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暴政

"二十世紀のヨーロッパ史が私たちに教えてくれるものは何かと言えば、社会が破綻するのも、民主制が崩壊するのも、道義が地に堕ちるのも、普通の男たちが銃を構えて死の穴の縁に立つのも、何もかもありうるのだということです"2017年発刊の本書は気鋭の歴史家による暴政に抗うための20のレッスン『警世の書』

個人的には成田悠輔の『22世紀の民主主義』で本書が紹介されていたこともあり、興味を持って手にとりました。

さて、そんな本書は中東欧史、近代ナショナリズム、とりわけホロコースト研究で知られる著名歴史家が、当時のドナルド・トランプ元大統領の台頭を受けて緊急出版。世界に圧政の指導者が出現している『現在の状況に相応しい20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』と題したSNS投稿に示唆と歴史的なエピソードに富んだ文章をつけて編集、再構成したもので。

本書で挙げられている【今後の世界でまた大虐殺が起きうる可能性を予測した上での】ホロコーストの教訓。『被害者意識』『国家機能の喪失』『生存パニック』の3つは侵略戦争を継続中の現ロシア、プーチン政権にもあてはまる気がして恐ろしい気持ちになりました。

また本書を成田悠輔は『22世紀の民主主義』で"当たり前のことを書いている"と評していた気がしますが。確かに本書に並ぶ20のレッスンは『職業倫理を忘れるな』『自分の言葉を大切にしよう』『自分で調べよう』『きちんとした私生活を持とう』と、一見誰でも出来てそうで【そんなことで暴政に立ち向かえるのか?】といった気になってしまいますが。かえって、それでも【そこから始めないといけない】という、著者の強い危機感を感じました。

現在の政治情勢に不安を覚えている方に、また読書会の課題図書としてもオススメ。

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