見出し画像

死にたがりの君に贈る物語

"『緑ヶ淵中学校の参加者で集まって生活し、あの世界を再現したいと考えています。俺たちファンの手で物語の結末を探ってみませんか?』"2021年発刊の本書は著者記念すべき40冊目。TIKTOKでも話題になった、未完に終わった小説の結末をファンたちが廃校で探る青春ミステリ、再生物語。

個人的には「推しや譲れない何かがある人は絶対に読んでください!!」とTikTokでけんごさんが絶賛していたのを観て、気になって手にしてみました。

さて、そんな本書は全国的に熱狂的なファンを持つ、アニメ化や映画化もされた人気シリーズ『Swallowtail Waltz』の作者にして、年齢も性別も非公表、編集者にすら秘密主義を貫く覆面作家ミマサカリオリのSNS上での訃報発表、それにショックを受けて飛び降り自殺をはかった少女、中里純恋の様子をプロローグに舞台は一転。ミマサカリオリの会員制ファンサイト『緑ヶ淵中学校』の古参メンバー、広瀬優也が、サイトの中心的存在、塚田圭志の『残ったファンたちで物語の結末を探りませんか?』と作品の登場人物とイメージが重なる7人と【山中の廃校での無期限の共同生活】を提案され、受け入れたことで物語は動き始めるのですが。

まず、作中のミマサカリオリのような作家はもちろん、特定の俳優やミュージシャンの推しというか、熱狂的なファンになった経験がない私には、率直にいって本書の設定や登場人物たちに【共感を覚えるのは難しかった】のですが。一方で、現代版『森の生活』あるいは『ゆるキャン△』的に集まった人たちが【共同生活で次第に打ち解けていく】様子は青春的な瑞々しさに溢れていて楽しく読ませていただきました。

また、集まった7人の熱狂的なファンたちは(毒舌ばかりの1人をのぞいて)それぞれに隠し事はあっても優しい人たちばかりで【それぞれに再生していく姿】に勇気づけられるのですが。中では特にプロローグで飛び込み自殺を図った最年少の中里純恋が、みんなに『守られるひ弱な存在』から譲れない大切な小説のために『意思を貫く強さをみせていく』【後半展開はなかなかに胸熱】だったように感じました。

けんごさんと同じく【推しや譲れない何かがある人】はもちろん、読みやすく優しい青春ミステリを探す人にもオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?