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AM3˸00に仮想公園で気づいたこと

リアルワールド:家

メタバース旅行雑誌『Platform』の刊行を開始し、VRエッセイストを勝手に名乗り始めてから、もう半年以上が過ぎた。刊行に向けて色々と準備をし、第3号まで出したところで、一番変わったことは何だろうかと考えてみると、「締め切り」を意識して文章を書くようになったということになるだろう。

これまでエッセイを書いていたとはいえ、結局は自分のnoteに書き記すだけであり、書きたければ書けばいいし、書きたくなければ書かなくてよかった。いいアイディアが降ってわいた時には日に2本書いてストックもできたし、1ヵ月なんにも書かないこともザラだった。

しかし、『Platform』は2月に一度刊行する、と決めて動き始めた以上、最低でも2月に一回、かならず「締め切り」がやってくる。期日を意識しながらエッセイを書くというのは初めての体験であり、緊張感を伴うものだと知った。

そして、今ここでこのようなことを書いているのはなぜかというと、「締め切り」が刻々と近づいてくるのに、次に書くべきことが練り上げきれないでいるから、その泣き言を言いたかったというわけだ。

いざアイディアが湧いてきて、こう書けばいいんじゃないか、ああ書けばワールドの魅力が伝わるのではないか、と思うのだが、キーボードをたたき始めると余計なことが次々と頭の中に浮かび上がり、その内頭の中で「この書き方で人前に出すのは無理でしょ」という声が響き始め、全部消してしまうことになる

そうして消してしまえばまた「締め切り」の足音が一歩近づき、頭の中はまたエッセイのことで一杯になってしまう。

「なるほど。「締め切り」に追われるなんて、まるで大作家先生だな!」とニヤニヤするも、某大作家のように「遅筆道」を究めるなんてたいそうなことができるわけでもなく、編集者に缶詰めにされることもなく、一人でうめくしかないのが現状なのだ。

バーチャル:AM3˸00 公園で

そんな気分を一新するために、とりあえずVRの世界に行く。最近は、取材のことを意識したワールド選択だったが、今日はそういうことはやめよう。目についた一番面白いワールドに入るんだ。

そう思って色々な場所を飛び回っていた結果、やって来たのがこの夜の公園だった。普段、自分以外は入れないように設定して一人でワールドを回っているのだが、どうしても違和感を覚えることがある。例えば、広い街中のワールド。これだけ広い街ならば、絶対もっと人がいるはずなのだが、どれだけ探そうとも人はいない。


しかし、このワールドは深夜の公園だから、自分以外誰一人としていなくても何の違和感もない。VR世界だから、リアルワールドのように変で怖いおにいさんやおねえさんたちがやってきたり、不良に絡まれることもない。安全に夜中の公園を楽しめる。

歩きまわっていると、自販機があった。VR世界の自販機では、ぬくもりは買えないけれど暗闇の中のほのかなあかりという安心感を買うことができる。


自販機の明かりを背に、公園全体を眺めていると、その微妙な明るさがいいのか、思考が静まっていくのを感じた。集中と言うのか、瞑想というのか、少しずつ頭が空になっていくような感覚を覚える。先ほどまで感じていた、「締め切り」のために何か少しでも書かなくてはと思う焦りが徐々に消えていく。

そして、空になった頭に、これまで取材のために訪れたワールドのことが浮かび上がってくる。その時は気にしていなかったが、思い返してみれば色々とまとめてみたいことが思い浮かんでくる。浮かんでくれば、次第にエッセイの筋立てが定まってきて、違和感も無理もなく書けそうな気がしてきた。


エッセイは、どうやら心に隙間がないと書けないらしい。自分の内面から浮かび上がってくる情動を掴み取り、整理しなくてはならないようだ。

結局、夜の公園には15分くらいしかいなかったが、まだ生まれたての温もりを持ったままのアイディアを形にするべく、去ることにしたのだった。

リアルワールド:居宅

VR世界から離脱した後、そのままエッセイを書きすすめていた。所々迷うところはあったものの、一応初稿は完成した。

一息ついて、いつもこれくらいのペースで書ければいいのになぁ、と思いつつ自分用の『Platform』運営のタスクメモを見返した。これとこれは終わって、これは保留で。これは…これは?
『公式noteにエッセイを出す。←私が担当』
なんだ…これは…?あっ、そうだ。この前持ち回りで書くことを決めたんだっけ。

ということは。

ということは、

これからあと1つ書かなければいけないということか!?

再び焦りで脳も心も埋まる。
何が隙間だ!何が情動だ!一番大事なのは!
スケジュールの管理だ!!!

はぁ。もう少し、「締め切り」と格闘する日が続くようだ。

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