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パンツをはいたサル

"近代社会、未開社会を問わず、ヒトなる動物は、生存や種の維持に必要なものを処分して生きている、不自然な生き物だ。また、ヒトは、自分の個体だけで生きていくことができない本能が破壊された生き物である"1981年発刊の本書は、ニューアカ・ブームを代表した平易な言葉で、また【人間は、20%の人間性と80%の動物性から成る】との動物行動学的な認識から、生物としてのヒトを考察し、語り尽くしている一冊。

個人的には、とは言えニューアカ・ブームは同世代というよりは、ちょっと上の世代なのですが、同じくブームを代表する浅田彰の『構造と力』を最近あらためて読んだ事もあり、本書に関しても手にとってみました。

さて、そんな本書は"人間はサルが裸になったものではなく【サルがパンツをはいたものだ】"として、人間について様々な分野を越境して、1章から7章までおカネや神経症、法律や道徳といった項目でわかりやすく語っているのですが、流石に【当時の時事ネタやサービス精神豊かにパンツを連発する】著者の語り口には昭和らしさというか時代を感じざるを得なかった。(逆に言えば、時代の雰囲気が伝わってくる貴重な資料とも言えますが。)

一方で、こちらも(調べたわけではありませんが)些かの怪しさも含みつつも開陳される【著者の博学さ、また分野を越境した自由自在な考察】に関しては、今と違って手軽にインターネットで調べられる時代以前なので唸らざるを得ず、知的好奇心を刺激される読後感でした。

ニューアカ・ブームを懐かしく感じる誰か、あるいは越境して考察する大切さを実感したい人にもオススメ。

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