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愛人ラマン

"十八歳でわたしは年老いた。だれでもそんなふうなのだろうか、尋ねてみたことは一度もない。"1984年発刊、70代の著者がベトナム時代における少女時代を回想した自伝的作品にしてベストセラー、映画化もされた本書は、映像的に中国人男性と家族との関係を描いたセンセーショナルな一冊。

個人的には中国男性をレオン・カーフェイ、少女役をジェン・マーチンが演じ、官能的なシーンの多さからR18指定で話題にもなった映画の方は鑑賞済であるものの、著者自身は【作品の完成度に不満であった】と知り、未読であった本書を手に取りました。

そんな本書は【映画のパッケージと同じ構図】の著者自身の18歳の時の顔写真、そして冒頭の十八歳でわたしは年老いた"から始まる文章が強く印象に残るわけですが。1929年当時の仏領インドシナ(ベトナム)を舞台に、少女が15歳の時に出会った資本家の息子である中国人男性と出会って17歳の時にフランスに帰るまでの情事の日々、そして【映画ではあまり触れられていなかった】母親や兄弟との関係性を映像的、抽象的に描いた本書。当初は写真集としての出版が構想されていたからか。描写は美しいものの、率直に言って詳細まで語られない【断片的な描写】の数々に最初は戸惑いました。

一方で、関係性の深い『北の愛人』の存在や、著者自身の境遇をある程度知った上で再度、本書と向き合うと、70代になって、やはり終活的に?過去の自身の恋愛を何かしらの形にしたかったのかな。とかを【本書後半の美しいシーン】フランスに帰る船内で"星のきらめく空の下でショパンの音楽が突然鳴りひびいたとき"少女が中国人の男を"愛していなかったことに確信をもてなくなった"と涙しながら悟る場面に重ねて感慨深い気持ちになりました。

映像的な小説を探す人、過去の幼い時の恋愛を重ねて読みたい誰かにもオススメ。

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