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平家物語 犬王の巻

"で、それでどうなるのだ、と。で、それでどうなったのだ、と。こうした要求があるのだから、『犬王の巻』は走る、疾る。"2017年発刊の本書は実在の能楽師から着想を得た2人の少年の時空を超えた友情物語。

個人的には、先に鑑賞した本書原作のミュージカルアニメ映画がとても良かったので手にとってみました。

さて、そんな本書は室町時代の実在の能役者、能作者。同時代を生きた観阿弥・世阿弥の父子と同じく足利義満の愛顧を受け、また風流歌舞を旨とする【近江猿楽の名手】として観阿弥・世阿弥と人気を二分した犬王。しかし作品が残っていないことから【不明なところが多い】犬王を題材に『能楽師=現在ならポップスター』と独自解釈、身体や目と、それぞれに身体的なハンディキャップがある『犬王』そして琵琶法師の『友魚』の【2人コンビの友情・成長物語】として描いているのですが。

やはり、先にアニメ映画を鑑賞していることから比較するように読みましたが。多少の違いはあっても『映画とほぼ同じ内容』で、また琵琶法師の語りを意識したような『リズミカルで速い』テキストになっていることから、映像を頭に浮かべながら追体験するような楽しさがありました。

一方で、表現媒体として細かく説明はされないアニメ映画と違って、例えば犬王が創造し、映画でも登場した『重盛』や『腕塚』『鯨』といった【上演作品の解説】もしてくれているのは嬉しく"なるほど!そういった背景、内容だったのか"と理解が深まりました。

能楽好きな方はもちろん、少年2人の友情・青春物語が好きな方にもオススメ。

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