日用品から生まれる ミクロで壮大な風景 「岩崎貴宏展―山も積もればチリとなる」@黒部市美術館

th_岩崎貴宏展 アートフェア東京では歯ブラシで作られたミニチュア作品、横浜美術館コレクション展でも”髪の毛”で作られた遊園地など、面白い作品でとても気になっていた岩崎貴宏さん。その岩崎さん初の大規模個展が富山と栃木で開催されるということで、富山までいってしまいました。  「岩崎貴宏展―山も積もればチリとなる」@黒部市美術館。 今回の展示は写真撮影もOKとのことだったので、写真入りでご紹介したいと思います。
画像2 会場に入ってまず目につくのは、こんな針金細工のようなミニチュアの構造物。 でも、なぜ本の上に…? 実は針金ではなく、本のしおりの繊維を固めて製作されたものと知って驚きます。(テクトニック・モデル(吉村昭『高熱隧道』/ 岩崎貴宏(2015))
画像3 これらは「アウト・オブ・ディスオーダー」というシリーズ。 他にも、歯ブラシやデッキブラシの上にその繊維で造られた鉄塔など、"小さな日用品の上に軟らかい繊維"で造られた、本当は”大きくて硬い構造物”の対比がとても面白い作品が並びます。(「アウト・オブ・ディスオーダー(薮々)」 / 岩崎貴宏(2015))
画像4 歯ブラシの作品を見て行くと、「歯ブラシの形ってこんなに個性的だっけ?」ということにも驚きます。岩崎さんはこういったモチーフに用いる日用品にもとてもこだわりがあるそうで、海外などから購入されたりもされているそうです。(「アウト・オブ・ディスオーダー(薮々)」 / 岩崎貴宏(2015))
画像5 もともとは、研修でイギリスに滞在された際に”「イギリスには東急ハンズのような便利な店がない。そこで身近にあった日用品を素材として使ったのがアウト・オブ・ディスオーダーの始まり」だった。”(【インタビュー】17th DOMANI・明日展―岩崎貴宏 / Art Annual online) そうですが、見慣れたはずの日用品にも面白い個性があることにも気づかせてくれます。(「アウト・オブ・ディスオーダー(ピンクデッキブラシ)」 / 岩崎貴宏(2013) )
画像6 続いては布の山。布の山の中にはやはり繊維で作られた、この美術館の近くにある「黒部峡谷」の鉄橋の数々が。よく見ると、山になった布も、黒部峡谷の入り口にある”宇奈月温泉”の浴衣や手ぬぐい、そしてトロッコ列車の作業員さんの作業服など、宇奈月温泉にあるもので作られていることに気づきます。はじめはただの布の山に見えましたが、鉄橋を見つけると ”手ぬぐい”の白は雪、”浴衣”の緑は木々 といったように、この布の山全体が黒部・宇奈月の風景に見えてきます。(アウト・オブ・ディスオーダー(峡谷)/ 岩崎貴宏(2015))
画像7 今回の展覧会の中でとりわけ壮大な作品が、こちらの「アウト・オブ・ディスオーダー(生命の風景)」。これは、富山にある立山の雪山の風景と、岩崎さんの故郷の広島にある「塩田」のイメージを重ね合わせてつくられた風景。雪のような白い粉は食塩、そして信号機や精製プラントの建物などは、そうめんやうどん、ビーフンなどの乾麺でつくられているそうです。 ビーフンは柱として使うために一度茹でて、真っ直ぐに延ばしてもう一度乾燥させているそうです。こんなふうに構造材として使うと、まるでプラスチックのようにも見えてきて面白いです。
画像8 でも、そんな風に精密に作られた作品でも、素材の塩や乾麺も水を吸う食品なので長くとってはおけないそうです。この展覧会でしかみられない風景ですね。
画像9 小さい作品ながら、とても面白いなぁと思ったのはこちらの「アウト・オブ・ディスオーダー(レールウェイ)」という作品。 パーカーのジッパーが線路に見たてられ、金具がまるで電車のようになっています。雪の中を走る富山地方鉄道をイメージされたものでしょうか。
画像10 岩崎さんの作品は、こういったミニチュアの作品ばかりではありません。 「リフレクション・モデル」のシリーズは、建物が水面に反射している様子を精密な模型で再現したもの。宙に浮いた上下対象の不思議な建物ですが、小さい頃から”池に映った金閣寺”や”湖に映った富士山”のようなイメージが頭にあると、勝手にその真ん中に”水面”を想像してしまうのが面白いです。
画像11 こちらの黒部市美術館自体はそれほど大きくない展覧会ですが、近くから見たり遠ざかってみたり、様々な角度から風景を見てみたり…と、ひとつの作品をじっくりと見られるので、見応えのある展覧会でした。展覧会の会場にも岩崎さんのこだわりが表れているそうで、入り口でいただける「作品リスト」も、岩崎さんの提案で写真のようにぐしゃぐしゃに揉まれたものを手渡されます。これは何を意味しているのでしょうか? ぜひ、美術館でご覧下さい。
画像12 ■北陸新幹線開業記念 黒部市美術館・小山市立車屋美術館共同企画  「岩崎貴宏展―山も積もればチリとなる」 (https://www.city.kurobe.toyama.jp/event-topics/svEveDtl.aspx?servno=7479) | 平成27年4月25日~平成27年6月28日 | ※2015年7月11日(土)-9月6日(日)は栃木の小山市立車屋美術館に巡回。

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ぷらいまり。
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