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神の裁きと訣別するため

"人間に器官なき身体をつくってやれるなら、人間をそのあらゆる自働性から解放して真の自由にもどしてやることになるだろう"1948年録音された表題作を含む本書は"残酷劇"を提唱した演劇人、詩人による神、糞便、ヴァン・ゴッホ、独創的なテキスト的実践、魂の叫び。

個人的には全く知らなかった著者ですが、芸術好きな方に勧められて手にとりました。

さて、そんな本書は。。と要約的な文章を書きたいところですが、ラジオ放送のために用意されるも検閲騒ぎとなった表題作にして著者最後の作品『神の裁きと訣別するため』。そしてヴァン・ゴッホの展覧会時に掲載された学者による"ヴァン・ゴッホは先天的な精神病"という論文に抗議するために(おそらくは自らの入院経験を重ねて)書き上げた『ヴァン・ゴッホ 社会による自殺者』他が収録された本書に掲載されているテキストは【要約説明するには非常に難解】で、むしろ【シュールレアリスムー理性的解釈を拒み、夢や幻想といった人間の潜在意識を表現する】活動に参加していた著者からすれば意思的に拒まれている気がするので、そこは割愛。自分が感じたままの感想を書きます。

まず、表題作『神の裁きと訣別するため』に関しては、1945年にようやく第二次世界大戦が終結するも今度はアメリカと旧ソ連(現ロシア)との冷戦状態に突入した世界情勢、そしてアメリカへの失望【大量消費文明に対する警鐘から出てきた】SF的な言葉なのかなと。

また『ヴァン・ゴッホ』に関しては、自身の9年間にわたる精神病院での監禁生活、その間にはナチスドイツによるフランス占領期間を含むことから過酷さは相当なものであったであろう困難が、自身の肉体を通して【言葉として吐き出さずにはいられなかったのかな】と思いました。

ただ、全体的に訳者の苦労が伺える本書ですが。シンプルに著者『アントナン・アルトーは狂人か?』と問われるとノー。確かにテキスト、あるいは収録されたインタビューを読む限りは支離滅裂に見える部分があるとは言え【もがいている知性、理性が確かに感じられるから】ドゥールーズやガタリといった流れや実際はよくわかりませんが。あと、多用される糞便や精液から?何故かジョルジュ・バタイユの『眼球譚』を連想しました。


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