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雪とパイナップル

"絶望のなかに、新しい、小さな希望が見えた。『子どもの涙は、人類すべての悲しみより重い』初めてこの放射線に汚された国を旅したときに聞いた言葉がよみがえってきた"2004年発刊の本書はチェルノブイリ原発事故で被曝した少年と看護師ヤヨイとの心の交流を描いたノンフィクション絵本。

個人的に主宰する読書会で参加者にすすめられて手にとりました。

さて、そんな本書は1986年のチェルノブイリ原発事故の際、風下に位置するベラルーシ共和国で放射能の雨を浴びてしまい、10年後に急性リンパ性白血病してしまったアンドレイ少年。医師である著者は様々に手を尽くして少年に治療を施すも2000年についには亡くなってしまうのですが。

その後【少年のおかあさんは、今どう思っているのか】と気になって、少年の家族を訪ねたことで、闘病中で食欲のなかったアンドレイ少年のために【雪の町の中をパイナップルを探し求めた】看護師のヤヨイの話をおかあさんから聞くことになるのですが。

中学校の教科書にも掲載されているらしく、既読な方も多いのではないかと思われる本書。でも個人的には2022年に初めて読んで。ジャーナリストのスベトラーナ・アレクシエービッチがチェルノブイリ原発事故を経験した人を3年にわたって取材して1997年に発表した『チェルノブイリの祈り』を直接的に思い出したり、あるいは東日本大震災での福島原発事故、またはロシアにより進行形のウクライナ侵略を重ねながら読みました。

そして、様々な苦しみや悲しみが起き続ける世界ですが。著者が【悲しみを乗り越える力を探す旅】を通じて【幸せを目指しているプロセスの中に幸せがあるのかもしれない】と書いているように、例え無力であっても他者をイメージすること。また【許すこと、感謝すること、ほほ笑みあうことを】を忘れてはいけないな。と思いました。

子どもたちへの読み聞かせの一冊として、また人間関係等に疲れている大人にもオススメ。

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