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猫のいる日々

"十五匹いる家の猫には、喧嘩をしないように、食事の時、十五の茶碗を並べてやる。猫はなかなか大食家だし、先を争うから整理が大変である。大猫子猫十五匹だ。外から入ってきた人は、この食事時の壮観を見ると吃驚する"1994年発刊の本書は鎌倉を愛し、何より猫を伴侶とした著書の猫百態。

個人的に大の猫好きなことから、これまで著書の本は『鞍馬天狗』シリーズも含めて未読でしたが初めて手にとってみました。

さて、そんな本書はその七十五年の生涯で五百匹以上の猫を飼う。。というより引き受け『次の世には私は猫に生まれてくるだろう』まで心を入れ込んだ著書の猫に関する短いエッセイ約六十をメインに小説一篇、童話四篇が収録されているわけですが。

猫好きを自称する端くれとして?これまでも国内外の猫に関する本を読んできましたが。敬愛する内田百閒のおかしみ溢れる『ノラや』とまた違う趣きですが、私的には【双璧をなす一冊】という感じの素晴らしい読後感でした。

その主な理由としては(巻末解説から引用すれば)"猫を愛しながら、決して溺れたりはしない。"【作家としての距離を置いた目】つまり観察眼が心地よく。そして『飼猫自慢』ではない『共同体の仲間』として深い教養や豊かな人生経験を下敷きに、猫たちを過剰ではなく【力を抜いた感じで巧みに描写している】のがとても良いわけで。うわーわかる!と首をがくがく頷きながら(脳内)楽しませていただきました。

しかし『猫を5匹までにすることや、猫に対して贅沢をさせないことを遺言で残した』が、夫人も猫好きで守られなかった(笑)とか、本書内のエッセイでも出てくる(生前から猫好きで有名だったからでしょう)様々な人たちが自宅周辺を不審にうろついては(!)【猫を不意に投げ込んでくる】とか、さらりとエピソードも凄まじい。

猫好きな人はもちろん、すぐれたエッセイ集としてもオススメ。

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