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偶然は時に人生を変えた 

#眠れない夜に

連休中 皆様の中にはお休みでホテルに滞在されている方も多いと思います。私自身は都内の自宅です。家族は、みな、それぞれに出かけていて、この連休はづつと一人で過ごします。


ホテルのお話

今日の話題は、ホテル 私は仕事柄、内外、様々なホテルにお世話になりました。ホテルという空間では、時に不思議な事が起こります。
それはたぶん、ホテルという場所が、そこに滞在している、滞在していた人々の思いや、そこで働く人々の思いを、内包し続けるがために、その空間に特別な空気が生まれているからかと思うのです。
その空間に蓄積された人の思いと、そもそもその地域や国に根付いた、文化や風土も相まって、そこで起きる出来事は、むしろ自然。でも、これらは僕らの日常から考えたら、不思議と感じる出来事です。
つきつめれば、それが事が起こらないほうがむしろ不思議だと、僕自身は考えています。

ゴメンナサイ

 僕はここでホラーを書こうとしているのではありません。
#不思議なこと  とは、決してそちらの話ではありません。

さらに、ここに書くお話は総て、90年代〜2000年までのお話、だから今は昔の出来事なのです。

東京クラシカル


夏の午後、彼は自宅のある集合住宅から歩いて10分程度の場所にある、わりと知られた、クラシカルホテルのバーを訪ねた。
所用を済ませた帰り道だった。
都心にあるとても小さなホテルだった。
なぜ、真夏の午後、それも早い時間に、このホテルのバーが開いていたのか?それは今となってはわからない。
けれど、かれにとって、このバーで過ごした時間は、彼の今後の人生でとても大切な出来事になった。
さらに、彼はこの出来事の後、頻繁にこのバーを訪れることになったのだけれど、この初老のバーテンに出会うことは2度と無かった。
他のバーテンに聞けば、確かに実在するバーテンダーだそうだけれど、バーテン達と、とても親しくなったあとも、その初老のバーテンのことを聞くことは無かった。

古くからよく聞く話に、客は店を育て 店は客を育てる そんな言葉がある。例えば、客が、高価なボトルのワインを開けた時、総て飲み干さず、店の若いスタッフのために、ボトルに残して帰るといいう話がそれだ。
高価なワインを、勉強とは言え中々飲む機会がない若いウエイターに対して、その勉強のための1杯を残す。
そんなお客が来る店は、店もまた良いお客を育てようとする。
これから書くことは、そんな話だとおもう。

この日は、日差しの強烈な暑い夏の日だった。
以前から、とても行ってみたかったホテルだ。
通りから、緩やかな坂道を登り切ったところに、そのホテルはある。
坂を登っていくと、一歩 また一歩と 独特のホテルの空気を感じる。
小さなホテルなのに、入口にはきちんとベルマンがいて、さり気なく迎えてくれる。少しもスノビッシュなところがない、表現は極端かもしれないけれど、夏休みになると毎年家族で訪れる、温泉場の小さな旅館、そんな感じさえした。赤い絨毯を踏んで、古い建物の中に入る。
都会の喧騒が総て消され、そこは時間と空間が完全に独立した場所になっていた。暗い館内に、窓の外の明るさが絵画のように鮮明だ。
さらに、目指すバーは、ロービの奥に仕切られた窓のない、狭い空間だ。
まるで、
ライムマシンのような、何処の国に来たのか、それさえも分からなくなるような空間があった。
そこにいたのが、初老のバーテンダーだった。
彼はダイキリを注文した。
パパヘミングウエイじゃないけれど、強い日差しの夏の午後に、飲む酒としてはベストだと思った。
2杯を飲み干した時、「ラムがお好きならば、こんなお酒はいかがでしょうか」そう言って、手削りの丸く透明なアイスがグラス幅ギリギリに入った、中に注がれた色濃い褐色の酒
「同じラムですが、こちらはダークラム熟成させたラム酒です」
よろしかったら飲んで見てください。
ラムがお好きならばこれは美味しいと思います。
きちんと、彼の持つ酒の好みと知識を的確に見極め、嫌味にならない範囲でダークラムという酒の美味しさを彼に教えた。
もちろん、この1杯は、彼のためにバーからのギフト、ビルには載らない

あのホテルが、箱もそこに働く人も本当に素敵ないい時代だった。

バリ スミニャック

ホテル棟 と プール付きのプライベートコテージからなる、かなりクオリティの高いリゾートホテル。本来なら、高級リゾートはヌサドゥア とか ジンバラン とかの地名が思い浮かぶのだけれど、ここは、あのクタに近いスミニャックに立地する。ここに在る事が逆に良い結果になっていると感じた。総てのおいて丁度良いリゾートで、、あえてここを選ぶ人は、それなりの目利きかと思う反面、パックツアーでもホテル棟は利用されているので、そこは何ともいえない。
ただ、プライベートコテージに宿泊しているゲストでも、小規模ながら、質は圧倒的に高い、このホテルの共有部分の快適さに惹かれて、コテージから出てきて過ごす、その気持ちが大いに理解出来た。その日、彼はバリでの仕事を終えて、プールサイドでのんびりしていた。
プールと言っても、大箱リゾートホテルのそれとは、まるで異なる造りで、バリ独特のあの世界観に包まれた、遺跡の中の泉という形容がはまる。総てが石を巧みに取り入れて、打たせ湯の様に水を頭からい受けれるような造りや、プールの中に寝そべってくつろげる極めて浅く広いベッドの様なスペース。さらに、プールサイドにもデッキチェアの様に、その場にそぐわないものはなく、その機能を有した木製の重厚なフレームに、ラグを引き詰めた寝台のような椅子が備え付けられていた。石像が並び水辺は景色に溶ける。

その日、そのプールにはほぼ、彼一人という状況、感覚的に彼は沿う感じた。現実には、ホテルの規模からして、ある程度のゲスト達が居たのだと思うが、そのあたりの作りが絶妙で独り占め感を演出している。
ドリンクを注文して、文字通り彼は寛いだ。
この開放感は、ハワイでは絶対に味わえないアジアのリゾートの良さだ。
そんなところに、日本人かは解らない、アジア系の女性が二人やってきました。二人共、ビキニにバティックを巻いている。
彼のいるスペースの隣のスペースに彼女たちは来て
先程の設えの良い、寝台の様な椅子に、それが座った。
荷物を置いて、バティックの巻きスカートを外すと
ビキニにサングラス
ウエイターにドリンクを英語で注文した。
この時は、きちんとウエイターに伝えるためか、言葉が聞きとれた
この女性二人は、周囲の場を崩すこともなく、周囲の空気に直ぐ溶けた
時折、ふたりの声が聞こえる
けれど、それが何語で内容はもちをん解らない。
日本人ではない そう彼は勝手に思った。

少しすると、彼女たちは、ビキニのトップを身体から外した
見ては行けないと彼は反射的に思ったけれど
普通にしていても見えるものは見える
彼女たちが彼から見えるということは
彼女達も彼の存在を知っているに違いないのだから
何も気にすることはない そう彼は自分にある意味で言い聞かせた
目のやり場に困り俯く男は 逆に この場所の空気を崩す
されど、普通を装うと余計に不自然になる
相手は文化の違う外国人だから
彼はそう辻褄をつけた

彼女たちは、ウエイターが飲みもを持ってきた時のも、
平然とそのままの姿で過ごしていた。
何故かプールには入らないけれど
化粧がおちるからか?
わからない
そして、彼女たちと会話を交わす事に、単なる挨拶だ
それも日本語だった、彼女たちは日本人で、休暇で来ているという
日本のプールでは絶対にないこと
それは、聞けないことだ
けれど、彼は なぜ彼女たちは、日本では出来ないことをここでは平然と
少し気になったことが
その普通の出来事が、今でも彼には記憶に残って 少し気にかかる

フィレンッェへ オートグリルでの再開

彼がローマからアウトストラーダを北上して、フィレンッェを目指していた時のこと。もちろん仕事でだ。
途中で休憩しようと、適当なオートグリルに車を入れた。オートグリルとは日本で言うところのサービスエリアの事といえばいいだろうか。
ローマとフィレンツエは300km位の距離、 #アウトストラーダ  (高速道路)が大半で、ひたすら走ること2時以上、もう随分フォレンッエ゙に近づいたところでの休憩だった。トイレに言って、バールみたいなカウンターのとまり木で、エスプレッソ マッキャート ドッピオ を飲んで、車に戻ろうとした時に、知っている顔を見かけた。
友人の少ない彼は、都内で過ごしていても知った人に出会うことなんてまず無い。
なのに 出会った相手は
完全に友達以上の関係として以前、お互いにそう認識していた相手だった。
数年振りの再開 まさかのイタリア
こんな偶然は有り得ないと思った
「なんでこんな所に居るのよ」
これは数年ぶりに出会い、彼らが交わした言葉
お互いの口から同時に出た言葉だった。
ただ、一つだけ言えることは、お互いに再開を手を取って喜び合う関係には無いという事実だけだった。
関係のあった当時、彼は東京で、彼女は名古屋に暮らしていて、この時も未だ彼は依然として、東京に暮らして居たのだけれど、お互いには、それぞれが今どこでどうしているのは知らない。
過去の出来事が溢れるように思い出された。
けれど、これ幸いに色々聴くのは違うと感じた。
相手も、づつと黙ったままだ。
沈黙の後で彼は言った。

これは、何かの悪戯かトラップか だから、今はお互いに何も言わない、何も聞かないでいよう。
けど、もし、このイタリアで次に何処かで、もう一度出会ったとしたら、その時は、お互いのことを話すことにしよう。

これが、今 混乱の中で彼が出せる提案だった
奇跡的な再開を無駄にする選択だ そうとも感じていた
彼女は、黙ってそれを聞いて
冷ややかな笑顔で 頷いた
そひて、掌をあげて 去った

彼女が、観光で来ているのであれば
フォレンッェで回る場所は決まっている。
だから、ドゥオウモ や ウイツッイをウロウロしていれば出会えるだろう。けれど、それは出来試合だろうし、相手もそれぐらいは先読みする。
アンフェアだ。だから、ああは言ったものの、あえて出会わない様に、観光名所は避けている自分を感じている。
仕事で会う人もいる
結局、昼食はやめてグループが入る、店や時間を避けて、代わりにアルノ川岸のホテルのレストランでガッツリとした夕食にした。
Tボーンのビステッカをメインにして
ビステッカにレモンを絞り頬張る、これが彼にとってのこの世で最良の肉料理だは疑わない。
柔らかさと、霜降りを有難がる文化とは、対局の肉食系民族が選ぶ旨い肉
このの食べ方をを超えるものなど・・
この肉なら、トスカーナの赤でとなるけれど、この味は、時としてキリッとしまった白でも十分に美味い。
時間をかけて、食事をした 充分に美味しかった。
けれど、経は心に引っかかるものがあった。
彼女だ、日帰りツアーなら、もうとっくにローマに向けて出ていた後だろう。バスだとローマまで3時間以上はかかるだろうか。
もう、イタリアで会うことなどないと、半ば安堵し、半ば切なかった。

説角のフィレンツエだ、川沿いを散歩して ポンテ・ベッキオまで行ってみるか、腹ごなしと、酔ざましで そう考えて彼は、レストランから出てホテルのロビーを抜けて外に出ようとした。

その時、ロビーの奥の電話のスペースから声が出てきた。

やがて

2度目の再会が起きた

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