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行きずり Passing person

はじめに 

※ここは飛ばして、本題だけで読んでいただければ・・

朝の地下鉄
乗っているのは人間が主で
まぁ、それ以外の生物が乗っていても、それはカウントしないでも、構わない程度と言える。
細分化すると、男性、女性という2分類と、分類に当てはまらなくても、なんらの問題はない時代になったから、性別分類は一応、さらに、若者、老人、カートに乗った赤ん坊、大きな人、小柄な人、国籍、人種、まあ、沢山が混ざって乗客という肩書きを与えられている。
その乗客でさえ、地下鉄を降りれば、会社員、自営業、学者、無職、と、また意味のあんまりない分類に晒される訳だから。
男と女の隔てはないと言いながら、一方では、セクハラネタは後を立たず。法治国家といえども、表に出ない、運動部の体罰、組織内のパワハラ、イジメ、村八分、そんな事例もまま発生する。
方で縛って、一定の効果を上げても、人間の根っこまで踏み込んで、浄化は難しいところもある。

一方の息抜きは、他方の苦痛になるなんてこと、その存在は否定できないわけだ。
同じ言葉でも、同じ会話のテーマでも、心から笑い合える場合もあれば、不快に感じることもある。 シンプルに例えれば、同じ小説でも、読む人により、絶賛の名作になったかと思えば、破廉恥な作品と評価されることもある。
もはや、こうなると、極めて、慎重かつ冷静に言葉を文章を、作品をアウトプットしなくてはならなくなっている。

と  ここまで書いて、本題へと

本来この部分までは、枕として、長くても5行で纏めるはずだった なのに  こんなに長くなった 今朝書きたかったこととは

本題 行きずり Passing person

多分この内容は #ほろ酔い文学

バーで、たまたま隣り合わせになった方とお話をするという事がある、それは相手が、同性でも異性でもだ。そもそも、バーというところは、一人で行くべき場所だと僕自身は感じている。もちろん、それは、勝手な解釈ではあるのだけれど、旅先のホテルのバーだったり、街のバーでもいい、知ったものと旅先で、いつもの話をして酒を飲む、これはこれだけれど、旅先の鮨屋と、旅先のバーは一人が良い。鮨屋には地の魚と、うまい酒と、うまい食い方と、その土地の生活があり、それをつかのま堪能できるから。バーは、その点においては、 #その土地の  と言うよりも いわば #行きずりの  という解釈だ。どこの誰かも解らない人間が、そのバーに偶然居合わせて、会話をする、しない場合もまた良い、いずれの場合でも、その場所には、それぞれの男、女、そしてその他が、バーに運び込んだ空気が混在して、これこそ2度とはない時間と空間が生まれる。

丁度20年前に、僕は不思議な経験をしている

その日は、雨上がりの蒸し暑い夏の夜だった

仕事で出かけた東京ではない大都市、会食でかなり飲んだ後、なぜかこの夜は飲み足りなくて、宿泊先に帰る前に、1軒のバーに立ち寄った。滞在先のホテルにもバーはある、けれどなぜか、僕はこの時は、この建物自体は新しいのに、どこかクラシカルなこのホテルのバーにした。

この町は以前にも数度だけ来たことがあった、おなじ街なのにエリアにより、人も空気も変わるのがこの町の特徴だ。僕の宿泊するホテルは、主要駅の近くにあり、便利だけれど・・・ 訪れたバーのあるホテルは、決して不便と言うことは無いが、オフィス街からはも主要駅からも地下鉄かタクシーと言う場所だった。もはや、夜遊びの時間すらも過ぎて店はあらかた閉まり始めるそんな時間だ。ホテルのエントランスも静かだったけれど、その時間でもなお若いベルマンがいて、バーに行きたいと告げただけで、さりげない対応で中の人間に引き継いでくれた。

バーは、エントランスのあるフロアのロービーの奥にある。カウンターにテーブルが数席というバーだった。テーブルは埋まっていたけれど、カウンターには席があり、10人ほどが座れる長さの鍵型カウンターの長辺の短辺に近い場所に席を得ることが出来た。

ウエイターが、それらしい顔つきで迎える、笑顔ではなく、けれど、きちんと受け入れてくれるという意思が伝わる。バーでメニューがあるというのは、粋ではない、されど無いのも困る場合がある、行きつけならば不要だし、さらに、バーと言うところは、本当に美味い酒や食い物はメニューには無いものだ。それなのに、頼めばきちんと出してもらえるというところ。例えば都内なら、あの老舗ホテルのオムライス、例えばあのホテルのカツサンドだったりする。この夜は、もう既に酔っていたのと、蒸し暑さが手伝い、僕が注文したものは、  #パパダイキリ  だった。勿論、はじめてのバーで 「パパダイキリを・・」なんて言えば、可笑しな人と思われても仕方がない、それに、パパダイキリも、諸説あるので、僕の頼み方は、以下の要領でだった。

「シロップ無しのダブルのダイキリをクラッシュドアイスで満たしたロックグラスで・・」

これでも、存分に変な客かもしれないけれど、バーテンダーは、注文通りに作ってくれた。僕なりのパパダイキリモドキ              これをやりながら、タバコを吸う。

余談:当時はタバコが好きだったから 発売当時からづっと浮気なく7ミリのキャスターを吸っていた。僕がたばこをやめた理由は、震災があり、製造が休止した後、復活せずに、何故か空港免税店では買えるのに、そこ以外では手に入らなくなった事と、身体を壊した時も重なってのことだ。いずれにしても、このころはきちんと吸っていた。

そんな時に、にわかに視線を感じて、正面の酒棚を眺めていた僕は、感じる方向を向いた。そこには、そう30後半くらいか、一人の女性がこちらを見ていた。カウンターの同じく長辺側、席にして4つ開けた辺りだった。間にも客がいるのと、暗いので細部までは解らなかったけれど、確実に目が合った。目が合っても視線は外さずに、微笑むでもなく、睨むでもなく、表情一つ変えずに、彼女は僕を見ていた。僕も、その視線をそらさずに、グラスとタバコとを交互に口に運んだ。やがて、お互いに何もなかったように、視線を戻していた。

ゆっくりと、深夜のバーの時間が流れた。

パパダイキリの後は、ダークラムに変えた、マイヤーズを注文すると、ウエイターはカウンターの下から丸い氷を取り出すと、アイスピックでひと手間加えた後で、ロックグラスに落とした。ギリギリの大きさの氷がグラスに収まったのを確認してから、バーテンダーは、 #ジガーカップから 、酒を注いだ、面白いのはゲストの目の前で、きちんと計っているというより、ちゃんと多めに入れましたよみたいな、たわいない、そして言葉のない会話がそこにあった。そのころバーの中はかなり空いてきていて、僕の席の右側、彼女との間の4つの席は、今は無人となり、彼女の全景を見ることができた。彼女は、夏のワンピースをきていた。シャツドレスとでも言えばいいのか、トラディショナルなデザインの麻混だろうか、素材もデザインもとても良いものだと思われるものを着ていた、色もとてもいいベージュだった。足元は夏のサンダルでその造りは、ONでもOFFでも対応できるもので、同じようにベージュだ、ネックレスと言うか、どこか、ネイティブアメリカンの装飾品を連想させる、アクセサリーをしていて、いずれも彼女にとても似合ってみえた。

そんな彼女が、少し酒を飲んで寛いだ時の、女性が見せる独特な雰囲気で、バーテンダーが僕に酒を出す、その一連のやり取りを彼女は眺めていた。そして、「何故か楽しいわ・・」とだけ言った、その言葉が誰に向かられたものか、僕もバーテンも、一瞬わからずに、男二人は一瞬目を合わせた。「なんか、いいいな この男同士の関係ってね 」そう言うと、彼女は、間に僕ら男二人の何れかが、言葉を挟む前にまた喋りだした。「バーテンとお客、普通はね、でも、どこかこの二人の関係には、何て言うのかした、共犯者、そう共犯者めいたものを感じるのよね、お互いに競うでもなく、されど、慣れあうのでもなく、キチント距離と立場を守った共犯者という関係」そう彼女は言い終わると、「私も、その丸い氷のお酒が飲みたいわ」と付け足した。バーテンは再び、カウンターの下から丸いお氷を取り出して、僕の時と同じように一手間加えると、氷の上に酒を注いぐ、ラムの香りが立ったのか、彼女はその香りを褒めた。バーテンは言葉ではなく彼女に頷いた。

「共犯者ですか、それじゃ僕らは、どんな企みの共犯なんでしょう?」 僕は彼女に聞いた。

「たとえばね、このバーに、とても素敵な女性が一人で、ここに来たとするじゃない、深夜の時間帯だし、どんな女性なんだろうと、貴方は思い、バーテンダーの彼も、ふと同じことを想うわけ。 でね、思うだけなら、自由だけれど、それだけでは少しだけもの足りない、お互いにそんなことを想うわけ、じゃ、暗黙のうちに男同士の利害が共有され、彼女はどんな女性なのか、少しだけでも、探る、タイミングがくればいいと、同時に、来なくてもいい、でも、全然ないと解ってて過ごす時間と、どうなるか想像もできない時間とでは、その時間に対する期待値が違うわけね その意味では、二人は共犯として結ばれるわけ」

「それは確かに、共犯だ 僕もそう思います そして、そのとても素敵な女性と言うのは・・・ いや 野暮だな はいそうですね」

バーテンは、その話を聞きながら、表情も変えずに、仕事を続けている。けれど、きちんと、2人の客の会話の一員だった。

「楽しい」 そういう彼女に僕は

「でも、共犯は、僕ら二人というよりも既に、貴女を入れた三人になっていると思いますよ」

「そうね、それもとても楽しいことなんだと思えて来たわ」

そこから、僕らは、たわいないお喋りをした。

深夜が、より深いところへと流れていき、完全に未明と言える時間の前に

彼女は帰って行った。

彼女は、このホテルの宿泊客ではなく、このバーには僕と同様に、初めて見る客だと共犯者のバーテンは言っていた。結局、何も解らないままだった。けれど、雨上がりの深夜から、始まった、楽しい時は確実に存在した。

支払を済ませ、バーとホテルを出た。

勿論、僕もこのホテルのゲストではんあいのだから。

ホテル前の坂道の歩道を下りながら、彼女もここを歩いて行ったのだろうか、ふと彼女の背中が見えた気がした。



=バーの小道具と本文に登場した酒=













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