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裸のランチ

"わたしは四十五歳で病から目覚めた。穏やかで正気で、比較的いい健康状態で。ただし、肝臓が弱り、この病を生き延びた者すべてに共通の、肉体をよそから借りてきたような外見になってはいたが。。"1959年発刊の本書は"ウイリアム・テルごっこ"による妻の誤射などのエピソードでも知られる著者によるポストモダン文学、ビートニクを代表する実験的ジャンキー小説。

個人的には、若い時に読んだ時は『小説』とは起承転結的に筋道がたっているのが当たり前と考えていたので、正直な話"わけがわからん"という印象だったのですが。主宰する読書会を通じて、ようやく【筋道がなく、理路整然としていない】ポストモダン文学がわかってきたので、再び手にとりました。

そんな本書は、最初に引用した冒頭の文書、そして最後の著者によるドラッグ紹介こそ、その危険性に警鐘を鳴らし、著者なりに毅然とした決別の姿勢を見せてはいるものの(もっとも、六十五歳から再び懲りずにヘロイン依存症になるわけですが。。)内容のほとんどは、ダダイズムからの『カットアップ技法』を流用し【偶発的な言葉選び、物語としては成立していない悪夢の様な映像的な文章】が続き、読み進めているうちに【自分自身がドラッグ中毒者になってしまったような感覚】になってしまいます。(ヨコハマの鋼鉄チ◯◯って一体。。)

また、そんなわけで。通常の小説の様に理由を見つけて(例えば、最後の伏線回収が素晴らしい!とか)【本書の魅力を具体的に語る事は難しい】のですが。"考えるな!感じろ。"(by ブルース・リー)があえて言えば、当てはまるのかと。(ただ、それにしては卑猥かつ現在からは差別的な単語、あやしい解説が繰り返し頻出するので、むむむといった感じでもあるのですが。)

定期的にノーベル文学賞候補に挙げられる覆面作家、トマス・ピンチョンにも続いていくポストモダン文学の流れを感じたい誰かへ。また相次ぐタレントの逮捕事件を見て、あらためてドラッグの危険性を理解したい人にもオススメ?

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