若者を潰すな。
勤め人の時、部下を持ったことがある。
部下を持つというのは恐ろしい。
それぞれ家族や友人、恋人などがいる。生まれも育ちもバラバラ。そんな人達の生殺与奪権を、単なる偶然で所持することになるのだ。
恐ろしくない方が不思議だ。
上司は簡単に部下を潰せる。有形力など行使する必要はない。業務にかこつけて、組織のためと嘯いて、細かい嫌がらせをすれば良い。
自分は特別優しい人間ではない。しかし、自分の言動が彼らの人生を左右する。何かあったら家族に申し訳が立たない。臆病なのかも知れない。
私は、どんな失敗をしても、部下を叱ることはしなかった。仕事の失敗如きで地球が滅びる訳でもあるまい。
例外は、大量のワードとエクセル文書を拵えることこそが仕事、それに忙しいからと生身の人間対応を怠った場合だけだ。
世間は、そうでもないらしい。
ここ数日で、若者を含めて仕事で人を潰す話を複数聞いた。
怖くないのか。
自分は他人を潰して良いだけの資格があると思うのか。
意のままに動かして他人が右往左往する様はそんなに面白いのか。
それとも、何も考えず、自然にそれが出来るのか。
この21世紀前半の日本国では、大半の人は稼得労働をしなければ生き延びることは出来ない。鎖のない奴隷制度だ。必要な時だけ調達される、一見自由な奴隷。
労働にこそ価値がある。そんな20世紀の西洋由来の価値観が支配する中、その仕組みに適合するか否かを問わず労働市場にほぼ全員放り出される。無理筋だ。そろそろ限界だろう。
私は現代社会をそう見ている。
組織のため、利益のため、お客様のため。大義名分の下、若者や部下に負荷をかけても仕方ないという行動の基盤には、この価値観があるのだろう。
100年後の子孫は、そんな我々をどう評価するのだろうか。
オジサン達はそんな時代の共犯者であるからまだしも、どんな時代だろうと、まだ何者でもない、失敗して当然の若者を潰すことには損失以外ない。
それをする資格があると言える人は、そういう人だけでどこか離れた所に集まって、ずっとお互いに楽しく潰しあっていれば良い。
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