見出し画像

信頼はするが尊敬はしない|仕事道楽 新版――スタジオジブリの現場

宮﨑駿、高畑勲、鈴木敏夫。

3人がスタジオジブリで映画を作りはじめて30余年。解散を考えるレベルの衝突もあったそうだが、なんだかんだ続いてきた3人の関係。毎日顔を合わせて、会話して、仕事して。30年間変わらず続いている。

うまくいってるかどうかは本人たち以外知る由もないが、大ヒット作を創り続けてきた経歴だけ見ても、その関係性はきっといいものだと思う。

仕事道楽 新版――スタジオジブリの現場 (岩波新書)|鈴木敏夫

長く関係が続いてきた理由について、『仕事道楽 新版――スタジオジブリの現場 』(岩波新書)のなかで宮﨑駿さんと鈴木敏夫さんの会話がある。

「鈴木さん、分かったよ!」
「何が分かったんですか」
「おれとパクさん〔高畑勲氏〕と鈴木さんが、ずっといっしょにやってこれた最大の理由がわかった」
「何なんですか」
「お互いに尊敬し合ってないこと」

この会話について、鈴木さんは

「尊敬していたら、いっしょに仕事できない」というのはぼくもまったく同感でした。遠慮会釈なく、存分に言いあうことで仕事しているんですから、「尊敬」という言葉は入り込む余地がない。「尊敬」すると「遠慮」が生じますからね。
ただ、重要なのは、言いたいことを言って、それがそのまま受けとられること。不信感をもってきかれると、違って伝わってしまう。そのまま受けとめてもらうための信頼関係は必要です。つまり、信頼はするが尊敬はしないという関係。

と書いている。

同書のなかには、宮崎さんが高畑さんを罵倒したり、褒めたり、悔しがったり、逆に高畑さんが宮崎さんを〜というシーンがいくつも書かれている。

その関係性がとても羨ましい。誰かと遠慮なく言い合い、競い合う関係なんて、自分にはない。

信頼関係構築計画

信頼と尊敬。

意識しないとごちゃ混ぜになりそうな二つは、きちんと独立している別個の概念で、それは立つ場所の違い。

尊敬は相手を自分の上に立てている。だから「遠慮」が生まれる。信頼は同一線上。「遠慮」はない。同じ高さでものを見て、言い合うことができる。
さらに言えば、尊敬は一方通行で成り立つ。しかし信頼は、相手も自分を信頼していること前提で成り立つ。(恋と愛の違いみたいなことだろうか)

何を当たり前のことを書いとるんだと思うけど、実際に信頼関係を築くのは難しい。当たり前のことほど難しいのが世の常。世の常ハードル高い。

叶うか分からない理想を追って消耗するよりも、端から諦めて不信感を抱きながらだましだまし日常を過ごすほうが賢いかもしれない。

だが、自分も宮﨑高畑鈴木のようになれるんだったら、たとえ茨の道でも、誰かと信頼関係を築きたい!と強く願うのであれば、まずは適当な人を見つけて「こいつを信頼する」と決め打ちしてみたら、何かが始まるかもしれない。

形から入るというやつだが、もし30年続けられたとしたら、それは本物だ。相手が自分を信頼してくれるかどうか分からず不安になることもあるだろうが、それは神のみぞ知る話なので、とりあえずこちらから信じてみよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?