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【歌詞和訳】All the Good Girls Go to Hell ビリー・アイリッシュ

先日、山火事が頻繁に起こる方面でお仕事をしている方に、フリーウェイから撮ったという山火事の写真を見せてもらいました。カリフォルニアの山火事はニュースでも大きく取り上げられていますが、目の前に広がるオレンジ色の空と炎は、まさにこの世の終わりという印象でした。

今、地球では温暖化が進み、氷が溶けて海面は上昇、森林は燃えて多くの人や野生動物が命の危機に晒されています。山火事だけでなく、台風などの大規模な災害が頻発して、迫り来る危機を実感している人もいるのではないでしょうか。環境問題は他人事ではなく、私たちの生活に直結している問題です。科学者たちは、取り返しのつかない事態を回避するために残された時間がとても少ないことを訴えていて、組織だけでなく個人レベルでの対応が急がれています。気候危機のためのストライキやデモ行進も、この問題に真摯に向き合う人たちによって世界各地で活発に行われてきています。

この流れの中で、環境問題をテーマにした曲を作成するアーティストも増えています。アメリカのポップアーティスト、ビリー・アイリッシュもその一人で、今年リリースされたアルバム”WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?”の中で、"All The Good Girls Go To Hell"と題した気候変動をテーマにした曲を発表しています。
とても興味深い曲なので、歌詞の和訳とともに気候変動との関連について綴りたいと思います。


歌詞はこちら。

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"All The Good Girls Go To Hell"(いい子はみんな地獄に行く)

My Lucifer is lonely
私のルシファーはひとりぼっち

Standing there, killing time
Can't commit to anything but a crime
Peter's on vacation, an open invitation
Animals, evidence
Pearly gates look more like a picket fence
Once you get inside 'em
Got friends but can't invite them
突っ立ったまま、時間潰し
犯罪以外にやることもない
聖ペトロは休暇中、天国は誰にでも開かれてる
動物たちに、動かぬ証拠
天国の門は杭でできた柵みたい
一度中に入ったら
友達も招待できないよ

Hills burn in California
My turn to ignore ya
Don't say I didn't warn ya
カリフォルニアでは丘が燃えてる
今度は私が無視する番
警告しなかったなんて言わないで

All the good girls go to hell
'Cause even God herself has enemies
And once the water starts to rise
And Heaven's out of sight
She'll want the Devil on her team
いい子はみんな地獄に行く
だって神様にだって敵がいるんだから
増水し始めて
天国が見えなくなったら
神様は悪魔だって仲間にしたがるわ

My Lucifer is lonely
私のルシファーはひとりぼっち

Look at you needing me
You know I'm not your friend without some greenery
Walk in wearing fetters
Peter should know better
Your cover up is caving in
Man is such a fool
Why are we saving him?
Poisoning themselves now
Begging for our help, wow!
私を必要としてるじゃない
葉っぱも持ってない私は友達なんかじゃないんでしょ
足枷つけて歩いて
聖ペトロとしたことが
隠したって丸見えよ
人間は本当に愚か
助ける必要なんてある?
自分たちに毒を盛って
助けを求めてるんだって

Hills burn in California
My turn to ignore ya
Don't say I didn't warn ya
カリフォルニアでは丘が燃えてる
今度は私が無視する番
警告しなかったなんて言わないで

All the good girls go to hell
'Cause even God herself has enemies
And once the water starts to rise
And Heaven's out of sight
She'll want the Devil on her team
いい子はみんな地獄に行く
だって神様にだって敵がいるんだから
増水し始めて
天国が見えなくなったら
神様は悪魔だって仲間にしたがるわ

My Lucifer is lonely
There's nothing left to save now
My God is gonna owe me
There's nothing left to save now
私のルシファーはひとりぼっち
もう救えるものは残ってない
神様は私に貸しができるね
もう救えるものは何もない

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PVは、ビリーが背中に何本もの注射針を一気に刺され、翼が生えてくるという不気味なシーンで始まります。彼女はそれから下界らしき場所に落下するのですが、これは歌詞に出てくるルシファー(「明けの明星」という意味のラテン語で、神話などで天から地・下界へ落下する堕天使を意味した言葉)を象徴しているものと思われます。落ちているシーンでは天使のように白く見えますが、下界ではタールのようなベタベタした場所に落ちて真っ黒になり、まるで悪魔のようです。油で汚染された水に落ちてしまった鳥のようにも見えます。

歌詞に出てくる”Peter(聖ペトロ)”というのは、天国の門の前に立って、リストを見ながら天国へ行ける人を選別する人のことを意味しているらしく、”Peter's on vacation, an open invitation”というのは、「聖ペトロがいないから、天国は誰にでも開かれている」という意味にとれますが、この社会では、モラルを無視しても天国に行けてしまうという皮肉のようにも聞こえます。

彼女が立ち上がって歩き始めると、背後が次々と燃え始めます。これは、“Hills burn in California(カリフォルニアでは丘が燃えてる)”という部分そのままですね。”My turn to ignore ya Don't say I didn't warn ya(今度は私が無視する番 警告しなかったなんて言わないで)”の部分は、気候危機についてたくさんの人が警告してきているのにも関わらず、それが十分に聞き入れられていない様子を表しているともとれますし、環境を破壊してきた人間に対して地球が言っていることのようにもとれます。

曲のタイトルで、サビの部分でもある”All the good girls go to hell(いい子はみんな地獄に行く)”は、Devil(悪魔)の目線で書かれているようです。PVでも炎の中で女の子たち(good girls?)が踊っていますが、気候変動で増水して、天国が見えなくなるという実際に最悪な事態が起きてしまえば、どんなにいい子でも地獄に行くんだよ、ということでしょうか。もしくは、悪魔は神様のことを疎ましく思っている(”'Cause even God herself has enemies”(神様にだって敵がいる))けれど、悪魔のままでいても最終的には神様が味方してくれる(”She'll want the Devil on her team”
(神様は悪魔だって仲間にしたがる))からなんとかなるさ、という悪魔らしい囁きなのかもしれません。

“Look at you needing me You know I'm not your friend without some greenery(私を必要としてるじゃない 葉っぱも持ってない私は友達なんかじゃないんでしょ)”の部分のgreeneryは普通に聞くと大麻のことだと思うのですが、緑が少なくなっている地球の声とも捉えられます。

“Poisoning themselves now Begging for our help, wow! (自分たちに毒を盛って 助けを求めてるんだって)”の部分からは、環境を破壊してきたのは人間であるにもかかわらず、危機に直面して助けを乞う様子が伺えます。気候変動を食い止めるためには肉食を減らす必要があると言われていますが、人間は肉食を続けながら環境破壊による悪影響のために助けを求め続けていると捉えると、ヴィーガンだと言われているビリー・アイリッシュらしい歌詞だとも言えるでしょう。

曲全体を通して、悪魔が人間を、地球が神を象徴していて、地球(神)よりも力を持っていると勘違いした悪魔(人間)の愚かさを歌っていると考えると辻褄が合うような気がしました。

以上が私のざっくりとした解釈です。こんな風にアートの力で問題を提起するのってすごいなぁと思わずにいられません。この曲はいろんな解釈ができると思うので、こういうことでは?というのがあれば是非教えてください。ではでは。


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