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トム・ソーヤの冒険

"かくしてこの物語は終わる。これはあくまで少年の物語であるからして、ここで終わらねばならない。これ以上先へ行ったら、じきに大人の物語になってしまうだろう。"1876年発刊の本書は、アニメ化やゲーム化はもちろん、モデルの街となったハンニバルの地元のお祭として『塀塗り競争』も続く、世界中で愛される冒険娯楽小説。

個人的には、続編にして【文学史的にはこちらの方が概ね評価の高い】『ハックルベリーフィンの冒険』の読書会を開催した際に、そう言えば。と何十年ぶりに本書を思い出して再読してみました。

さて、そんな本書は多くの方がご存知の通り、ミシシッピ川のほとりの小さな街を舞台にして、主人公のトマス・ソーヤ少年(トム)が、ハックルベリーフィン(ハック)や仲間たちと様々な"冒険"を繰り広げるのですが。外見や年齢などか描写されず【意図的に普遍性のあるキャラクター】として描かれているトムに以前読んだ時はかっての自分の少年時代を重ねて【懐かしく思った】のですが。再読した今回は、お節介ながら今の子供にとっては彼らの牧歌的な姿は【ファンタジーもしくは失われた世界】と感じるのではないか?とか邪推してしまったり。

一方で続編の『ハックルベリーフィンの冒険』で、より明確に描写されていますが、少年少女の冒険娯楽小説なれど【人種問題や宗教的狭量さ】を本書でも【皮肉的ユーモアをもって背景的に描いている】事を今回の再読を通じて初めて気づき。逆説的ですが、この辺りが続編になって、より前景的になったのか。としみじみと感じる所がありました。

子供時代に山や海で秘密基地ごっこや海賊ごっこをした大人たちへ。あるいは普遍性のある冒険娯楽小説を探している誰かへ。

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