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カモメに飛ぶことを教えた猫

"空に向けたその澄んだ黄色の瞳をぬらすものが、雨なのか、涙なのか、わからなくなるまで、やさしく気高い、港の猫の中の猫であるふとった真っ黒な猫は、いつまでも、空を見つめていた。"1996年発刊の本書は異なる者同士の愛や友情を描くハートフルな世界的ベストセラー。

個人的には猫好きであること、また殺伐としたニュースに疲れを覚えていたことから癒しを求めて手にとりました。

さて、そんなチリのビノチュトの軍事クーデターによる恐怖政治下で投獄経験もある著者による本書はヨーロッパでは『八歳から八十八歳までの若者のための小説』とうたわれ、特にイタリアで大きな話題となったらしいのですが。ドイツ北部の港町、ハンブルクを舞台に黒猫のゾルバが瀕死のカモメに出会い誓った『三つの約束』。それを果たすために"大佐"や"博士"といった猫の仲間たちの協力を得て奮闘し始めるユーモラスに、スリリング、そしてときにはしっとりとした物語になっていて。

まず日本では2019年に劇団四季の26年ぶりの新作"ファミリーミュージカル"化したらしいのも納得の無駄なく、また【短い章立てでテンポよく進んでいく展開】は、大人はもちろん子供と一緒に読むのにも大いに向いているのではないかと思いました。(全160ページをあっという間に読み終えることができます)

また、著者自身の辛い体験をどうしても重ねて考えてしまいますが。本書に希望を込めて描かれている主義主張、文化、種の違い。そうした【バックボーンが『異なる者同士』が尊重しあい、心を通わせていく】内容は、コロナ禍で様々な分断が起きている今、とても心に響くものがありました。

猫好きはもちろん、子どもや友人に贈るプレゼントを探す方にもオススメ。

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