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「何者でもない私」は、やっぱり今のままで行こうと思う。

そう言えば、この間、密かにstand.fm始めました。ひっそりひっそり。

「何を喋ろうかな」と考えるよりも前、ふと「ディキンソン詩集」を発見したので、ちょうど、その出会いをちらりと話しました。

「彼女との出会い」はTwitterの、多分、本の紹介か何かのツイート。その中で、彼女が呟くたった一言。

「私は誰でもない人」

最近、私の口癖は「私は何者でもないなぁ」だったのです。別に口に出しはしないのだけど。

「えっ、同じこと言っている人がいる!」と思ったら、彼女でした。

彼女は、アメリカの有名な詩人です。けれど、有名になったのは彼女がこの世を去った後。

数千という膨大な詩を、ご遺族が見つけて詩集としました。生前は、当時あまりにも独創的な詩だったので世間に認められずに、たった10篇しか公表しなかった。

慌てて、「私は誰でもない人」の詩を読みました。偶然、家に彼女の詩集があったんです。いつ買ったか、本当に分からないんだけども。

この瞬間、「あぁ、彼女と会えてよかったな」と思いました。

彼女は、こう話しかけてきました。

「私たち、おんなじね」

これまた変な話をしてしまいますが、私はどんなものでも「映像で」読みます。

小説、エッセイ、新聞記事、呆れたレベルでは古典「老子」でさえ、頭の中で飄々とした仙人のような、古い中国の服を着た老人が現れました。

すべての文章を音読してくれて、流石に唖然としました。

……いや、面白かったんだけどさ。哲学の勉強だったので、もう「無為」やらなんやらを映像化してしまって、どうやって文章に直してレポートにすりゃいいんだこれと悩みました。

今回も、そうでした。

ディキンソン(?)が、現れました。

若く賢そうな女性ですが、どことなく浮世離れしています。小柄な身体は菫色のドレスに包まれているけれど、どうやら社交用のすその広がったものではなくて、足が見える家庭用で、年頃らしいフリルなどもありません。首まで布地できっちり隠れているので、ゆるい服が好きな私からしてみれば、ちょっと苦しそうに見えました。顔立ちは、若い女性にしては少し骨ばっていました。濃い栗色の髪は、きっちりと頭の上でまとめられています。

これが、詩と共に現れたエミリー・ディキンソンです。

彼女は、萌黄色の草が生える地面に腰を下ろし、木に寄りかかっていました。

屋外なのにスポットライトをあてられたように彼女だけしか見えないのは、おそらく「詩」だから、それ以上イメージできないせい。

私は多分、その隣にいて。

彼女は、昔馴染みの女友達に楽しい秘密を打ち明けるように、いたずらっぽく微笑みながら、その詩を読み上げてくれました。

その後、彼女の生き様を読み、その強い意志を知り、彼女に惹かれた理由がわかりました。

私は、自分の書く物語について誰よりも声を大にして叫びたいことがたくさんある。

けど、それを絶対に許さない自分がいて、どれだけ「私の作品はここをこう頑張ってて、ここがとても素敵なので読んでください!」と言いたくても、言わせてくれない。

だって、それこそ「物語の神髄」だから。

「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」

それをポロリと口からこぼれさせたら最後、私は、書く資格を自らはく奪するでしょう。

一生文章を書かない、書いても誰にも見せない自信がある。

きっと、ディキンソンもそうだったのかもしれないと、思ったんです。

そして、彼女のようにありたいと、願います。

認めても認められなくても、読んでも読まれなくても、ただただ心に浮かぶ友人達を書こう。

文章を読んであれだけ映像化してしまう私なので、自らの創作もまた現実世界と同じぐらいリアルです。

二重に世界を生きている……ちょっと大げさに言えば、そんな感覚さえ、あります。

特に、10年以上前、初めて描き切った小説の主人公とその世界は、まだ「今の私」に影響を及ぼします。

時に判断に困った時、彼は物語の中で行く先を指し示し。

覚悟を決めるとき、彼は物語の中で覚悟を決めたその先の責任を問う。

しかし、当時は「決定的に何かが欠けている」と思い、その小説を仕舞いました。

もしかしたら、今年はこのリライトに挑戦するかもしれませんね。

というわけで、2020年同様、変人ルートまっしぐらの通常運転です。

2021年は、上記の世界か、最近、流星のように現れ、そこと現実と重なっている世界かは分からないけれど、一つ作品を作って、どこかに投稿してみたいと思います。

そうそう。こんな感じで普段から二重・三重の世界に生きているので、「あわいの小説家」を名乗りました。

2021年も、よろしくお願い致します。


                    2021/1/2

                                                                            千羽はる


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