぐ会いにくるから。」

涙の滴が光る

それでも笑顔を見せてくれる君が

愛おしくてどうしようもない。

その小さな身体を抱き寄せた。

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