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猫町 他十七篇

"だが次の瞬間には、何人にも想像されない、世にも奇怪な、恐ろしい異変事が現象した。見れば町の街路に充満して、猫の大集団がうようよと歩いているのだ"1935年発表の表題作他、短編小説に散文詩、随筆を収録した本書は日本近代詩の父として知られる著者の魅力が様々に感じられる小品集。

個人的には、友人も参加している某日本最大規模の読書会『猫町倶楽部』の名前の由来がこちらの表題作からとられているときいて、興味本位で手にとりました。

そんな本書は三篇の短編小説、十三篇の散文詩、二篇の随筆が著者の30代末から50代までの執筆期間において収録されているわけですが。ノスタルジックにしてデカダンス。前衛詩人としての著者の複雑な心境が様々に垣間見える様で楽しかった。

また、親交のあった芥川龍之介を慰めるつもりで声をかけて怒らせた様子にニーチェを重ねて『そんなものが何になる!そんなものが何になる!』軍人と比較して記しているのにも著者の気弱な性格、戦時中の不安な気持ちが感じられて、これまた興味深かった。

マンドリンにカメラに手品と多趣味にして孤独を愛した詩人の人柄を感じたい誰かへ。また気軽に読める作品集を探す誰かにもオススメ。

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