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ガンプラ啓発活動06 嫁の断捨離

その日家に帰ると

BS朝日の「ウチ、“断捨離”しました!」が放映されていた。嫁と大福がけらけらと笑っている。


で、

なんとなくワタシもその横で一緒にみることになった。そうなった。



因みに、大福というのは嫁の愛鳥の名前だ。

白くてモフモフな文鳥を嫁がそう名付けた。

私はキュベレイと呼んでいる。

経緯はこちらを参照。



番組は、「やましたひでこ」という断捨離の達人が

モノを捨てられずに悩む依頼者のお宅でばっさばっさとものを切り捨てていく番組だ。



ワタシはこの「やましたひでこ」なる人物が嫌いだった。

もともとあまりテレビを見ない方だが、嫁が良く見ているので、この番組はなんとなく知っていた。


よそのうちにずかずかと上がりこみ、右往左往しながら、悩む依頼者に向かって

「こんなものいらないわよ!」

「すてちゃいなさいよ!」

などと吐き捨てる。

なんと居丈高で嫌な女なんだろう。

そんな風に思っていた。



しかし、テレビ番組というのは怖いもので、ところどころに見せる彼女のハートフルな発言から、彼女のイメージが番組によって編集されたものだと気付く。なんでもメディアを鵜呑みにしてはイケマセンな。特に派手なものや面白そうに作ってあるものは要注意。





それはともかく。

いつになく、嫁と大福が楽しそうなので、

今日の依頼者はどんなん?

と聞くと

今日は、旦那の遺品整理よ。

と嫁が言った。

なんだか楽しそうなのがイラっとする…。



依頼者の女性はもう70に近いようだ。

10年近く前に逝った旦那の膨大な遺品を整理していた。依頼者の女性が、自分で番組に依頼したようだが、いざとなると旦那との思い出の品が捨てられないようだ。


そりゃそうだろう。

娘たちからも「早く捨てなよ」などとなじられながら、悲しい顔をしている。


なんて娘たちだ…


依頼者の女性は、きっと、亡くなった旦那との思い出を軽んじられたようで辛いのだろう。

少し涙ぐんでいる。

見ているこっちも泣けてくる…。

番組だか何だか知らんが、今からひっくり返してやればいいのに。

やっぱりやめるって。

こんな番組を見て、うちの嫁は一体何が楽しいのか?



確かにこのうちは、みるからにゴミ屋敷だ。

足の踏み場もない。

年老いた依頼者が、足の踏み場を間違えて捻挫でもしたら大変だ。


旦那の遺品整理。
そうだね。


不要なものは捨てないとね…。

奥さんは生きているんだから。

次のステージに行けないもんな。

それは分かる。

でもな…



なんだかとても嫌な気分だ。

…。

…。



あのさー



言うつもりはなかったが、何の気なしに口からこぼれてしまった。

ママ(嫁)が死んでも僕は遺品を捨てないと思うよ。かさばるもんでもないし、簡単にはすてられないね。

僕には。



すると間髪入れずに帰ってきた答えがこれだ。。



私は捨てるわよ。

だって、いらないじゃない。



ほう。



そうくるか。

まあ。そうだ。

そんなものがあると、次のステージにいけないのは分かると言った。

君が幸せになる為に必要でないものは捨てないといけないな。

それが断捨離というものだ。



だけどさ。

だけどもさ。

ちょっとあっさりし過ぎじゃないのか…?



答えは予測できたが聞いてみることにした。

「チナミニ、ナニカラステルノ?」



ガンダムよ。(即答)

あれって燃えるゴミ?





間髪入れずに返ってきた…。

お、おう…。





袋にそのまま入れていいの?





どうかな…。市役所に聞いてみようか…



じゃねぇよ!!!

やはり!

やはり、捨てるつもりだったかっ!

恐ろしい…

恐ろしい嫁だ。

聞きたくはないが、この際だ。

はっきりさせておこう。



…。



じゃあさ、積みプラとかどうすんのよ?





あれは捨てないわよ。

だって売らなきゃ。





しっかりしている。

あれが売れそうだと気付いているところが怖い。

夫婦の何気ない会話の中には、多くの真実が紛れ込んでいるという。

今、ちょうど芯くったかんじだ。

彼女はたぶん僕がいなくても生きていけるだろう。

やるな。





てゆうか、

旦那さんが、大事にしてたものだよ。

旦那さんがどんな気持ちでガンプラ作ってたかとか想像しないの?

「わたしも作ってみたらあなたの気持ちに近づけるかしら…」

とかなんないわけ?





なんないわよ。

じゃああなた、私が大好きな2時間サスペンスみて、私の気持ちをトレースするわけ?





それはしない。





ほら。おなじことよ。





えー おなじかな?





おなじよ。





一体も残さないの?





一体も残さないわよ。





工具とかも?





工具とかも。





ザクも?





ザクも。





νガンダムも?





νガンダムってなによ?





け、結構たくさんあるよ。





全部よ全部。なにもかもぜ・ん・ぶ。





なんで?





なんでって…。

あなたの趣味の中でガンダムが一番いらないじゃない。

私、思い入れがまったくないのよ。

そこって。

ほんとにいらない。





…。

…。





なるほど。

なるほどね。

そういうことね。

ふむふむ。

救いはありました。



そうか。

そうか。

知らないもんね。ガンダムのこと。

そりゃそうだ。

知らないんだもん。

知ってたら捨てられないよ。ガンダムは。

そうか。

そりゃ僕が悪かった。

週末、一緒にユニコーンガンダム見よう!





なんで?

絶対嫌よ。

時間がもったいないじゃない。





ぬぬぅーー!

地獄におちろ!

このあほ嫁めっ!!





そうなった。

結局その日はそうなった。



…。





作戦を練り直すしかあるまい…。

思い入れがないものはすべて捨てられる。

ガンプラが既にロックオンされていたとは…。

積みプラを値踏みしている嫁のすがたが私には見える。

衝撃の事実だ。



まずは、ガンダムとは何かを理解させねばなるまい。

なにか良い知恵はないものだろうか。

しかし、嫁はザクのことは知っていたな…。

全く知らないわけでもないのか…。

ならばシャアのことは知っているのか?

この辺りから探りを入れてみることにするか。





ガンプラ啓発活動は果てしなく続きそうだ…。

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