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私の文学史: なぜ俺はこんな人間になったのか?

"つまり、魂に形を与えるときに、その言葉はオートマチックにしたくない、抵抗したい。これが、外側の言葉が、文学が必要だと、自分が考える理由なんですね"2022年発刊の本書は独自の文学世界を創造し続ける著者初の自分語り。

個人的にも、著者ファンの一人ということもあり楽しみに手にとりました。

さて、そんな本書は青山のNHK文化センターで2021年から2022年1月まで12回で行われた講座『作家・町田康が語る〈私の文学史〉』をもとに加筆・修正、編集されたもので。これまで『自分語りはみっともない』と避けてきた著者が【自分の話をとくとくと、何の意味もないことを意味あるように言ってもええかなあ】と、原点ともいえる『子どもの頃の文学、読書体験』から始まり『これからの日本文学』まで。朴訥ながらも誠意ある内容で語っているのですが。

まず、著者の読書量の半端なさを背後にちらほらと感じさせながら語られる、古典や詩、エッセイ、翻訳話。そして同じく作家の【井伏鱒二と太宰治、筒井康隆や北杜夫に向けられた関心】はとても興味深く、新鮮でした。

また、一貫して『言葉』に対するこだわりや【言語化しないままに(気合!)わかる感覚】を大切にする姿勢は、とかく何でもわかりやすい『オートマチックな言葉』が溢れかえる現代社会に辟易している私にはとても共感できるもので。うまく言葉にできませんが(笑)そうそう!と勝手に熱狂してしまいました。

著者ファンはもちろん、文学や創作活動に関わる方、言葉を大切にしたい方へオススメ。

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