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O嬢の物語

"『あなたは愛情と服従を混同しているんだ。なにもわたしを愛する必要はない。わたしのほうでもあなたを愛さないが、とにかくわたしに服従するんだ』"1954年発刊、ドゥ・マゴ賞を受賞した本書は女性視線での性愛文学として【事象ではなく感覚と魂を描き】様々な論争を引き起こしたSM文学小説。

個人的には、こういった数多のセックスが、それも決まって倒錯的なセックスが延々と描かれている作品は若い時はやはり【表層的に読んでしまう】と思われるのですが。人生後半戦、自分がどう受け止めるかに興味があって手にとりました。

そんな本書のあらすじは。。まあ割愛するとして、意外だったのは1994年に著者が親子ほど【年の離れた恋人の気を引くために】この物語を書いたと表明した本書。視覚的な露骨さはなく多分に思弁的で、つまり心境の変化が丁寧に描かれているのが印象的で、唐突に始まる冒頭の展開こそヒロインに"逃げてー!"と思うものの、途中からは本人が幸せなら"まっ良いか"と思ってしまいます。

一方で、どう見ても鬼畜な恋人ルネはともかく、愛情はもちろん、感情的な機微があまり見えない男性陣の姿はどこか悪趣味でありながらも喜劇的存在感があって、露骨でありつつもロボットの様な淡白さを醸し出していて本書が【下世話なポルノ小説とは一線を画す】要因になっているように思いました。

年上男性に焦がれる倒錯的な誰かへ?また文学的な性小説を探している誰かへ。オススメ。

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