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へらへらぼっちゃん

"わたしはそのような沸騰、或いは振動による力や意味をできるだけ多くのひとと共有したいと思っています。共感したいと思っています。共鳴したいと思っています。だからわたしが歌い、演じ、書くことはみな同じなんです。みなわたしにとっては音楽なんです。"1998年発刊の本書は独特な文体で書かれた著者初のエッセイ集。

個人的には著者と同じく大阪、特に南部に縁があるので勝手に親近感を覚えているのと、何より(好みがわかれる)すらすらしたおもろい文体がほんま好きなんで手にしました。

さて、そんな本書は解説で大槻ケンヂが言うてる様に、大御所になった今と違うてまだまだ駆け出しの作家。若くしてメジャーデビューするも自信作の売れ行きは鳴かず飛ばすのパンク歌手といった【ふわふわのモラトリアム状態の著者】がくすぶりつつ、ぐたぐたと昼間から(朝の時も)酒を飲みつつ、時代劇を観たり、また酒を飲みつつ、時代劇を観たり。たまに壁塗りバイトをしたり、バンド活動をする日々が描かれつつ、後半の約100ページ位は他の作家やミュージシャン等に向けて。最後はなんだかんだ言うて【セックス・ピストルズの再結成を喜んで】終わってるんですが。

まあぶっちゃけ、エッセイなんやし。内容自体は【冷蔵庫が大きいとろくなことにならん】とか生活の役にたちそうな事は何一つ書かれてないんですが。それでも芸術家らしい?時代劇はもちろん"ショッピングセンター"や若者の言葉遣いなど様々なことに【違和感を覚えて(屁理屈を)考えていく】姿には、流石の感覚つうか、とてもめんどくさくて【最高に好印象】でした。

また、同じく大阪出身のミュージシャンから作家へ。と著者と経歴が被る後発の川上未映子のデビュー随筆集『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります(そらすこん)』とも重なる世界観。ミュージシャン達ならではのリズム感で【操り、繰り出される大阪弁ベースの文体】は、憧れてしまって(でも書けなくて)パンツ一丁でうおおおと叫びながら走り出したくなるのですが。嫌いでもいい。誌上ライブとして、とにかくDon't think! Feel【考えるな、感じて】欲しい。

著者ファンにとっては原点的エッセイとして、また大阪や関西に縁のある方に特にオススメ。

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