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猫とともに去りぬ

"『それじゃあ、猫という名前のついた星は?どんなに小さな星でもかまわないから』『ありませんねえ』(中略)『犬や熊にまで星座を与えておいて、俺たち猫にはなにもなしかい。ひどい話だ』1973年発刊の本書は表題作他16編を収録した幻想的かつ風刺的、スピーディーかつ知的ユーモア溢れる一冊。

個人的には、国際アンデルセン賞を受賞し、20世紀イタリアにおける最も重要な児童文学作家とみなされている(らしい)著者の作品は初めて読んだのですが。読み進めながら思い出していたのはイタリア人友人が自分たちの気質について語った言葉『予定通りの日本と違って、予定通りいかないのが日常だからアドリブ力がかえって高い』で。

まさに本書には様々な個性豊かな人物が次々と登場しますが、何というか【細かな理屈は二の次、遥か彼方に置き去りにして】思いついたらすぐ【気持ちのままに生きているキャラクターばかり】で、何とも清々しい読み心地でした。

また表題作の様に、猫になったり、魚になったり、バイクに恋したり。と様々な非日常的な物語が起きますが【そこに突っ込むというよりは】音楽が終始奏でられるショートムービーの様に【リズミカルに感じながら】ときおりの(著者のジャーナリスト経験を活かした)現代社会へのアイロニーに【くすりとしながら】楽しむ作品であるように思いました。

ファンタジー小説の優れた短編を探す誰かや、子供の成長にとって欠かせない、他者への優越感からでは決してなく【創造的、内発的な笑いの素晴らしさ】を楽しく伝えたい方にもオススメ。

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