真夏の空気が去らないうちに~ワールドエンド・シンドローム感想(ネタバレなし)

こんばんは、わたしです。
東城日沙子さん目当てで始めたワールドエンド・シンドローム(PS4/Vita/Switch)をクリアしました。
とにかく素晴らしい夏ゲーでした。

この記事はネタバレなしの感想です。
ネタバレありのものは後日公開しますので、お楽しみに。

(2023/9/15追記)
ネタバレ感想書きました。クリア済みの方のみ閲覧推奨。



はじめに

できれば暑い時期に遊んでほしい!!!!
本当は8月中に……と言いたいところだが、すでに8月が終わりかけているので……。

公式サイト

どんなゲーム?

アークシステムワークスから発売されている、アドベンチャーゲーム。公式によるジャンルはミステリー×恋愛アドベンチャー。

とある理由で海辺の田舎町・魅果町(みはてちょう)に引っ越してきた高校生の主人公が、ひょんなことから入部したミステリー研究会とともに過ごすひと夏の物語。

この魅果町という土地には古くから黄泉人(よみびと)と呼ばれる死者に関する伝承が息づいており、奇しくも今年は黄泉人が現れる節目の年だという。

また、町の周辺では女子学生が行方不明になる事件が続いていたり、魅果町を舞台にした映画の撮影のために人気アイドルが訪れていたりと、今年はいつもの夏とは何もかもが違っていた。

みたいな話。

ほかにも正体不明のラジオDJや不可思議な出来事の数々、そして町そのものが持つ物静かな雰囲気が物語を彩っていく。

物語の核はこの「黄泉人伝説」とそれにまつわる謎であり、伝奇・ミステリー要素が強く出ている。相対的に恋愛は控えめなので、いわゆるギャルゲーが苦手な人もとっつきやすいのではないだろうか。

ゲームの流れ

このゲームは複数のチャプターに分かれている。
まず、心に暗い影を持つ主人公が引っ越してくるところから始まる導入部、序章。
序章はいくつか選択肢があるものの、ほとんど純粋な読み物である。
ここでは6~7月の出来事が描かれる。

次に本編。
こちらは打って変わってプレイヤーが行動を選択するアドベンチャーパートである。地図上から主人公の行き先を選び、そこで展開されるシナリオを通してヒロインやサブキャラクターたちと交流を深めていく。
いわゆるヒロインルートが展開されるのもこのパート。
ここでは8月の出来事が描かれる。

本編には8月前半の合宿と8月後半の夏祭りというふたつの山場が用意されており、各ヒロインルートはそれらに向かっていく流れになっている。
ちなみに、本編では重要イベント以外は音声がないパートボイス仕様である。(本編以外はフルボイス)

ヒロインルートについて

ルートのあるヒロインは5人いる。
同居人でもある同い年の従姉妹、地元名士の娘である後輩、人気アイドル自称・隣町の女子高生などなど。
攻略順はほぼ固定であり、後半のシナリオほど事件の真相に迫る内容になっている。

攻略方法はシンプルで、前述の行き先選択時に対象となるヒロインを追いかけてキーシナリオを回収していくだけである。
ただし、キーシナリオを見逃すとフラグが折れてしまうほか、地図上のどこに誰がいるかが初期状態では一切判らないため、最初の周回(またはセーブロードの繰り返し)ではいろいろなところを駆け回ってヒロインを探すしかない。
ただし、多くの場合はヒロインから「何日のお昼にここに行くから付き合ってくれ」のような形でお誘いがあるため、見逃しづらい工夫はされている。

遊んでみてどうだったか

それはそれはものすごく面白かった。
ミステリーを主軸に置いた本作は真実の開示の仕方が非常にうまく、進めれば進めるほど続きが気になる作りになっている。

また、一周がさほど長くないことから、短期集中で一気にプレイするスタイルに向いている。(共通部分のスキップを駆使すれば、1ルート2時間くらいで終わるかもしれない)

その反面、ネタバレ厳禁のゲーム性を持っており、真相やそれにつながるヒントを知ってしまうことで楽しみが大きく損なわれてしまう。
これからプレイする人には、できればネタバレや詳しいゲーム内容を一切踏まずに駆け抜けてほしい。

したがって、この記事では「面白かった!!」以外に言えることが少ないのである。面白かった!!

物語以外でよかったところ

動く背景美術

なんとこのゲーム、読み物系アドベンチャーにしては珍しく背景が動く

この製品紹介PVの1:40~あたりを見ていただけると判るのだが、水辺マップでは背景の水が流れ、リビングでは扇風機が首を振り、夜の灯台マップでは灯台のライトがくるくる回転するのだ

これがまためちゃくちゃきれいであり、町の魅力を大いに引き立てている。作品舞台が魅力的なのは、非常に大事なことであると思う。

ささやき声や息遣いの使い方(Excellent!!)

これは本当にすごい。
物語の節目節目で挿入されるアイキャッチでは、女性の息遣いが意味深に再生される。これが何回聞いてもドキドキしてしまう素晴らしい演出であり、息遣いを聞きたいがために該当シーンを何度も再生するなんてこともやっていたりいなかったり……(ごめんなさい)。

また、作中に多くのファンを持つ魅果町ローカルラジオの人気DJである月丘ひかるも、ささやくような語り口が特徴の人物である。その手のボイスが好きな人にはたまらないキャラクターだ。
彼女のラジオ(フルボイス)は平日夜の行動選択で頻繁に聞くことができるので、ヒロインたちを放り出してラジオを聞きまくるなんてプレイもできる(それでもらえるトロフィーもある)。

ぜひともイヤホンなどを使って、少なくとも音声をオンにしてプレイしてほしい。

作品全体が持つ物静かな雰囲気

夏の友情と恋愛を扱うゲームである本作では、主にミス研パートで非常にわいわいとしたにぎやかな雰囲気を楽しむことができる。
一方、主人公がひとりで行動する場面は非常に物静かであり、BGMも流れていないことが多い。

これは主人公が暗い影を背負った人物であり、周囲と関わりつつどこか世を儚んでいるような行動、言動を反映した演出であると思われる。
また、魅果町自体も死に関する伝承が息づく特殊な土地であることから、あえて環境音中心の音作りをしているのかもしれない。

そのため作品の雰囲気が全体的にしっとりとして落ち着いている。あまり浮ついていないので、大人のプレイヤーが学生時代を懐かしんで遊ぶのにちょうどいいかもしれない(私見です)。

伏線回収がきれい

ちょっと今っぽい美点。
この物語は、町をにぎわす事件や黄泉人伝説に関する謎をきれいに回収してエンディングを迎える。
そのため読後感が非常に良く、すっきりした気分で終わることができる。

ミステリーにおいてこの点は非常に重要である。

示唆に富んだオープニングムービー

かなりコンセプチュアルなオープニングムービー。
これも物語が進むごと(もっと言うとクリア後)に意味が解るようになっている。

マイナスポイントになりうるところ

全体のボリューム

筆者(文字を読むのがそこそこ速い、ボイスは飛ばしがち)の場合はクリアまでおよそ10~15時間だった。
本編部分はテキストのみで展開されるパートが多いため、文字を速く読む人ほどすぐに終わってしまうかもしれない。
よくまとまっているため個人的には不満はないが、ボリュームを求める人には少し物足りなく感じられる可能性がある。

物語の動き出しが遅い

この手のジャンルの宿命かもしれないが、前半はやや退屈であり後半に行けば行くほど盛り上がる構成になっている。
特に読み物である序章は退屈に感じやすい。そこを越えると面白いので頑張ってほしい。

後半になるほど、頭の中で点と点がつながって楽しくなってくる。

恋愛要素の薄さ

前半で触れたとおり、恋愛要素は控えめである。
基本的には各ヒロインと恋仲になっていくのだが、告白イベントを経てあっさりと恋人関係になっている印象が否めない。
そのため、がっつりとしたラブストーリーを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。それはそれとして、ヒロインたちは魅力的なキャラがそろっている。

どんな人におすすめ?

ノベルゲーム、アドベンチャーゲームが好きな人。落ち着いた雰囲気のゲームをやりたい人。夏の終わりの雰囲気に浸りたい人。物語の設定に惹かれる人。さくっと終わるゲームをやりたい人。

さいごに

あまりメジャーなタイトルではないが、よくまとまった良作アドベンチャー。発売から時間が経っていることもあり、パッケージ版の値下がりやDL版のセール入りなどで手に取りやすい環境がそろっているので、暑い時期にぜひ触れてみてほしい一本。

続編の構想があるとのことで、いつまでも待っています。

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