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台北旅行Vol.10 監察院の内部見学〜【民主主義の砦はうつくしい赤煉瓦建築】


台北駅のすぐ近くの重厚感あふれる建築物「監察院」

台北のことをネットでいろいろ調べているうちに見つけた「監察院」。歴史的建造物なんだろうな…くらいに思っていた。
なんと今でも通常業務をやっていて、さらに一般公開もしているようだ。
見学時間は金曜の9:00~12:00と14:00~17:00で事前申請はいらないが当日はパスポートを持っていくことが必要だと公式サイト(英語/中国語)には書いてある。

すごい重厚感

政府の不正を糾す人権保障の砦

監察院は、各種国家機関や公務員を監督・調査し、財政状況および決算等の会計監査を行う台湾の国家機関。
現在の台湾は、日本のような三権分立(行政院、立法院、司法院)に考試院(日本の人事院に相当)と監察院を加えて、五権分立の体制になっている。監察院は、政府の不正行為を調査する独立機関で、不正が発見された場合、監察院は政府機関への勧告や公務員への懲戒処分を要請できるのだそう。
国内人権機関である国家人権委員会も監察院の下にあり、国際人権文書の遵守や政府機関の視察など人権保障業務を担当しています。

監察院のくわしいことはオフィシャルサイトなどを参考にしていただくとして、ここでは内部を見学したときのことを書いていきます。

政治より、思想よりまず最初に大切なものが「人権」


パスポートを持って、金曜の朝9:00に受付へ行く

善導寺のホテルから歩いて数分のところに監察院はある。大通りが重なる角地。たぶん一頭地。周辺は中華民國行政院や中華民国内政部警政署があることからみて、行政の一番地なんだろう。

このごっつい木!左手の赤煉瓦の建物が監察院

公式サイトで「予約入らないから受付にきてね」と言われても英語サイトだし、ちょっと不安。警備員も立ってるし。ここは「あーうーイングリッシュ」ではなく翻訳機を使用。
中に入ろうとすると「ちょっとまって!」と警告された。「中を見学したいのですが」とグーグルさんに言ってもらい、中へ。
受付でパスポートを渡すと「ちょっと奥の部屋で待っていて」といわれた。

こんな通行パスを出してもらえる
応接室でまつ

数分で、おじいさんとおばさまの2人が現れる。今日、僕ら2人を案内してくれるボランティアガイドのかただ。

皆さん普通に職務中なんだけど、結構奥まで歩いて連れて行ってくれる

ボランティアガイドのおじいさんは日本語がペラペラで、良くも悪くも日本が台湾を統治していたことがわかる。
外観や内装の美しさや、監察委員のことについて話してくれる。

おじいさんは日本にも来たことがあるらしく、私たちが福岡から来たというと「白魚のおどり」を食べたことを話してくれた。
日本のことを好意的に見てくれているのを感じる。

  • 日本の統治には、反対する人も多かった

  • 日本統治により経済的成長を遂げたので、結果よかった

  • バカにされたりした人たちもいた

まあ、当事者の中ではいろいろあったに違いない。「台湾は親日」なんていう一方的な見方はできないよね。

しかし、立派な建物だ。
増築されているらしく「ここは美しい文化財だけど、向こう側は新しく作ったところだからいまひとつ美しくない」とか「世界中のいろんな建築方やブームを混ぜて作られてる」とか流暢に話す。

美しさが伝わらないけど、ほんとにキレイ
窓も可愛い
中庭もきれい

日本人は日本のことをあまり知らない(苦笑)

「監察院を設計した建築家・森山松之助さんをしっていますか?」
「いいえ」
「東京駅の設計者、辰野金吾氏のお弟子さんです!知らない?」
「はい」

他にも日本の建築家の作品についても私たちは知らないことが多かった。
「日本で一番高い山は富士山。何メートル?」というのでさえピシ!とは答えられなかった。
「あーらまあ」という顔で見られてしまった。
うーん。僕は日本のことをあまり知らない…。東京駅の美しさは知ってるけどね。

建築家・森山松之助について

監察院(台北州庁舎)を設計した建築家・森山松之助は、東京帝国大学建築学科を卒業、イギリス人建築家ジョサイア・コンドル(Josiah Conder)教授の教えを受け、西洋建築の設計に長じていました。
1910年に台湾総督府土木局営繕課の建築技師として招聘されてからは、台湾全土における公共建築物の設計・建設のほとんどを統括しました。
台湾で森山の設計による建築物は二十数棟に上り、台湾建築史の中でも最も大きな影響力を有する建築家と評されています。
「台北州庁」のほか、今日でも評価の高い台北賓館、公売局、国史館、台中市政府、台湾文学館(旧台南市政府)なども森山の作品です。

監察院パンフレットより

富士山より高い山「玉山」が台湾にはあって、その山を日本は「ニイタカヤマ」と(勝手に)名付けたらしい。あの有名な忌々しい「ニイタカヤマノボレ」はここから来たのか、、、。

金の切れ目が工事の終わり

監察院の一番いい部屋には暖炉がある。
こんなに暖かい(暑い)国に暖炉が?。必要でなくてもそれこそが建物の中心だというシンボルなんだろうな。当時の設計者の憧れだったらしい。
屋根裏の造りが見えるようにできている。ここで使われた木材は日本から送って来たものだという。どれだけ財力と力があったんだろうな。

この監察院は真ん中に三つのドーム。そこから「左右対称」につくられていているのだけど、右にはある塔が左にはない。なにかしらの意匠か?はたまたアシンメトリーな新しい建築か?
答えは「お金がなくなったから作れなかった」という。
そんな!適当な!!??
でも「それもあり」だと思わせてしまうのが台湾の強さ(?笑)

監察院の模型。奥には塔が立ってないよね

「いま会議があってないから本会議場に入る?」と言われた

行政機関をこんなにオープンにしてていいのだろうか?結婚式の前撮りとかにも使えるという。「みんなに知ってほしい」からとはいえ開かれてるなぁ。陳情に来る人と遭遇することもあるかも。

「いま空いてるから、会議場入れますよ」
ええ?それはぜひ。Tシャツだけどいいのかな?

ずんずん入っていくガイドさん

人権を守るってことがすごいことじゃなく、普通に当たり前のことだって感じる。

ボランティアガイドのおじいさんは「陳 菊(ちん きく」という女性監察院長尊敬しているという

部屋にずらりと貼られた歴代の主任と現在の委員たち。
女性が多い。1/3は超えているんじゃないだろうか?
「私は陳菊さんを尊敬しています」
とガイドさんは言った。第10代監察院長で、総統府秘書長や高雄市長、民主進歩党代理主席などを歴任した女性だ。
わりと高齢の男性で、女性を「尊敬している」とはっきりと言える人がどのくらいいるだろうか?
政治的なことでなく、その人の頑張りや人柄、なし得て来たことに対する評価のような口ぶりだった。

1時間弱の見学ツアー。こういう観光もいいかもしれない

かわいい歴史的建造物のことを「オトメ建築」というそうだ。ディティールの細やかさや、合理性だけではない「色気」のようなものが、古い建築物にはある。
台湾は古いものをうまく活かしてリノベーションするセンスがすごいと思う。水回りの不便なところは改良して、苔むす屋根はそのまんまとか…。
なにもかもぶっ壊して最新型に立て替えるビッグバンとは人間としての器が違うなあとしみじみ思った。


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