世の中は ああ、世の中は

引っ越して5日目の夜、トイレが壊れた。

引っ越したばかりなのに、まさか、詰まるとは。

正確には夕方の早い時間、職員たちのワクチン接種から汗だくで帰って来て、すぐに気づいた。頭が真っ白になった。やっと引っ越し作業が落ち着いて、そろそろ家でゆっくり出来ると思っていた頃だったから。

しかし、いつまでも立ち尽くしているわけにも行かない。もしかしたら、突然汚水が噴出して、床が大惨事になるかも知れないじゃないか。

それでトイレをシュポシュポ!するラバーのカップを買いに走り、一人で孤独にシュポシュポしているうちに、Kちゃんが帰って来た。

「ただいまあ~♪」という笑顔に、ドドドドドドドドド!と飛び出して来て、「トイレが詰まったんだよ!」と汗だくで怒号する私。トイレのシュポシュポ持って。

「・・・・・・・・・・・・・。じゃ、業者さん、呼ぼか。」

世間では、4連休前の夜ということもあり、なかなか捕まらなかったが、4件目の電話で「1時間半後には着きます。」と頼もしいお返事。

が、業者さんが来るその少し前にKちゃんが「もう、我慢できない!道路向こうのスーパーのトイレ行ってくる!」と飛び出して行った。

ああ~、私、一人で知らない人の対応するの嫌だなあ~、今、来ちゃったらどうしよう?と思っていたら、案の定、来た。← おばさんなのに、未だに人見知りでどうする。

そして、2つの方法を提示された。お薬を使って溶かすだけで済めば、1万8000円。お薬使ってもダメだった場合、そのシュポシュポの凄いバージョンの機械を使うので6万かかりますと。高っ。

やっちゃって下さい!トイレ使えないと困るからっ!

「はい、じゃあ、道具、取ってきます。えーと、あと、この辺、コインパーキングとかありますか?」

引っ越して来たばかりで分からない。でも、そう言えば車止めるところがないよね。マンションの真下は環八で、びゅんびゅん走っているもんね。相方が帰ってきたら知ってるかも知れません。

そして、彼が機械を取りに行っている間にKちゃんが帰って来た。

後ろから追いかけるように入って来て、「おかえりなさいっ!」と言う業者の青年。一旦ビビった後、「静かに!」といきなり初対面の青年を叱り飛ばすKちゃん。そうそう、ビビった後って、ついつい腹立つよね。

「申し訳ありません!」

このあたりから、段々笑ってしまっている。

そして、1段階目の薬を投入した後「これで、15分待ちます。」というその人の顔を見たら、汗だくで疲労困憊。何だか、環八の路肩にある車に降りて待機なさるのが申し訳ない気持ちになってしまい「じゃあ、座っていて下さい。ここ、冷房あたるから。」と言ってお茶をお出しした。

すると、どうしたことか、彼は芸人のようなテンションで自分の生い立ちやら色んなことを喋り始めた。

何だか、うちに来る業者さん、このパターン多くね?と、ヒソヒソと顔を見合わせてしまう。よく喋る。

ご自身の娘さんが男の子と同居するために出て行った話とか、離婚して6年にもなるが、新しい彼女のお腹のべイビーが10月に生まれるとか、「この部屋はリノベーションしたんですか?」とか。

リノベーションって言葉を知らなかったので訊き返すと、これこれしかじかと教えて下さったので、「そです。それ。トイレも何もかもリノベーションとやらです。それなのに詰まりやがって!(ちっ!)」と答える。

「大丈夫です!すぐに直しますから!ところで、僕もこういう部屋を買いたいです!彼女ともっと幸せになっても良いですよね?」

思い切り幸せになって下さい。うちのトイレを直した後に。

あと、この方も妙に金魚に食いついていた。「水槽分けてるのは喧嘩するからですか?」から始まって、海水魚の話に発展し、熱く語っておられた。

とうとうKちゃんが「そろそろ15分やろ。」と突っ込みを入れると「ああっ!すみません!」と感電したかのように立ち上がり修理の続きをしてくれた。

この後は、横浜に行かなければならないそうで、今朝は茅ヶ崎に居たのだとか。本当に大変なお仕事ですねってなことを伝え、感謝の意を表す。

「今後はトイレでも水道でも何か不具合が生じたら無料で直すので直接連絡をください。」と名刺を渡された。

それなのにKちゃんが「もう会うことはないと思うけど、ありがとう。元気でね。」と言うと、それ相応のリアクションをしていて、また笑いを取って帰って行かれた。

先日も”普通”やら”通常”とやらが、如何にありがたいか?ということを書いたのだけど、もちろん、それはそうで。

しかし、色んなことがある度に、世の中の色んな方々に支えられているのだと実感する。KちゃんのドSさ加減と業者さんのかけ合いに何度も笑わせて貰った時間だった。

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今日もありがとうございました。良い1日でありますように。

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