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心残りを笑ってくれる

いつにも増して声をかけて来る人が多かった。

『Tさん、昨日だったんですね。』と。Kちゃんじゃないもう一人の主任も副主任もパートの女の子も。

そう。17時25分。酸素を取り変えようとしたときのことだったよ。
Tさん、もう既にもぬけの殻で、あのお店にプラプラ飲みに行った後だったよ。5分や10分置きに皆で見に言っていたのにね。

前の特養では主治医がちゃんと酸素発生機を手配してくれていたんだけど、今の提携病院は酸素一つ借りるのにもめにもめて、直接私が酸素屋にボンベを12本手配するところだったんだけど。
Tさん、『要らない、要らない、もう、大丈夫。ありがと!』って感じで出かけて行ったみたいだったよ。

人の別れに立ち会って来た彼ら・彼女らは『そっかあー・・・』と深くうなずいていた。

『前の発作から復活して幸せそうな一年だったけど、今はもっと楽しんでいそうですね。』

もっとやって差し上げたいことがあった。

『俺、部屋の空調が暑すぎるんじゃないかな?と心配していたんですよね。』

『私、ちょっとくらい触らせてあげれば良かったな。』←?

皆、色んなことを思い残す。ええ、Tさんではなく、こちら側が。

だから、Tさんがどんなふうに身体を脱出して行ったか?を詳しく話す。

ほんの少しまた泣き笑いした。

皆、頑張って頑張って、生きて生きて、そう、生きることは素晴らしくて、お別れは寂しい。

でも、沢山のものをいただいたので、それを忘れてはならない。ついこの間、皆でアジサイを見に出かけた時のTさんの写真がとっても良い笑顔だった。

彼は多分グラス片手に私たちの心残りを笑ってくれる。

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