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TRPGへの招待


・TRPGって何?

あなたはご存じですか?
「TRPG」というゲームを。
「テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム」略して「TRPG」
「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といったコンピューターによるRPGが隆盛する現在ですが、これらのゲームが生まれたのも「TRPG」あってのものなのです。
TRPGとは!
1冊のルールブックを手に!
紙とペンとサイコロで!
様々な架空の世界を仲間たちと旅して物語を紡ぐ!
仲間というのは、液晶画面の中の実在しない誰かではありません!
あなたと同じ卓を囲んだ数人のプレイヤーたち!
血の通った人間があなたの旅の仲間なのです!
そう、TRPGは皆さんのよく知るRPGの、ゲームのストーリーテリングやステータス管理、戦闘の計算といった様々な処理を、コンピューターにやらせるのではなく、人間の手で行い進行するゲームなのです。
(基本的には3~5人程度で遊ぶのが一般的です)
なんだかめんどくさそうに感じますか?
確かに手間暇のかかる遊びです。
しかし、TRPGはその手間をかけるだけの楽しみを持った遊びなのです。
結論は本文を読み終えてから出しても遅くはないでしょう。

・フレキシブルなストーリーテリング

先ほど私は「ストーリーテリング」も自分たちで行う、と言いましたね?
そうです、TRPGはゲームのストーリーを自分達の手で生み出すことができます!
TRPGにはそのゲームの世界を構築するための材料の集まり「ルールブック」が存在します。(本流は紙の書籍ですが、今どきは電子媒体のルールブックも存在ます)
これが、テレビゲームでいうところの「ゲームソフト」のようなものだと思ってください。
このルールブックを手に「ゲームマスター」(この役職の呼称もゲームによって様々あります)と呼ばれるゲームの主催者がシナリオを作成し、数名のプレイヤーを招待して自らが創造したゲーム世界を冒険してもらうのです。
この際のストーリーテリングや様々な処理をゲームマスターが行い、プレイヤーたちが主人公として物語を旅し、動かしていくのがTRPGの基本です。
この時、物語は必ずしもゲームマスターの思い通りにはいきません。
相手は機械ではなく人間です。
ゲームマスターの想像もしなかった行動をプレイヤーたちはとります。
これはどういうことでしょうか?
「たとえ同じシナリオをプレイしたとしても、メンツによって展開や結末が変わりうる」ということです!
このプレイヤーとゲームマスターのやり取りを「セッション」と言います。
だから、ストーリーを「あなたが」生み出す、のではなく「あなた達が」生み出す、なのです。

・フレキシブルなゲームプレイ

TRPGにはルールブックがあります。
しかし、これに対して独自の追加データを作ることをだれが止められるでしょうか?
あなたのオリジナルのモンスターや魔法を勝手に作って、あなたのゲームに登場させることができます。
新しいカスタムルールを追加して遊ぶことができます。
コンピューターのRPGには難しい、さまざまなハウスルールの導入や、カスタマイズがTRPGには可能なのです。
また、物語が円滑に進むことを優先して、最高のストーリーを紡ぐためにプレイすることもできますし、プレイヤーに最大限の戦術を要求し、生きるか死ぬかの戦いを突きつけることもできます!
あなたと、ゲームを共にする仲間たちの要求に応じて、一つのルールブックが様々に柔軟に形を変える、それがTRPGには可能なのです。

・フレキシブルな……何でもアリってこと?

TRPGは非常に柔軟な遊び方が許されています。
何をしてもいいゲームだという誤解をされることもあります。
TRPGはこれまで様々な作品が発売されてきましたが、それらのルールブックによく見られる、ある共通のルールがあります。
「ゲームマスターの現場の判断は(ルールブックを含めた)すべてに優先する」
プレイヤーのあらゆる宣言はゲームマスターの承認を得て初めて実行されます。
ゲームマスターは自分が主催するゲームの全権と責任を負っています。
プレイヤーが無責任な言動を行った際にはゲームマスターはそれを否認する権限を持ちます。
あるいは、そうしたプレイヤーの「悪ノリ」を逆に利用して、シナリオをより面白く、刺激的なものに作り変えてしまうこともゲームマスターの腕前次第では可能になります。
ゲームマスターは自分がプレイヤーに提供したいゲーム体験を深く理解し、また、プレイヤーがどのような体験を求めているのかを察知して、自分自身も含めた豊かなプレイ体験を作り出していくことになります。
さて、これだけだと、プレイヤーはゲームマスターの思い通りに動かされる「駒」になってしまう可能性がありますね。
先ほどのゴールデンルールには続きがあります。
「ゲームマスターの現場の判断は(ルールブックを含めた)すべてに優先する。ゲームマスターの裁定が正当なものだと思えない場合、プレイヤーはそのゲームマスターの下でプレイしない自由がある」
プレイヤーは横暴なゲームマスターの下で遊ばないことを選択することができます。
信頼を失ったゲームマスターは自身の主催するゲームに誰も参加してくれなくなります。
当たり前のことですね。
しかし、これは本当の最後の最後です。
このような状況になる前に、ゲームマスターもプレイヤーも、互いにどのようなプレイ体験を提供したいか、あるいは求めているか、ゲーム外で日ごろから意見を交換し合い、お互いの理解と信頼関係を築いていくことが、理想的なTRPGのプレイ環境の構築には重要になります。
現在はインターネットを活用して様々なコミュニティに参加したり、セッションそのものもオンラインで行う様々なサポートが存在します。
それらを活用するのも良いアイデアですが、可能なら初めは気心の知れた友人たちとプレイすることをお勧めします。
TRPGにはデリケートな機微が存在するためです。

・「事故」を避けるために

さて、それでも価値観の違う人間同士がすることです。
よく配慮していても、特定の表現などを辛く感じてしまってゲームが楽しめないケースがあるかもしれません。
例えば、ホラーゲームと言えど、過度なグロテスク表現などがつらい、といったことです。
TRPGにはそうしたケースを完全に防げないまでも、軽減するための仕組みなども存在しています。
これらは特定のゲームシステムに依存するものはないので、卓を囲む仲間で必要と感じるならいつでも導入することができます。
分かりやすいものとしては「Xカード」などが挙げられます。
これはゲーム中の表現に対して不快感や不安感を感じて辛い時に場に置いてある「Xカード」に手を置いて、その意志を表明するものです。
これが行われたらゲームマスターはその表現を簡略化してゲーム上必要な情報だけを伝えてスキップしたり、ゲームの展開を変更したりという対処が求められます。
もし仮に提示したプレイヤーがどうしても続行が厳しいようならゲームの中断も考慮することになります。
楽しい時間を過ごすことが目的ですから、精神の健康を害してまでゲームの続行を強要することはできませんよね。
また、「セッション0」という、セッション開始前に今回はどのような話になるのか、どのような展開を望んでいてどのような表現は避けて欲しいかなどを、セッション前に事前に話し合う時間を作る、といった措置もあります。
こうしたセーフティーネットは様々ありますが、繰り返しになりますが、やはり最も重要なのは日頃からのコミュニケーションと意見の交換です。
互いがどのようなプレイ体験を求めているのか、また提供したいのか、互いの理解を深め合うことが、楽しい時間を過ごす近道だと私は考えています。

・お勧めのゲームはある?

TRPGは大手メーカーのものから、同人のものまで、多種多様なゲームが発売されています。
作品によってプレイ体験も様々です。
様々な怪異に挑むホラーゲームや、現代異能力バトルもの、そして、剣と魔法のファンタジー。
もちろんあなたの好みにもよるのですが、もし私がそれらの様々なゲームから一本、初心者にお勧めするとしたら、(私が作ったTRPG!と、言いたいところですが)現状、私は「ソード・ワールド2.5」を推奨します。
世界観はおおよそオーソドックスな剣と魔法のファンタジーRPGの世界。
ゲームシステムも癖が少なく、使用する道具も紙とペンと、みんながよく知っているサイコロ二つで遊べます。
日本国内で広く普及している国産TRPGの王道です。
それゆえに、よく研究され、ネット上での情報検索も容易です。
そして、非常に重要なポイントとして挙げられるのが値段です。
大抵、よくサポートされた、大手のTRPGは4、5000円程度することが多いのですが、ソード・ワールド2.5は1000円ほどで始めることができます。
というのもソード・ワールドはルールブックが文庫本で3冊に分冊されており、ルールブック1はそれ単体で最低限のTRPGルールとして独立して成立するように書かれているため、まずはルールブック1だけで遊んで、気に入ったら残りも買う、という遊び方ができるためです。
あなたのTRPGデビュー、ぜひこの「剣と魔法の王道ファンタジー」から始めてみてはいかがでしょうか。

・若干の補足

TRPGのプレイヤーデビューを飾る皆さん。
一つアドバイスです。
「ロール・プレイング・ゲーム」はキャラクターになりきって、演技しなければならないもの、そう思い込んで気負っていませんか?
それは誤解ですよ。
「ロール・プレイング(役割演技)」とは、そもそも「攻撃役をプレイする」であるとか「回復役をプレイする」であるとか、ゲーム上の自身の立ち位置を示す意味合いの強い言葉でした。
プレイヤーは自分がマイキャラクターに望んでいるアクションをゲームマスターに申告するだけでも十分ゲームとして成り立つのです。
例えばセリフで上手に表現しなくても「宝箱に罠がないかどうか気になるので罠の有無をチェックしたいです」などゲームマスターに自身のアクションを申告すれば、ゲームは滞りなく進行します。
キャラクターになりきって言わば「演劇」を行うようなことはTRPGにおいて特に要求されていません。

・TRPGデビューの時

さて、TRPGがどのようなゲームでいかなる魅力を持つのか、大雑把に理解していただけたでしょうか。
何より大事なのは実際に遊んでみることです。
現在は自身でシナリオを作るのが難しくても、誰かが作ったシナリオをオンラインから入手することも容易な時代です。
仲のいい友達を誘って、まずはぜひ、一度「TRPG」という遊びを体感してみて下さい。
そしてもしあなたにその気があれば、あなたたちのプレイの模様を書き起こした「リプレイ小説」や、「リプレイ動画」などを作成して、あなた自身がTRPG文化の発信者になることを目指してみて下さい。
もちろんそこまでする必要は別にありません。
あなたと、その仲間たちが楽しい時間を過ごすことができれば、それだけでTRPGはその本懐を十分に遂げています。
TRPGがあなたの仲間の絆と新たな縁を繋ぐことを願って本文を終了します。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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