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世界中の、強くて、賢くて、勇気ある女の子たちへ、声をあげて立ち上がろう!

プラン・インターナショナル アドボカシーグループの長島美紀です。
みなさんは、女性がこぶしを突き上げるのを見たことがありますか?
私は、2回あります。
 
1回目は、小学校の時。小学校で全校生徒を対象に行われた講演会で、お話をされていた白髪の女性がこぶしを突き上げたのです。
「女よ、立ち上がれ!」
小学生だった私も、まわりの同級生もぽかんとして、その女性を眺めていました。「あの人、どうしちゃったんだろう」、講演終了後の教室への帰り道、話題はそのことだけでした。
 
2回目は、高校生の時。高校の社会科見学で行った国会議事堂で、廊下をすれ違った女性の国会議員に何人かの同級生が気づきざわざわしました。「〇〇先生のお母さんだ!」。その人は、小学校時代の担任のお母さんでした。
何人かの呼びかけに、その女性議員は振り返り、私たち高校生にこぶしを突き上げるポーズをしてくれました。

小学校でこぶしを突き上げたのは、当時日本女子大学で教授をされていた一番ケ瀬康子さん。社会福祉学の専門家として活躍されていました。
国会議事堂でこぶしを突き上げてくれたのは、森山真弓さん。女性上級職員第1号として労働省に入省、労働省局長時代に男女雇用機会均等法の草案作りにも参加されました。その後国会議員となられたのち、環境庁長官、官房長官、法務大臣を歴任されました。
 
こぶしの意味
今も時折、一番ケ瀬さん、森山さんのこぶしを突き上げた姿を思い出す時があります。
 一番ケ瀬さんがこぶしを振り上げたのは1980年代後半、男女雇用機会均等法が成立し、就労における機会の平等がようやく叫ばれるようになった時代です。それまで女性は就職をしても結婚、妊娠を機に退職する「寿退社」が当たり前の時代でした。そんな時代に大学の教授として、どんな思いで小学生にこぶしを突き上げたのか、その後私は何度も「その理由を聞いてみたかった」と思うことになります。
 
森山さんが高校生たちにこぶしを突き上げて見せてくれたのは1990年代半ば。セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)の問題や女性の管理職の割合をもっと高めよう、という声が上がり始めた時代です。
 
それから25年以上が経ちましたが、今でもふと、あのときの2人の姿を思い出します。その度に「今の状況はどうだろう?」と自分に問いかけています。
 
「今は、どうなった?」
 残念ながら、まだまだガラスの天井は厚く、女の子や女性は機会の平等どころか、男の子や男性と同じスタート時点に立ったとしても、足下は穴が掘られ、その先はでこぼこ道のままです。
 
「女性が社会で活躍する機会が増えると、『女性なのに』すごい、というような言い方がされるけど、男性が出世する場面でわざわざ『男性なのに』すごいと言われることはありません」
「過去・現在での成功例が少なく、存在しているはずの出入り口が狭く感じます」
「母は、お義母さんから、『仕事をするのは娘が中学生になってから』と言われ、私が中学生になった時に仕事を始めようと思った時には、年齢も40歳でパートとして働くしかなかった。今も同じ職場で働いています」
 
これは、非常勤講師をしている女子大学で、学生が書いてきたレポートの一部です。私たちの社会は、今なお、「女だから」という呪いの言葉でがんじがらめになり身動きが取れずにいる人も多くいます。
 
一方で、社会は少しずつ、変わろうとしています。SNSを使ったキャンペーンや政治に興味を持つ若い人たちの存在、そしてその声に耳を傾けようとする大人や社会もいます。
 
ジェンダー・ステレオタイプから解き放たれ、もっと自由に生きる!
今年、プランでは日本事務局創立40周年を記念し、合同出版より「おしえてジェンダー! 『女の子だから』のない世界へ」を出版しました。執筆を担当した私が書きながら感じていたのは、「私たちはもっと怒っていい」「これは個人の問題ではなく、私たち全員の問題」ということでした。

痴漢の被害を受けるのはスカートが短いから?
暴力を振るわれるのは、私が悪いの?
医学部の合格点が女の子だけ高かったのは、女の子が医者に向いていないから?
夜中に1人で道を歩いちゃいけないの?
 
かつて私が目にした人生の先輩たちのこぶしがちらつきます。
今、そのこぶしは、SNSの投稿やキャンペーン、政策提言といった様々な形で受け継がれています。
 
ジェンダー平等を完全に達成した国や地域は世界のどこにもありません。
達成までに100年はかかるという試算もありますが、私たちは待っていられません。
 
先輩たちのこぶしのバトンを引き継ぎ、行動するために何ができるのか、引き続き考えたいと思います。

書籍出版イベントを開催します。
2023年6月21日(水)/19時30時スタート、20時30分終了予定
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