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活動寫眞の女

"僕はどうかしていたのかもしれない。だがそのとき僕は、マキノ省三が、溝口健二が、山中貞雄が、僕の口を借りてそう言っているような気がしてならなかった。"1997年発刊の本書はドラマ化もされた京都、日本映画愛たっぷりの青春小説。

個人的に京都在住、しかも映画好きということもあり、手にとってみました。

さて、そんな本書は全共闘運動が盛んだった昭和44年、東京生まれだが東大入試が中止されたため仕方なく京大に進学した熱心な日本映画ファンの『僕』が、京都出身、どうやら公家の末裔らしい友人の清家に誘われる形で太秦の撮影所でバイトを始めたある日、撮影現場で絶世の美女と出会うのですが。

まず、あらすじ紹介からもわかるように、これでもか!という位にサービス精神旺盛に【東京"外"から見た『京都』イメージ】がコテコテに盛り込まれていることに驚きと、一周まわったかのような新鮮さを覚えました。

また、実名を交えて紹介されるテレビより格上だった日本映画黄金時代、また"フィルムを交換するための幕間を、ほんの少しだけお許し願いたい"といった【映画をイメージさせる語り口】は非常に好感を覚えるものの、それらが前面に出すぎて『青春小説』と言われると【淡白な主人公、ありがちなストーリー展開】と、やや取ってつけたかのような粗さを感じました。(ドラマの方はどうだったのだろうか?)

京都大学、太秦の撮影所に思い入れのある方や、昭和40年代の学生運動を懐かしく思う方にもオススメ。

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