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魯迅の愛した内山書店

"こんな時代だからこそ、内山書店や魯迅のことを知らねばならない。多くの中国の人びとは上海魯迅記念館に再現されている内山書店を訪ね、日中友好の歴史を学んでいる"2014年発刊の本書は大正から昭和初期の上海で重要な文化サロンであった『内山書店』の様子が伝わってきて興味深い一冊。

個人的には、2019年現在。連日の香港やウイグル自治区を巡るメディア報道の影響で、中国という国自体に対するイメージは公平とは言えず、むしろ【悪い方に傾いている】のを自覚しているのですが。こういった時こそ、同じ人と人として【草の根日中友好に尽力した】内山書店の夫妻から学ばねば。と本書を手にとりました。

そんな本書は『京都民報』という週刊誌での1年間の連載を編集、夫妻の生い立ちや馴れ初めから、上海で【妻の内緒として始まった書店経営】が【谷崎潤一郎と中国青年たち】あるいは【魯迅と日本文化人】といった交流と共に発展し、あるいは時代の激動に巻き込まれていく日々を丁寧に描いているのですが。史実や資料の列挙というよりは【夫妻の人柄に寄せてかいている】ので読みやすかった。

一方で『京都民報』という新聞が【京都の日本共産党の機関紙】という事もあり、客観性に関しては、【やや不足している印象も受けましたが】それはそれ。正確さというよりは【内山書店での日中交流の日々】を知りたいだけの私にとっては、必要十分な一冊でした。

上海を訪れる予定のある誰かへ。また本を売る場所としてだけでなく【文化交流の場】としての本屋の在り方に関心のある誰かにもオススメ。

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