私は「絶滅危惧種」なの
深く真っ黒な湖の上で、私は舞うの。
明るい真っ赤な着物を纏い、真っ赤な薔薇を纏ったような私は舞うの。
足が地に付く気配はなく、音は水面に吸い込まれて。
誰も来ない場所で、誰も知らない場所で、誰も私を知りえない場所で。
私は舞うの。
私は「絶滅危惧種」なの。
・ ・ ・
昔から誰とも解り合えることはなかったわ。
真っ赤なランドセルを背負い、女らしさがキラキラして見えた「女の子」だった頃の私。
黒い制服を身に纏う均一さを嫌った私は、きっと変な子だったわね。
「均一な箱庭」と教室を表現していた小説に心をときめかせていた私は、きっと変な子だったわね。
そう、あの違和感は、皆超えていくものだったはずのもの。
私はね、それを乗り越えられなかったの。
私はね、「子供」を脱ぎ捨てられなかったの。
だからなの。
私は「絶滅危惧種」なの。
・ ・ ・
おとなになったはずの私はね、心の中で、あの頃の自分をこうして舞わせているの。
いつだって忘れないように。あの違和感を忘却の泉に没してしまわないように。
あの違和感こそが、私を「絶滅危惧種」にさせているのよ。
私は「普通」であることが嫌い。
私は「当たり前」を選ぶことが嫌い。
私は「傷つかない」ことが嫌い。
私は「変じゃない」ことが嫌い。
だからね。
私は「絶滅危惧種」なの。
胸を張って、そう生きて、胸を張って、そう死ぬの。
読んでいただきありがとうございます。 頂いたサポートは、より人に届く物語を書くための糧にさせていただきます(*´▽`*)