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隣の家の少女

"あの日、〈岩〉の上で、わたしはミーガン・ロクリンという人物ーふたつ年上で、妹と、秘密と、長くのばした赤毛をもつ見知らぬ女の子ーの形をした思春期の欲情と出会ったのだ。"1989年発刊の本書は実際の事件からインスピレーションを受けたキング絶賛の裏スタンド・バイ・ミー、最悪へと突き進む鬱小説。

個人的にはいつ買ったのかわからない積読本の中から無造作に手にとったのですが。

さて、そんな本書は41歳になり、社会的には成功しているも過去を今でも引きずっているデヴィッドが【少年時代の事件を回想する】構成になっていて、冒頭こそザリガニを小川ですくっているところで歳上の美少女と出会う。と爽やかな青春小説仕立てで始まるも、章を重ねるごとに不穏さを増していき、虐待、監禁と【ヒーローは決して登場しない】救いのない展開、ついには後味が悪すぎる結末を迎えてしまうわけですが。

まず、本書を読み終えた後に、描かれていることが、実際に1965年にインディアナ州で起きた『シルヴィア・ライケンス事件』をもとにしていることを知り、やっぱりよせばいいのにネットで調べてしまって精神的に追加ダメージというか、人間に対する空恐ろしさを覚えてしまった。

また、感情を寄せるのは難しくもデヴィッド"少年"目線に【寄り添うことを共有(強制)させられる】本書は読みやすくも、だからこそ目前の憧れのヒロインを救えない無力さを【何度もシーンを変えて繰り返し突きつけられる】わけで。パターン化された小説の登場人物、少年像に慣れてしまった読者の一人としては悔しくも?効果的に人間のダークな部分の【リアリティ描写ができている傑作】と認めざるを得なかった。

暗さと向き合う心理小説、凶悪犯罪を下敷きにした小説が好きな人にオススメ。心が弱っている人にはオススメしません。

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