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集まる場所が必要だ―孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学

"今、これまでになく必要とされているのは、どのような物理的および社会的インフラが、もっとも人々の役に立ち、もっとも人々の命を守り、支えてくれるかについて、インクルーシブな話しあいをすることだ"2021年邦訳の本書は人々の交流を生む物理的な"場や組織のかたち"を明らかにした良書。

個人的には周りの閉店話やオンライン化を横目に、それでもコロナ禍でリアルな場をあくまで運営し続ける1人として、ヒントを探して本書を手にとりました。

さて、そんな本書は1995年に多数の被害者が発生したシカゴ熱波の原因に、かっての集団生活を支えた社会的な結びつきが失われ、社会的孤立あることをつきとめた著者が、特別な災害時ではなくても、また二極化した現代社会において【民主主義をうまく機能させるためにも】平時における人々の交流を生む物理的、伝統的な場や組織。図書館や学校、遊び場、公園、運動場、プールといった公共施設、教会や市民団体、マーケットやサードプレイスといった『社会的インフラ』こそが【決定的に重要な役割を担っている】ことをアメリカ国内はもちろん、世界中の事例を紹介しながら主張しているわけですが。

個人的には2022年現在、主流となっている【SNSやオンライン上でのコミュニケーション】では言葉も記録され、他者によって変質させられてしまうことも多く。結果、意図せずとも『相互監視社会』になっているのではないか?と危惧し、コロナ禍でも。ただ一緒にいるだけ【非言語コミュニケーション、雑談の場】は大切。と、リアルな場【無料で長居できる】お店を開け続けてきた私としては、本書で紹介される事例、著者の主張するところ(現メタ、旧FBやスタバへのチクリとした非難も含めて)には共感しかなく、勇気づけられる読後感でした。

一方で、私自身は賛否はあってもメタバース『仮想現実』には今のところは可能性を感じ、それこそ【リアルとの対立じゃなくて】物理的、伝統的な場『社会的インフラ』になんらかの制約があって【どうしても集まることができない人々】をカバーする、補完的な役割を果たせるのではないか?と考えているのですが。そういった辺りについては本書では触れられておらず。残念というか著者の意見が聞けたら。と思いました。

コロナ禍で、物理的な場づくりについて色々と思っている人にオススメ。

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